閑話
男子会?
「紆余曲折ありましたが、アルフのプロポーズ半分成功のお祝いにかんぱーい」
イエーイ、とリーフがホットレモンのグラスを掲げる。
「また微妙な祝いの言葉だな」
苦笑いのアルフがホットレモンを飲む。
ライドエル、コードウェルと連絡が着いた夜。アルフの部屋に、アーサー、サーシャ、リーフが集まった。細やかなお祝いと。
「でも良かったじゃん、ルナっちだっていい帰国できる口実になったしさ。アルフ、ルナっちのお父さんに頼むんでしょ? 諦めるわけないよね?」
「当たり前だ」
「で、アルフはドワーフ式で挨拶行くよね?」
「まあな。ルナに確認せんといかんが」
「「ドワーフ式?」」
アーサーとサーシャが顔を上げる。
「相手の家族に認められるために、向こうの要求を飲むのさ。だいたいが飲み明かし」
「無理じゃん」
サーシャが突っ込む。1滴も飲めないのに。と、顔に浮かんでいる。
「次は相手の父親、もしくは男兄弟と殴り合い」
「アウトです」
アーサーが突っ込む。レベル100越えで、鎧リンゴも握り潰すのに、何言ってるの? みたいな顔だ。確かルナの父親は一般人と変わりなし、弟のエリックは頭脳派としか聞いてないが、まだ14才のはず。逆立ちしても勝ち目はない。
「これらは代理が立てられるがな。最後は物納だ。儂はこれになるだろうな」
「「物納?」」
「ドワーフは職人が多いだろう? だから、相手の家族に自身に品を納めるのさ。もちろん向こうが受けてくれんと、始まらんから、受けてくれるまで、向こうの家に通わんといかん」
ん、と止まるアーサーとサーシャ。
「まさか、剣とかですか?」
とんでもないのが、出来そうだと。
「いや、実用性があるものがいいな」
「何にするの?」
リーフが興味津々で聞いてくる。
「鍋とか包丁とか?」
サーシャが首を傾げて聞いてくる。本当に実用品が出てきた。
「流石にそれはなあ。ルナにペンダントやったから、お母上と妹には似たようなのにしようとは思っているが」
悩んでいるアルフ。
「でも、それいいかもしれません。きっとルナさんの妹さんなら、ルナさんとお揃いなら喜んでくれますよ」
「そうか?」
「そうですよ。ルナさんのお母さんだって、そうですよ」
「後はデザインじゃない? アルフ、僕相談乗るよ。テーラーの称号は伊達じゃないからね」
えっへん、胸を張るリーフ。リーフはセンスがいい、ローズとよく新作を模索している。
「ははは、頼りにしとるぞ」
「でも、ちょっと面倒ですね。いろいろしないといけないって」
サーシャがホットレモンを飲み干す。
「仕方ないさ。獣人は特別何かないのか?」
「特には。まず相手をちゃんと思いやるのは当たり前だけど、大切なのは食わせていけるかって事。それが出来ないと、いずれ生まれる子どもにひもじい思いをさせるから」
「なるほど、一理ありますね。はい、サーシャさんおかわりです」
アーサーがホットレモンをサーシャに渡す。
「そうだ、アルフってちゃんと貯金してる? 大丈夫だろうけど、ルナっち養うくらい」
「あるさそれくらい。多分2億くらいはある」
ブーッ
「そ、そんなにお金持ちさんなのアルフ」
「持ってるだろうなって、思ってはいましたけど」
「桁、おかしくないか?」
「いろいろあってな」
アルフの現在の収入は、ほぼ鍛治師としての収入だ。それ以前に、自国、マダルバカラで騎士隊に引っ張りだされていた時、よく付与を頼まれて行っていた。騎士隊に騎士隊に参加している間は、アルフは付与代を取らなかった。そんなものだと、思っていたのだ。付与を頼んだ騎士の中には後日改めて、礼金を持ってきたり、肉やホワイトメープル等を持って来たり。
「だがな、基本的に騎士隊の正式な付与師ではなかった儂がしてはいかんかったんだが、それを知ったのはすでに10年経ってな。結局騎士隊の上層部に怒られたが、儂以上に付与を頼んだものが絞められてな。改めて儂が行った付与を数え、礼金を持って来たものを差し引いて、更に迷惑料としてまとまった額が転がりこんで来たんだ」
