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マダルバカラ①

お義兄様

 山岳国、マダルバカラ。

 山の要塞。そんな言葉が似合う国だ。

 ショウの牽く馬車は、かなり手前で地面を走る。馭者台にはアルフさんとマリ先輩。

 素晴らしい城壁に、城門。変わってない、あの時と同じ。

 ゆっくり、ショウが城門に近く。

 なんだろう、ずらりとならんだバリスタ。すごい、警戒。まあ、山岳国で、魔の森の山バージョンに囲まれている。

 門番はドワーフ。めっちゃごついドワーフ。

 ものすごい、警戒された。

 主人のマリ先輩が、冒険者ギルドカードを提示。

 納得してくれて、私達も冒険者ギルドカードを提示。

「メエメエ~」

 ノゾミがボンボンのついた尻尾を振って、可愛く鳴く。

「通ってよし」

 早。

 ただ、アルフさんだけ、何度カードを見て、顔見て、カード見て。首を傾げる。

 仕方なく、右目を閉じる。

「お前、アルフか?」

「そうだ」

「よう帰って来たな、どこにいっとった?」

「ちょっとな。兄貴達に早く会いたいんだが」

「すまん、すまん、さあ、通れ」

 やっと城門を抜ける。

 グリフォンのショウの牽く馬車は、大注目だ。仕方ない。ドワーフ率90%。当たり前だ、ドワーフの国だもんな。

 とりあえず、宿を確保。案外すぐに取れた。少ないからね、アルフさんがゆっくり立てる宿は。

「すまん、ちょっと出る。兄貴たちの勤めている工房に行ってくる。それと墓参りに」

「あ、私もご挨拶を」

「お待ちください」

 ローズさんが、櫛を持ち立ちふさがる。

 スパパパパ、と着替えとヘアセット完了。

 本当に何者になってきたのよローズさん。

「行こうかルナ」

「はい」

 片手にお馴染みの魔鉄の槍、もう一方の手を引かれて、宿を出る。

 皆、全く隠れることなくついてきてる。

 見られているから、ちょっと恥ずかしい。

 それより、気になるのは。

「あの、私、変じゃないですか?」

「ん?」

 ローズさんが髪を綺麗にしてくれたけど、ちんちくりんだから、ダメとか言われないかな? すれ違うドワーフ女性は、皆豊満、どこがって? 豊満なんだよ、私にないんだよ。

「何を心配しておる。大丈夫だ、綺麗だぞ」

 あ、めちゃくちゃ嬉しい。

「ロ、ローズさんに後でお礼言わないと」

 恥ずかしいから、うつむいてしまう。

 しばらく歩いて、多分大通り的な道を抜けて、大きな工房の前に到着。

 中に入ると、受付には少し高齢ドワーフ男性。

「すまん、伝言を頼みたい」

「誰にだ?」

「ガガンとザザンに、アルフレッドが帰って来た、第二通りに宿をとってあると」

「そうか、分かった。だが、お前さん、アルフレッドによく似とるなあ」

「本人だ。頼むな」

 アルフさんは長居せず、工房を出る。まだ、お仕事中かもしれないしね。

「さて、墓参りに行こうか」

「はい」

 なんだかチラチラ見られながら、更に移動。しっかりついてきてる。片手になんか持って、モグモグしながら。

 共同墓地まで移動して、やっと、やっと、アルフさんの養父母の墓石の前に。

 すうっと、花が差し出される。アーサーが身を低くして差し出している。

「すまんな、アーサー」

「いいえ」

 アルフさんは膝を着く。

 私も膝を着く。

「親父、お袋。やっと帰って来れた。やっと、嫁にしたい娘を連れてこれた」

「初めまして、ルミナス・コードウェルと申します」

 ご挨拶と祈りを捧げる。

 しばらくして、立ち上がるアルフさん。

「ルナ。ありがとう、祈ってくれて」

「いいえ、私もお会いしたかったし」

「おまえ達もな」

 微妙に隠れていない皆に向かって言うアルフさん。

「私達先に帰りますから、ゆっくりしてきて」

 リツさんが、うふふ。じゃあね、と帰って行くが、すれ違うように、猪見たいに突撃してくる影二つ。

 え、同じ顔だけど。

「あ、兄貴」

 え、同じ顔ですけど。しかも涙だくだく。ひ、引く。

「「アルフゥゥゥゥッ」」

 叫ぶ同じ顔。

 アルフさんは私の手を離して、腰を低く構える。

 え、シールドバッシュ?

  ごすうッ

 体当たりだ、ちゃんとした体当たりだ。あのアルフさんが僅かだけど後ろに少し下がったよ。

「アルフゥゥゥゥッ、よう帰って来たなぁぁぁぁ」

「待っておったぞうぅぅぅッ」

 同じ顔、あ、双子ね。うわ、区別つかない。

「ああ、帰って来たぞガガン兄貴、ザザン兄貴」

 だくだく涙を流す、ガガンさんとザザンさん。

 …………どっちがどっちかわからないッ。

 感動の再会なんだろうけど、まずい、紹介されても区別つかないかも。

「しかし、ずいぶん早かったなあ」

「ああ、パーティーリーダーが気を使ってくれてな」

 アルフさんが指差すと、リツさんがカーテシーしている。

「「おう、グリフォン」」

 え、今気がついたの?

「これはこれはご丁寧にどうも」

「弟弟子アルフレッドがお世話になっております」

「兄弟子のガガンです」

「兄弟子のザザンです」

 ガガンさんとザザンさんも、ご挨拶。

「「で、アルフ」」

 くるり、と振り返るガガンさんとザザンさん。

「「そちらのお嬢さんは?」」

 きたっ、しっかりご挨拶しないと。

 めっちゃ爛々とした目で見てくる。

「話したろう? 嫁にしたい娘だ」

 いざっ、お母様に仕込まれたカーテシー発動ッ。

「ルミナス・コードウェルと申します。初めましてガガンお義兄様、ザザンお義兄様」

 カーテシーでご挨拶。これでいいかな?

 ……………………

 え、ダメ?

 恐る恐る顔を上げると、え、倒れてる。

「こんなにめんこい娘が、お義兄様って…………」

「いい、めっさ、いい……………」

 ぶるぶるしてるけど、え、やだ、怖い。

「なあ、言ったろう?」

「あ、あの、大丈夫ですか?」

「「お、足、綺麗じゃな」」

  ドカッバキッ

 私はスカートを押さえて下がる。

 アルフさんのげんこつが直撃する。

「儂でもまだ全部見とらんのだぞ」

「「膝くらいしか見ておらん」」

 たんこぶ作って、起き上がるガガンさんとザザンさん。

「ご丁寧に挨拶ありがとう」

「親父とお袋にあってくれてありがとう」

 ペコリ、ガガンさんとザザンさん。

「いえ、そんな……」

 もう一度カーテシー。

「儂はガガン」

「儂はザザン」

 区別つかないっ。

「「ようこそマダルバカラに、儂らはお嬢さんを歓迎する」」

 あ、すごくすごく嬉しい。

「ありがとうございます。ガガンお義兄様、ザザンお義兄様」

 嬉しさが溢れて、こぼれ落ちる。

 あ、また、倒れてる。

「めんこい、めっちゃめんこい…………」

「お義兄様って、また、言ってくれた…………」

 嬉しいけど、引いてしまった。

読んでいただきありがとう

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