マダルバカラ②
ドワーフ式
「所で、仕事はいいのか?」
「ん? おう、大丈夫だ」
「丁度一段落したからな」
わちゃわちゃ話して、いろいろ聞かれて見られて、アルフさんのげんこつが飛び、お話終了。
「じゃあ、待っとるな」
「おう、皆、お前に会いたがったおるからな」
「楽しみにしとるからなあ」
これから、姉貴、つまり、ガガンさんとザザンさんの奥さん達も連れて来ると。夕飯のご招待だ。私がブラッディグリズリーのワイン煮込み作れるし、マジックバックにあるって溢したらこうなった。
「さあ、帰りましょう。アルフさんのご家族に、ルナちゃんの好印象の為に」
「「「おーッ」」」
マリ先輩、リーフ、ミーシャが答える。
え、恥ずかしい。
宿に戻り、お出迎えの準備。
「お、おかしくないですかね?」
私は鍋を持って挙動不審。
「大丈夫だルナ、大丈夫。姉貴達は優しいからな」
本当に大丈夫だろうか?
「落ち着け、ルナ。なべをまず置け」
「はい」
「ほら、次の鍋は出さんでいいから」
おろおろ。
「ルナさんが動揺してる」
アーサーが物珍しい目で見てる。
「あ、見えたわよ」
どきいっ。
「ルナ」
「はい……」
アルフさんとお出迎え。
ドアを開けると、ずらりと、並んだドワーフファミリー。
聞いたよ、ガガンさんとザザンさんの見分け方。ガガンさんには右目に小さい黒子あり。はい、分かります。
「アルフ兄ちゃんッ」
子供が五人、双子の赤ちゃんがお母さんに抱かれている。
その子供達が、わっ、とアルフさんに抱きつく。わちゃわちゃ。
微笑ましい。微笑ましい光景だ。
だが、私は微笑ましくない。
じーっと、みられる。
赤毛と茶髪の女性ドワーフ。
「久しぶりだな姉貴達。紹介したい娘だ」
アルフさんが子供を抱えて紹介してくれる。
「初めまして、ルミナス・コードウェルです」
カーテシー発動。
じーっ、じーっ、じーっ。
見られてるッ。
で、やおら腰辺りをポンポン。
はい?
「よし」
「安産型」
「やめてくれんか? 儂もあんまり触れておらんだから」
これ、ドワーフ式の確認なの?
赤毛の女性は、アニタさん、ガガンさんの奥さん。茶髪の女性は、ハンナさん、ザザンさんの奥さん。
はい、ご挨拶します。改めて。
「初めまして、ルミナス・コードウェルです。アニタお義姉様、ハンナお義姉様」
…………………
あら、ダメ?
恐る恐る目を開けると、え、踞ってる。
「こんなめんこい娘が、お義姉様って…………」
「いい、めっちゃいい、娘が欲しい…………」
口元押さえて、くうっ、て言ってる。
え? 同じ系列?
「「なあ、たまらんだろう?」」
「「そうね」」
すごいシンクロしてる。
「とにかく、皆さん、お入りください」
リツさんが声をかけて、ぞろぞろ中に。
まず、こちらも自己紹介。
「初めまして、パーティーリーダーをしています。リツ・サイトウです」
「マリ・ハートです。こちらはグリフォンのショウ、カラーシープのノゾミ」
「ピイピイッ」
「メエメエ~」
「ローズでございます」
「リツ様の奴隷のアーサーです」
「アレクサンドルです。サーシャで」
「アーシャです」
「ミーシャです」
「リーフです」
ドワーフファミリーもご挨拶。
「儂はガガン。こっちが女房のアニタ。これが息子達だ」
一番大きな茶髪の子。ペコリしてる。
「ガードナーです」
次に赤毛の子。
「レイザル」
最後に双子の赤ちゃん。アルフさんがマダルバカラを出た後に、生まれたそうです。アニタさんとハンナさんが1人ずつ抱っこしている。ああ、ジェシカもあんなだったなあ。赤ちゃん、可愛い。
「ジャニ、ビート」
次に、ザザンがご紹介。
「儂はザザン、これは女房のハンナ。これが息子だ」
まず、茶髪の子。
「シロンだ」
ちょっとシロンより小さい、本当にそっくりな茶髪の子。
「ナーザ」
私の腰くらいの背の茶髪の子。アルフさんの膝に乗ってる。
「末っ子のダン」
ドワーフって、大家族だけど、子沢山なんだね。
見事に、全員、男児だ。
「「「「娘が、欲しい」」」」
いや、あの、私をそんなに見られても。
「ルナは、義理の妹になるぞ」
アルフさんが冷静な突っ込み。
「「「「いい、義妹」」」」
なんか、どこかの世界に行ってる。
それから、赤ちゃん以外のドワーフ男児達はノゾミと遊んでいる。アルフさんも、連れていかれる。置いていかないで。リツさんたちも別室だし。
「「お嬢さん」」
「は、はいッ」
ガガンさんとザザンさんが改まる。
「まずは感謝するよ、お嬢さん」
「え?」
黒子あるからガガンさんね。
何だろう?
「アルフが、あんなに表情豊かになった。儂らには分かる。アルフは、今、何より落ち着いておる。親父やお袋が、まだ、元気だった頃のようにな」
ザザンさんが続ける。
「アルフはな、実の親のせいで、ずいぶん苦労した」
ああ、酒乱の父親のせいね。
「お聞きしています」
「そうか、アルフはな、父親に似ているだけで、嫌われてな。それでアルフは、誰とも深く関わらんようになった。それがどうだ、あんなに笑っておる」
「きっと、お嬢さんのおかげ何だろうな」
「本当に感謝するぞ、お嬢さん」
「いえ、私、何もしていません。アルフさんには、助けてもらってばかりで」
私が言うと、ガガンさん夫婦、ザザンさん夫婦が笑う。
「ずいぶん控えめだなお嬢さん」
「そうじゃ、お嬢さん、ご両親は? 儂らは兄弟子だから、挨拶に行かんと」
「あの実は………」
私はいろいろ説明。
ドワーフ夫婦から、殺気が溢れ出す。
「で、アルフさんがその『決闘』に勝てば、お嬢さんと結婚か?」
「その、それもありますけど、父を納得させないと」
私の声が小さくなる。
「なら、大丈夫じゃかいか? なあ、ザザンよ」
「そうさな、ガガン」
「お嬢さん、アルフはな、ハーフとは言え、ドワーフじゃ。諦めん、惚れた女の為に、な」
「そうさ、儂らも、諦めんかった。だから、大丈夫じゃお嬢さん。お嬢さんのお父上に伝わるはずだ。何の心配はいらん」
「「大丈夫だ、お嬢さん」」
ガガンさんとザザンさんの言葉が嬉しくて。なんだか、アルフさんに、大丈夫って言われているみたい。
「はい、ガガンお義兄様、ザザンお義兄様」
あ、悶えてる。
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