それから、アダマンタイトを扱えるようになってからの、指名料等が貯まりに貯まっている。冒険者として得た収入は手付かずだ。
「じゃあ、アルフは経済力は問題なしだね。うん、ポイント高いよ」
うんうんリーフ。
「エルフって、何かあるのか?」
サーシャが頷いているリーフに聞く。
「さあ、僕はあんまり興味ないから。えっとね、確か、知り合いは一晩中詞を朗読させられたって」
うわあ、と顔をしかめるサーシャ。
「他にもあるらしいけど、まずはきちんと挨拶だよ」
「エルフも大変だな」
「それよかサーシャはどうなのさ、アーシャとはいつ一緒になるの?」
「俺?」
話を振られるサーシャ。
「ミーシャが嫁に行くまで、一緒にはなれない」
「何年先だよ」
「仕方ないだろ。アーシャだって納得してるし。俺だって、一緒にはなりたいけど、今はそうは言ってられない」
ホットレモンを一口。
「あ、そうだ。なあアーサー」
「はい?」
ホットレモンを傾けているアーサーに、サーシャは思い付いたように言う。
「ミーシャ、嫁にしないか?」
「ブハアッ」
噴き出すアーサー。
「ななななな、何を言って…………」
あからさまに狼狽えるアーサーに、サーシャは続ける。リーフかはハンカチを渡され、おろおろと拭いている。
「お前なら、優しいし、稼ぎもあるし、信頼できるし」
「いやいやいやいや、自分、奴隷だし」
「そのうち、リツさん解放してくれるんじゃないか?」
「かも、しれないけど、その、自分は………」
「リツさんだろ、相手悪くないか? 思いっきり家族見る目じゃん」
ぐさあ、とアーサーが床に倒れ込む。
「お前、はっきり言うな」
アルフが気の毒そうに言う。
「確かにリツさん、そんな感じだけど、まだ、そういうのに興味ないんじゃないの? ほら、後何年かしたら、アーサーも大人っぽくなれば、変わるかもよ。アーサー童顔だし」
「リーフに言われたくないっ」
床をダンダン叩くアーサー。
「だいたい、ミーシャにその気がなければならんだろ?」
「アーサーには、あの時助けてもらったからな、かなり好印象だと思う」
奴隷狩りの時、一番に駆けつけて、戦ったのはアーサーだ。アルフが思いだし、ああ、と呟く。
「だったら、アルフさんだって」
大活躍だったし、とアーサー。
「儂、ミーシャの中じゃ、おじさんの位置だぞ」
ホットレモンを飲み干すアルフ。確かにミーシャがアルフを見る目は、頼りになる大人、指導者を見る目だ。
「なあアーサー、ミーシャ好きか? 嫌いか?」
「答えにくい事聞かないでくださいよっ」
「兄の贔屓目だと思うが、中々美人になると思うけど」
「う」
銀色の髪、ややたれ目のくりっとした赤茶の目は可愛らしい顔だちを引き立てている。まだまだ幼いが、あと何年かすれば、姉アーシャとは違うタイプの美少女になるだろう。一瞬想像するアーサー。
「確かにルナっちより大きくなるよね」
どこが、と言わない、うんうんリーフ。そんなリーフの袖をちょいと引くアーサー。
「何? ひぃっ」
「お前、ルナをどんな目で見ておる?」
「お前、ミーシャをそんな風に見てるのか?」
アルフとサーシャに凄まれ、リーフを壁に張り付く。
「一応僕一番年上なんですけどっ」
「一番童顔のなのに」
アーサーが突っ込む。リーフのハンカチで拭き上げ、空になったグラスにホットレモンを作る。
「アルフさんのお祝いなのに」
収拾のつかなくなったアルフの部屋。使用人部屋のために狭く、アルフのベッドが大きいため、体格のいいアルフに華奢なリーフが捕まり、笑顔で絞められていた。
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