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Jランク④

 午後からリツさんの魔法の試し撃ち。なかなか発動せず、しばらくうんうん唸っていたリツさん。

 ふふふ、そう簡単にはでないよリツさん。

「火、火、ライターみたいな感じかな? 火、火、えーい、ファイヤ」

 ポッと、リツさんの掌に小さな火が出た。

 あれ? 出ちゃったよ。

「やった、出た出た」

「すごいよリツちゃん」

「ありがとうマリちゃん」

 あれから二人は意気投合し、お互い『ちゃん』で呼びあってる。

「ルミナス様」

「何です?」

 ローズさんが喜ぶ二人を見ながら聞いてくる。

「あんなに簡単に魔法って出るものですか?」

「まさか」

 そう、魔法の適正あっても魔力を体に流したり、感知するために結構時間と訓練が必要。これも個人差はある、中には魔力感知が獲得できず、種火程度だったり、カップ一杯の水を出すために何年もかかることがある。まあ、魔力操作は基本的に10才から推奨されている。あまり幼すぎると体に負担が掛かることが分かっているからだ。

 確か、リツさん、一昨日スキル手に入れたばかりだよね? 前世の記憶がある私でも、半年かけて魔力を流してやっと発動したのに。きっとローズさんも苦労したのだろう。何と言っても雷は上位魔法。コントロールだって難しいはず。

「まあ、転生のせいもあるかもですよ」

「そんなものでしょうか」

「そんなものでしょう」

 私とローズさんはきゃっきゃきゃっきゃ言ってる二人を膝を抱えて呆然と見た。

 それからリツさんは無事に水、風、土魔法を発動させた。なんなのもう。まあ、それでリツさんは魔力が枯渇。へばってしまった。

 リツさんを休ませ、今度はマリ先輩とローズさんが試し撃ち。私も試し撃ち。実は私は攻撃魔法は得意じゃない、強化系の方が発動がいい。撃てない訳じゃないんだけどね。リツさんがあっさり発動させたものだから、私とローズさんはちょっと意地になっていたみたいで、久しぶりに魔法が枯渇寸前まで撃ってしまった。

 帰り馬車の中で椅子に座るとすぐに眠ってしまい、馭者さんに起こされるまで眠りこけてた。

 馬車をおりて(?)、冒険者ギルドに向かうとまっすぐ相談窓口へ。

「Jランクの件で」

 と、伝えると直ぐに三度目の応接間に案内された。

 まだ、早い時間帯、マリ先輩達はギルド内で待っていてくると。

 さっさと済ませよう。

「少しお待ちください」

 女性職員がお茶を出してくれる。

 せっかくなので頂くと、やはりローズさんのお茶が美味しい。

 しばらくしてグラウスさんがやって来た。

「お待たせしました」

「いいえ、お忙しいのに時間を割いていただきありがとうございます」

「決心はつきました?」

「はい、Jランク、受けさせていただきます」

「良かった。では、こちらに名前のご記入を。それと、見せられるだけでいいので、ステータス開示してください」

「ステータスもですか?」

 思わず聞き返す。

「一応、私は保証人ですしね。他に漏らすことはありません。貴女が何のスキルを持っているか予想はつきますが、確認のためです」

 有無を言わせぬ笑顔のグラウスさん。

「ちなみに何のスキルだと?」

「風魔法、剣、槍、体術、おそらく盾術、短剣術、火魔法もあるのでは?」

 ぐ、流石副ギルドマスター。ほとんどばれてる。

 ため息を一つつき、仕方ない加護は隠して、ステータスを開ける。

「どうぞ」

「拝見させてもらいます」


 ルミナス・コードウェル レベル24

 人族 14才 剣士

 スキル・剣術(26/100)・槍術(14/100)・短剣術(16/100)・双剣術(2/100)・弓術(14/100)・体術(17/100)・盾術(10/100)・風魔法(15/100)・火魔法(2/100)・魔力感知(29/100)・気配感知(18/100)・索敵(10/100)


