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年明け①

たい焼きと腕相撲

 年明けて。

「いらっしゃいませ~」

「いらっしゃいませ~」

「いらっちゃいませぇ~」

「メエメエ~」

 かわいいメイド服のアンナとクララ、執事服のルドルフ、ノゾミが声を上げる。

 新年はお祭りに、我々ラピスラズリ・リリィは屋台を出店した。たい焼きの屋台だ。

 ちょっと端だけど、お客さんが来た。

 黒餡、リンゴの甘煮、ブルーベリージャム、カボチャの甘煮、マダラ芋とレーズン、チーズとミートソース、ラタトゥイユ、ハムとキャベツ、チョリソーとキャベツ。

 まず、バラックが妹さん達を連れて来てくれた。

 12才のクレア、10才のベラ、7才のローレン。きちんとご挨拶。

「美味しいお菓子、ありがとうございます」

 マリ先輩にご挨拶してる。

 バラックと三姉妹はそれぞれたい焼きを購入。屋台の隅のイートインスペースで、アンナ達と三姉妹は楽しく食べている。

「たい焼きをあと二つください。リンゴの甘煮とハムとキャベツを。両親に買って帰ります」

「はい、ありがとうございます」

 バラック達が帰った後も、お客さんが続々ときた。ノゾミが可愛く鳴いて、呼んできてくれた。

 で、来ましたトラブル。

 ミーシャに犬耳少年が声をかけてきた。お祭り回ろうと。顔を赤くして。かわいい、けど。

 サーシャが許すわけない。だけど、少年が諦め悪い。

 しゃー、しゃー、と威嚇してる。

 え、犬系の獣人よね。

「どうした?」

 アルフさんが、鍛冶師ギルドの挨拶終えてやって来た。

「ミーシャにデートのお誘いです」

「なるほど」

 ミーシャがアルフさんを見て、あ、と思い付く。

「ねえねえ、あの人、私の保証人なの。あの人に勝てたらデートしてもいいよ」

 ごきごき、指を鳴らすアルフさん。

 絶望的な少年。

「殴り合いとかダメですよ」

 リツさんが待ったをかける。

 腕相撲です。

「ハンデをやろう」

 どうみても物量差があり、アルフさん片手、少年両手。

 だけど、勝てるわけない。

 アルフさん圧勝。

「たい焼き買っていって」

 ミーシャ、塩塗ってる。

 リツさんが割引してあげてた。

 とぼとぼブルーベリーのたい焼きを食べながら帰って行く少年。

「また、買ってね~」

 塩を塗るな。

「あの………」

 おずおずと私に男性が声をかけてくる。

「はい」

「腕相撲買ったらデート出来ます?」

「はあ?」

 ゆらり、と立ち上がるアルフさん。

 はい、負けません。圧勝、瞬殺。

「たい焼き買ってください」

 私も塩塗ってしまった。

 ハムとキャベツ入りを食べながら帰って行った。

「あの、勝ったら、デート出来ます?」

 次はリツさんだ。

 落ち着けアーサー、薙刀仕舞え。

 お悩みリツさん。

 マリ先輩とゴニョゴニョ。小さな板にかきかき。


 挑戦料 1回 300G

 勝者には30分デート券。お触りなし。

 敗者にはたい焼き割引サービス。

 挑戦料は孤児院に寄付します。


 おいおい。リツさん。

「アルフさん、頑張ってください」

「まあ、構わんが」

 アルフさんが腕捲り。

 小さな籠に銅貨が貯まる貯まる。

 次々に挑戦者が来た。クチコミなのか、少しずつ人が増える。

「アルフさん、頑張ってっ」

「アルフさんがんばれ」

 アーサーとサーシャが応援。

「負けんさ」

 しれっとバーンが来たけど瞬殺された。

 泣く泣くチョリソー入りを買ってた。

 人気はリツさんとマリ先輩だけどね。

「アルフレッド様、頑張ってください」

 ローズさんも応援。

 アルフさん、連勝。まあ、当たり前だよね。レベル100越えの、鎧リンゴを握り潰す握力なのに。

 なんか、行列だけど。

 たい焼きが売れていく。

 チョリソー入りが大人気だ。次はリンゴの甘煮だ。

 敗者達が帰って行く。たい焼き片手に帰って行った。

 一度だけ、アルフさんが負けた。

 10才くらいの姉弟が、ノゾミとのデート券獲得。アルフさんの指に必死にぶら下がっている姉弟。かわいい。

 アルフさんは苦笑い。マリ先輩が笑っているので、アルフさんはゆっくり腕をおろした。

「わーい」

「勝ったあ」

