アルフレッド⑦
ランク問題
「ナリミヤ先輩。海鮮XO醤炒めと、ワイバーンのほほ肉オイスターソース煮込み、キムチチャーハンです」
「いただくよッ」
ガツガツガツガツ。
本当にこの人、レベル300越えてるの?
まあ、何も言うまい。
きれいに平らげて、コーヒーとスイートポテトを食べている時に、リツさんが話を切り出す。私の話には、さりげなく「それ、抹消しようか?」と笑顔で言ってきた。お断りした、やっぱりこの人、敵に回したくない。ナリミヤ氏も娘を持つから同情してくれたんだね。
「なるほど、つまり戦力強化だね」
「はい、ミカエル達が、自分達も戦いたいって言ってくれて」
すっかり忘れてた、ゴーレムコア。
「設計図はだいたい出来上がったているんですが、ちょっと不安で」
「見せて」
リツさんが大きな紙を何枚か出す。
真剣か表情のナリミヤ氏。
「うん、悪くないけど、問題は魔力の回復と保有手段だね。そうだね。これちょっと貸してくれる? しばらく考えたいんだ」
何故かキラキラしたナリミヤ氏。
「僕ね、こういうのが大好きなんだ、だから一枚噛ませて。それにエディオールさんにはお世話になったしね。いいかな? 1ヶ月くらいで改善策を練るよ。それまでに神経は作成、外装のパーツをある程度作成、大丈夫?」
「「「はい」」」
答える錬金術チーム。
「みんな、すまん」
「いいんですよ、アルフさんにはお世話になってますし」
「そうですよ。皆で頑張りましょう」
「お任せください」
設計図を見ながらナリミヤ氏がぽつり。
「しかし、バーミリアン殿下がそんな難題言って来るなんてね。どう考えても、無理難題だよ。もしかしたら、何かあっての事じゃない?」
スイートポテトをぱくり。
「どちらにしても、根底はアルフレッドさんを手放したくないのと、かってるんだと思うよ」
「そうだと、いいんですがね」
アルフさんが苦い顔。
残念金髪美形は、キムチを抱えて帰っていった。
「さあ、忙しくなるわよッ」
リツさん気合い入ってる。
「ミカエル達のボディ作って、レベルアップね」
「ダンジョンですか?」
私の言葉に動揺するリツさんとマリ先輩。
「もう大丈夫ですよ、ダンジョン」
多分あのときのことだろうけど。レベルアップするなら、ダンジョンが手っ取り早い。
「どうする?」
「ルナちゃん、大丈夫だって言ってるけど」
「なら、フィーラ・クライエ?」
「いえ、近場にラ・マースがございます」
「はい、両方アウト」
私はバッサリ。
「フィーラ・クライエは最低Cランク、ラ・マースは最低Dランクのパーティーしか挑めません」
「「「あ」」」
我々ラピスラズリ・リリィはEランクなのだから。
ダンジョンに関しては、一度考えようと言うことになった。フィーラ・クライエなら一度潜ったしね。ラ・マースは斥候のサーシャがいるから、大丈夫だろうけど。
リツさんのランクが上がれば、パーティーランクも上がるけど、Dとなるといろいろあるからね。アルフさんや私、アーサーが短期間でなったのは、対人戦を終えていたからすんなりなれたのだ。ただ、優しいリツさんに、対人戦は厳しい気がする。私としては、恩があるから、出来るだけ遠ざけて来たけど。ローズさんはやはりオークを躊躇いなく、何体も屠って来たからね。マリ先輩の為なら、対人戦も躊躇わない覚悟がある。
難しい顔のリツさんとマリ先輩。
「地道にランクをあげましょう。どちらにしたって、冬場はあまり動かない方がいいわ。ミカエル達を作りながら、スキルアップね」
はい、リツさん。
本日の夕御飯は残り少ないブラッディグリズリーのワイン煮込み、マリ先輩新作のマダル芋とゴマのブレッド。
「帰ってから、また、作りましょうね。ルナちゃん、任せても大丈夫かしら?」
「はい、リツさん。大丈夫です」
準備していると、訪問者が。
若いドワーフ夫婦と女の子だ。あの逃げ遅れた女の子だ。
わざわざお礼を言ってきた。良かった、女の子にキズが残ってなくて。感謝されてくすぐったいけど、嬉しかった。ヒールをかけたサーシャにもお礼を言ってる。キズが残ってないのに、サーシャもほっとしていた。耳がピクピク、あれ、照れ隠し? 無表情だけど、耳、ピクピク。どんな仕組みなんだろう?
何度もお礼を言って、ドワーフ一家が帰って行った。良かった。本当に良かった。
いざ、夕御飯になると、更なる訪問者が。
ミーシャが出て、すぐに戻って来た。
「アルフお兄ちゃん、アルフお兄ちゃん」
「どうした?」
「意地悪言ってたおじさんが来た」
私達は噴き出した。
慌ててアルフさんが玄関に向かうと、いました。
外套を着たバーミリアン殿下が。
「すまんな、アルフ。少し話せないか?」
困ったように眉を下げたバーミリアン殿下。
断る訳にはいかない。居間にご案内する。
ローズさんが最高の茶葉を使って、お茶を淹れ、何故か私は出されたワンピースを着ることに。なぜ? リーフが素早くシンプルにまとめてくれる。
お盆にローズさんのお茶と、マリ先輩の焼き菓子を並べた皿を載せ、恐る恐る私が配膳。なぜ私? え、本職いるじゃん。ローズさんの見守る目が痛いこと。
「どうぞ、殿下」
「ああ、ありがとう」
ドキドキ。溢さないかハラハラ。さあ、引っ込もう。
「お嬢さんが、アルフさんが相手か?」
何でいきなり聞くのこの人。
「あのっ………」
がつっ、あ、やばっ。
「そうです殿下」
舌をかんでしまった私の代わりに、アルフさんが答える。
「そうか、おめでたいなアルフ。これでお前の養父母も安心するだろ」
そうだろうか? 私、大丈夫なんだろうか? 舌、痛い。
「殿下、話とは?」
「ああ、そうだったな」
肩から赤い猿がテーブルに飛び降り、クッキー食べてる。一枚持ち、バーミリアン殿下の足元にいるサイにも渡してる。え、精霊だよね? 何で食べてるの? いや、レリアやグレストもたまに食べてるのみるけど、精霊の食事は契約者の魔力じゃなかったっけ? しかもこの猿とサイは、あれよね、あの炎の鬣のヒヒと、落ちてきたワイバーンの頭を粉砕したサイよね? 上位精霊は伸縮自在らしいから。
なんて思っていると、バーミリアン殿下が口を開く。
「エディオールの手紙の件だ」
「確か、王宮鍛治師か直属の騎士か」
「違うんだアルフ。エディオールの手紙にはそんなこと一切書かれていなかった」
え?
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