アルフレッド②
戦闘があります、ご注意ください。
タンクのアルフレッド、アタッカーのルミナス。
(この二人がいないだけで、こうも違うの)
ローズは必死に瓦礫に挟まった足を引き抜こうともがく。
「お嬢様ッ、お逃げくださいッ」
「絶対嫌よッ」
マリは杖を振りかざし、アースランスを放つ。運良く直撃。
「メエメエ~」
ノゾミもファイヤーボールを放つ。
「ファイヤーボールッ」
リーフも放ち、リツも時間差で放つ。絶え間無く放たれる魔法。
アーサーとサーシャは、必死に地上に落ちたワイバーンを迎撃している。もう一匹のワイバーンは、時間差で放たれる魔法に、辛うじて防げている。
(あの二人なら、あれくらいのワイバーン、大した事ないのに)
アルフレッドの盾で弾き、ルミナスが止めを刺す。もしくは負傷したのを、アーサーとサーシャが処理。これが、パーティーの定番の戦い方だ。それにショウが不可視の刃を飛ばし、アーサーの支援が確実な戦闘だが。
今はバランサーのアーサーがタンク、斥候のサーシャがアタッカー。どうしても、全体の攻撃力が著しく低くなっている。
「ダークランスッ」
僅か隙をついて、アーサーの闇魔法が飛ぶ。
勢いが落ちた瞬間を狙って、ローズは雷魔法を放つ。
アルフレッド、ルミナス曰く、パーティーの最大の強み。それはアーサーの支援、ショウのスピードのある多方向からの攻撃、そしてローズの雷魔法。
「雷魔法は防ぎようがないからな」
「ですよね、威力も凄いし、止めにならなくても、足止め出来たらこっちのものですから」
そう言った二人。
アダマンタイトの装備に身を包んだレベル100越えのタンクと、恐れ知らずで戦闘センスの高いアタッカーが、そう評した雷魔法。
「サンダーランスッ」
動きを止めたワイバーンに直撃。
轟音を立てて、ワイバーンが崩れ落ちる。
耳に触るような悲鳴を上げて、もう一匹のワイバーンも崩れ落ちる。サーシャが頭に突き刺したショートソードを引き抜く。
アーサーとサーシャが瓦礫に手をかけようとしたが、再び武器を構える。
真っ直ぐ、ワイバーンが向かい来る。
アーサーのダークランスを僅かに体制をずらして避けたワイバーンは、直撃コースに入る。
盾を構えたアーサー。多分、防げない。
「オオオオォォォォォッ」
ドカンッ
直撃コースに入ったワイバーンの横っ面に、何かがぶち当たる。
「人?」
空から人が、放たれた石の様に、ワイバーンにぶち当たる。
軌道がずれたワイバーンは、轟音を立てて近く落下。
「ダークランスッ」
アーサーが間髪入れずに、闇魔法を放つ。動きが鈍った所にサーシャが斬り込んで行く。薙刀を握ったアーサーも斬り込み、首を切り裂く。アダマンタイトを含み、魔力操作の高いアーサーの一撃は、ワイバーンの首を大きく抉る。
「はあっ、はあっ」
息をあげるアーサー。サーシャも膝に手を置く。絶え間無く襲い来るワイバーンを、アーサーとサーシャがほとんど対応。ショウは大型のワイバーンと空で交戦している。
アルフレッド、ルミナス、ショウを欠いたメンバーで、最高戦闘力はアーサー、次いでサーシャ、そしてローズだ。だが、ローズが瓦礫に足を挟まれている。避難しようとした子供を庇ってだ。
「くそっ、折れた」
空から飛んできた人、ドワーフだ。皮と金属のプレートの鎧を着込んだドワーフ。ワイバーンの横っ面に突き刺さった剣を引き抜こうとしたが、根本から折れている。
こちらを振り返ると、足を挟まれているローズに視線が止まる。まだ、若いドワーフだ。
「手伝えッ」
駆け降りてきた若いドワーフが、瓦礫に手をかける。アーサーとサーシャも手をかける。僅かに動いた瓦礫から、何とか逃れるローズ。
「ありがとうございます」
「いや、いい。お前達は冒険者か?」
「はい、そうです」
アーサーとサーシャに水分と魔力回復ポーションを使わせていた、リツが返答。
一瞬考えるドワーフ。
「援護出来るか?」
アーサーが水を飲み干す。
「はい、出来ます」
「お前、タンクじゃないのか?」
盾を装備したアーサーを見て、ドワーフは疑うような顔。首の奴隷紋にも気づいている。
「いいえバランサーです。タンクの人は別行動です」
「なら、俺がタンクをする。その盾を貸せ」
「はい」
アーサーが素直に盾を渡す。籠手からロングソードを出す。びくり、とドワーフ。
「使って下さい」
「ああ、すまん。凄い拵えだな。後で返す。名前は?」
「アーサーです」
「必ず返す」
ワイバーンの咆哮が響く。
「サーシャ君、アルフさん達と合流して。ヒーラーが必要なはず」
リツが指示を出す。
「はい」
サーシャが身軽に瓦礫を駆け上がる。サーシャが瓦礫の向こうに消えて、代わりに姿を見せたのは細身の騎士だ。
弓を持ったエルフの騎士達だ。
「イスハーン殿下、我々もお供します」
『北からハンターフルフが進入ッ、ハンターフルフ進入ッ』
舌打ちをするドワーフ。イスハーン殿下と呼ばれた若いドワーフは、盾を構えた。
アーサーが立て続けて支援発動。
エルフの騎士が気づいているが、次々に弓を構える。
私は泣き叫ぶドワーフの子供を抱き締める。
逃げ遅れ、頭から血を流す女の子。
アルフさんが魔法を駆使し、ワイバーンを落とし、顔面を十文字槍で切り裂く。
「はあっ、ルナ、こっちだ」
「はい」
女の子を抱えて、私はアルフさんに守られて走る。
近くの瓦礫を魔法で弾き、アルフさんは地下壕に繋がる扉を見つける。
「子供がおるッ、開けてくれッ」
多分連絡の細工がされた場所に向かってアルフさんが叫ぶ。
「アルフさんッ」
「サーシャ」
瓦礫から駆け降りて来たのは、サーシャだ。
「リツさん達は?」
「リツさんの指示だ。ヒール」
サーシャは女の子の傷にヒールをかける。
「ルナ、開いたぞ」
「はい」
ぐずぐず泣く女の子を、僅かに開いた扉の間に滑り込ませる。一瞬、私から離れまいと掴んだけど、引き離して押し込む。
「受け取った」
中から声が響く。
「閉めろ」
素早く閉まる扉。
「サーシャ、向こうはいいのか?」
「空からドワーフが降ってきて、その人がタンクするって」
? ? ?
アルフさんと首を傾げる。
「後だ。行くぞ」
「「はい」」
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