 嬉しそうな姉弟。うん、微笑ましい。

「メエメエ~」

 ノゾミがボンボンのついた尻尾を振る。

 姉弟はノゾミを撫で撫で。マリ先輩がサービスでたい焼きをあげてる。

「おい、やっぱり疲れて来たんだ」

「今なら行けるぞ」

 はい、負けません。

「なんでだあっ」

「文句あるなら、本気でやるぞ」

 そんなこんなでたい焼きは売れた。

 夕方近くなり、挑戦者は落ち着いた。

「チョリソーとリンゴの甘煮、チーズとミートソース、ブルーベリージャムが完売したわ。餡とハムとキャベツもあと少しね」

 そうですね、パクパク。マダル芋、パクパク。

「アルフさん、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ」

 アルフさんはラタトゥイユ入りをパクパク。

「あ、リツ様、マルコフさん達ですよ」

 アーサーが、こちらに来る、『ハーベの光』と『紅の波』が揃ってきた。

「マルコフさん、明けましておめでとうございます」

「明けましておめでとう。リツ君。バーンから聞いたが面白いこあとしてるな」

「はい、皆さん、いいかたばかりで、寄付していただいてます」

 ふふふ、リツさん。

「なら、俺も挑戦しても?」

「え? 構いませんが」

 え、なんで?

 マルコフさんが、アルフさんの前に座る。

 アルフさんがちょっと困った顔。

「マルコフさん、誰が目当てだ?」

 ちゃりん、と銅貨3枚。

「お前だ、アルフ」

「はあ?」

 引くアルフさん。

「僕はショウ君」

 横からバーンがちゃりん。

「なら、俺はアーサー君」

 バラックがちゃりん。

「じゃあ、サーシャ君」

 イレイサーがちゃりん。

「私はルナちゃん」

 フレナさんがちゃりん。

「リツさん」

 サリナがちゃりん。

「マリちゃん」

 エレがちゃりん。

「私はローズさん」

 キャリーがちゃりん。

「なら、アーシャ」

 ララがちゃりん。

「僕は? 僕は?」

「私は? 私は?」

「メエメエ~」

 呼ばれなかったリーフとミーシャとノゾミが自己主張。

「ははは、なら、俺が払おう」

 マルコフさんが、ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん。

「一体どういうことだ?」

「なあ、アルフ」

 マルコフさんが、改まる。

「今度、野良ダンジョンにまた挑むつもりだ。だから、お前達に補助パーティーとして付いてきてほしい」

 ああ、なるほど。

 さっとリツさんが、アルフさんに耳打ち。

「そうか、なら、受けてたつ。ただ、儂が勝ったら儂らの要求を飲んでくれるか?」

「構わん。だが、俺は負ける気はないぞ」

「儂もだ」

 私達もちゃりん、ショウとノゾミはたい焼きをのせる。

 がっつりと組み合うアルフさんとマルコフさん。

 リツさんが掛け声をかける。

 一気に肘を付いていたテーブルが悲鳴を上げる。

 アルフさん、マルコフさんの顔が赤く染まる。ギリギリ、ギリギリ、ギリギリ。音が鳴る。

「リーダー頑張ってっ」

 バーンが応援。

「アルフさん、頑張ってっ」

 私だって応援。

 2人の額に血管が浮き上がり、食い縛った歯の隙間から息が漏れる。

 ミリミリミリミリッ。

 テーブルが悲鳴を上げる。

「アアアアァァァァァァァッ」

 気合い一発。

 アルフさんの腕が、マルコフさんの腕を押し倒す。

「はあっ、はあっ、はあっ」

「はあっ、負けたっ、いける、と思ったが、やはり、強いな」

「いや、ギリギリだ」

 アルフさんとマルコフさんが息を整える。さっとローズさんがお茶を出す。応援していたバーンが引いている。

「では、皆さん」

 リツさんが笑顔を浮かべる。

「アルフさんの勝ちなので、私達の要求を受けていただけます?」

 あ、ととまる皆さん。

「とりあえず、一番近い日にちで皆さんがうちに来れる日は?」

「リツ君、ちょっと待ってくれ?」

『ハーベの光』『紅の波』が円陣を組む。何々?

「明後日の昼過ぎなら、大丈夫だ」

 マルコフさんが答える。

「では、お待ちしています」

読んでいただきありがとうございます

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