表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
275/386

アルフレッド①

ワンポイント

 朝、早く。

「ピイイイィィィッ、ピイイイィィィッ」

 ショウが声高に鋭い声をあげる。

 私は飛び起きる。同室のリツさんもだ。

「どしたのかしら?」

 不安な顔のリツさんに、私はパジャマを脱ぎ捨てる。

「すぐに準備をッ」

「わ、分かった」

 ショウの鋭い声は続く、今までにないことだ。

 バタバタ着替えて居間に行くと、フル装備のアルフさん。

「サーシャを警備の詰所に走らせておる」

「アルフさん、あれですよね」

「ああ」

 硬い表現のアルフさん。

 ガガンさんとザザンさんが言っていた。

 ワイバーンだ。

「アルフさん、ルナちゃん」

 不安そうなマリ先輩が降りてくる。ショウは落ち着きなく、ノゾミもそわそわしている。

「アルフさん、お兄さん達の所に行ってください。ルナちゃんも」

 リツさんが指示を出す。

「しかし、リツ」

「こちらは大丈夫です。アーサー君とショウがいます。私達は他の方の援護と救助に回ります。これはリーダーの指示です。行ってください」

「…………すまんリツ。アーサー、お前がタンクだ、いいな。ワイバーンの対応、分かるな?」

「はい、翼に打撃を、後は噛みつきに気を付ける」

 そう、ワイバーンの怖さはその飛行能力。そして牙による噛みつき攻撃だ。翼を穴を開ければ、飛べずにバランスを崩す。地上に落とせば、遠距離攻撃を叩き込み、弱らせて止めだ。

「よし、行くぞ、ルナ」

「はい」

 アルフさんに続き宿を飛び出す。

  ぶおおおおんっ

  ぶおおおおんっ

  ぶおおおおんっ

「避難の角笛だ」

  ぶおおおおんっ

  ぶおおおおんっ

  ぶおおおおんっ

 走っていると、次々家からドワーフが飛び出してくる。お年寄りから小さな子供、お腹の大きな人。皆、着の身着のままだ。

「地下壕へッ、急げッ」

 アルフさんが声を張り上げる。

 人々が、必死に走る。

『ワイバーン襲撃に備えよッ、ワイバーン襲撃に備えよッ、白いグリフォンは攻撃するなッ、白いグリフォンは攻撃するなッ』

 拡声の魔道具で、ダミ声が響く。

 アルフさんが指示を飛ばし、次々に地下壕に入っていく。

「ルナ、来るぞッ」

「はいッ」

 ワイバーンが低空飛行で牙を剥き出しに迫って来る。

 負ける気がしない。

 アルフさんがアタマンタイトの盾を構えて、前に出る。

【風魔法 身体強化 発動】

【火魔法 武器強化 発動】

【火魔法 身体強化 発動】

 ナリミヤ印の二代目が赤く光る。

 石作の屋根を破壊しながらワイバーンが迫る。

 きっとマリ先輩やローズさん、リツさんと出会った頃なら、私は逃げ道を探すが、今では羽が生えたとかげにしか見えない。

「ヒートバッシュッ」

 魔力を纏った盾が、真正面に迎え撃つ。

  ガウンッ

 勢いよく突撃してきたワイバーンが、弾き返される。

 相変わらず、アルフさんの盾は凄い。

「はッ」

 私はアルフさんの肩を駆け上がる。

 二代目を一閃。

 確かな手応えと共に、ワイバーンの首が飛ぶ。

「よし、ルナ、行くぞ」

「はい」

 私は血を払い、アルフさんに続いた。


「母ちゃんッ、母ちゃんッ」

 瓦礫の前で、ガードナーが叫ぶ。腕には泣き叫ぶ赤ん坊、近くのレイザルも泣き叫ぶ。

「どけっ、ガードナーッ」

 アルフさんが瓦礫に手をかける。

「ああああぁぁぁぁぁッ」

 気合いで瓦礫を持ち上げる。

 僅かにできた隙間に私は体を入れて、必死に瓦礫の隙間から這い出そうとしているアニタさんの手を掴む。

「引いてッ」

 叫ぶ私の足を一瞬置いて、引き出される。ガードナーだ。

 なんとか瓦礫から出ると、アルフさんが瓦礫から手を離す。

「はぁっ、姉貴、無事か?」

「ああ、何とかね。ああ、痛い………」

 腕に抱いた赤ん坊を庇いながら、右足を押さえる。ばっきり切れてる。レイザルが泣きながらアニタさんにしがみつく。私はマジックバックから、ポーションを出して傷にかける。白い煙を上げて、傷が塞がる。

「姉貴、立てるか?」

「大丈夫だよ、ありがとうルナさん」

「いいえ」

「とにかく、地下壕に」

 アルフさんがアニタさんの手を借りて立ち上がる。

 ワイバーンの咆哮が響く。

 見上げると、バリスタから放たれた石がワイバーンが直撃していく。白い翼を広げたショウが、旋回し、不可視の刃を飛ばし次々にワイバーンが落ちていく。

 数、多い。

「アルフさん、これ」

「ああ、ワンポイント・スタンビードだ」

 スタンビードは魔の森から、魔物が溢れ、近くの村や町を襲う。そう魔の森の魔物が、溢れる。ワンポイント・スタンビードは、単種の魔物が溢れる。今回はワイバーンだ。

「行こう」

「はい」

 私は赤ん坊の片方を抱いて、アルフさんに続いた。


 地下壕の入口で、アニタさん達を誘導。

「アルフ、行くのかい?」

「ああ、ガードナー、しっかりしろ」

「うん」

 赤ん坊をアニタさんに渡す。

「ルナさんも一緒に」

「いいえお姉様、私は残ります」

「でも………」

 アルフさんが魔鉄の槍を籠手から出して、投擲の構え。

 魔鉄の槍が魔力を纏う。

 ワイバーンだ。

 気合い一発。投げ放たれた魔鉄の槍が、ワイバーンの口に吸い込まれ、貫通。

 さすが、槍術スキル50越え。

 だが、ワイバーンは一匹ではない。

 私は二代目を抜刀。石作の家を駆け上がり、衝撃斬波を放つ。片方の羽が切り飛ばされて、ワイバーンはバランスを崩す。近く墜落したワイバーンの頭に、アルフさんが十文字槍を突き立てる。

「姉貴、早く入れッ」

 アルフさんが、十文字槍を引き抜き怒鳴る。

 アニタさんが弾かれたように、レイザルの手を握り、地下壕に入る。

 地下壕の扉が閉まる。

 マダルバカラの地下には、長い年月をかけて掘り進めた地下がある。

 頑丈で、どんな魔物からでも守る、堅牢な地下要塞都市。

 そう、頑固で、我慢強く、仲間想いのドワーフ達の結晶だ。

「行くぞ、ルナ」

「はい」

 負ける気がしない。

読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