 あ、いくつかレベルアップしてる。しかも双剣術って、あ、昨日ギルドマスター相手に対戦した時に、割れた槍で戦ったからかな。

「ほう、なかなかですね。剣術スキルが素晴らしいですね。しかし、火魔法が思ったより低いですね」

 それは火魔法得たのは一昨日ですからね。

「さぁ、なんでですかね?」

 とぼける私。なんて説明していいかわからない。

 私はステータスを閉じる。もう、いいよね。

 ささっと、書類に名前をサインする。

「よろしいですか?」

「はい、確かに。冒険者心得はもう聞かれていますからよろしいでしょう。Jランクの縛りはご存じですか?」

「大体は。Cランク以上の保証人。依頼達成の義務期間はないが、ランクアップはない。成人した時に達成した依頼でスタートランクが決まる。基本的には登録した国で依頼をこなさなければ、ランクアップに繋がらない」

「結構です。最後に私は貴方をここに縛り付ける気はありませんが、もしマルベールから移動する際は必ず連絡してください」

「分かりました」

「では、カードの発行します。相談窓口にいきましょう」

 ああ、良かった、やっとだ。

「さ、こちらへ」

「はい」

 グラウスさんに連れられ、相談窓口へ。

「なぁ、お前ら魔法使いだろ。パーティーに入ってないなら、俺らのパーティーに入れよ」

 絡まれてます。

 マリ先輩とリツさん。その前にローズさんが立ちはだかる。二十歳過ぎの男四人が、迫ってる。

「なぁ、そっちの茶髪は光魔法使えるだろう? なぁ、俺らEランクのパーティーなんだ。悪い話じゃ」

「おい、私の連れに何してる」

 私はずかずかと男達とローズさんの間に入る。

 ルナちゃん、と安心したようなマリ先輩の声。ローズさんが二人を連れ下がる。

「なんだ、邪魔するな」

 明らかに体格はあちらが優位だが、負ける気がしない。

「はん、回復手段を手前で準備できない連中が」

 私は心底ばかにしたように言う。回復役がいなければ、十分ポーションを準備すればいいのだ。それをしないのは金銭的余裕がないだけ。人員を確保すればいいと、安易に考えたのだろう。

 まあ、マリ先輩もリツさんもかわいいから、下心もあったのだろうが、私がいる以上そんなの問屋が卸さない。

「なんだとッ」

「そこまでです。ギルド内でトラブルはやめて頂きましょうか」

 今度はグラウスさんが割って入って来た。

 副ギルドマスターの登場に、男達はたじろぐ。

「同意のない、パーティーメンバー勧誘は認められません。貴方もそのケンカっぱやいのは頂けません」

 私は肩をすくめる。

「優秀なパーティーなら、回復役は自ら加わりますよ」

 そうならないのは、それだけってことだ。暗にその事を含ませて言う。男達の顔が赤く染まる。

「そこまでです。さあ、コードウェルさん、登録を済ませましょう。あなた達も分かって頂けましたか?」

 男達は小さな声で返事をする。

 久しぶりに名字で呼ばれた。

「はい、副ギルドマスター」

 素直に従おう。

 グラウスさんに連れられ相談窓口へ。マリ先輩達もすっと寄って来た。その方が安心だ。

 相談窓口の女性職員がサッとカードを差し出す。それをグラウスさんが受けとる。

「魔力を流してください」

 はい、こんな感じかな。次にグラウスさんも流す。

「これで貴方はJランク冒険者です」

「ありがとうございます」

 カードを受けとる。

「良かったね、ルナちゃん」

「ありがとうございますマリ先輩」

  ざわざわ

 周りの冒険者達が騒ぎ出す。そりゃね、副ギルドマスターが保証人だもんね。

「とにかく、トラブルは避けてくださいね。ケンカで済まなくなりますから」

 はあ、あれ、なんだか聞いたことある台詞。

「副ギルドマスター、大柄で隻眼の冒険者っていますか?」

 その人にも似たようなことを言われた。

「隻眼ですか?」

「はい、槍を持っていました。以前、ここの冒険者に絡まれた時に助けて貰いました」

「年は?」

「二十歳そこそこ」

 グラウスさんは少し考える。

「生憎、記憶にありませんね。貴方の目に留まるくらいならかなり優秀でしょうがね」

 残念。槍を持っていたからてっきり冒険者だと思っていたが。もしかしたら、依頼か何かでたまたまいただけかも。何となく気になって聞いただけだが。

 後ろでマリ先輩が「ルナちゃんのタイプって、ああいう感じなのね」という言葉が耳に入った。後で訂正しておこう。

 まあ、とにかくJランク冒険者だ。

 …何だろう、ここ数日で色んな事が起こりすぎた気がするが、マリ先輩が喜んでいるから、まあ、いっか。

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