表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/386

二人のフレデリック④

女傑

「え、帰国を延期?」

 野営の後片付けをしていたら、マリ先輩の携帯電話がなる。

 どうやら、父からのようで、代わるとこれだ。

『すまないルナ、すまない』

 話を聞いたら、私はため息が出る。

『とにかく、ウェルダン領の春祭りまで、お前は帰って来ないことになったから』

「分かりましたお父様」

『詳しい事が決まったら、また連絡するが。その、あの、アルフレッド、君? には、出てもらわないといけなくてね』

 なぜ、疑問系。

「はあ、お願いしますので」

 私は携帯電話をマリ先輩に返す。

「ルナちゃん、どうしたの?」

 リツさんが心配そうに聞いてきた。

「トラブルです、はあ、なんでこんなことに」

 私は頭を抱える。

 結局、片付けて、馬車の中で話すことに。

 まず、私に失礼な獣人に求められたことから始まると、いろいろ何かが溢れ出す。

「なんて失礼なの」

「かわいいルナちゃんを渡すものですか。クレイハートの全力を持って阻止するわ」

 リツさんとマリ先輩が怖い。ローズさんまで、殺気立つし。

 アーサーも厳しい顔だし、サーシャも分かりにくいが耳ピクピク、怒っているんだよね。あれ、どんな仕組みなんだろう? アーシャもミーシャもぷりぷりしてる。

「ルナっち、先に進んで、アルフが怖い怖い」

 リーフが話を促す。

 アルフさん、うん、すごい笑顔だ。

「それで、ウェルダンの大奥様がバックに着いてくれたから、それから要求はなかったそうです。向こうも、従者の方が丁寧にお詫びに来たみたいだし。ただ、昨日のウェルダンの夜会で」

 例の獣人がまた突っかかって来たそうだ。

 内容を簡単にすると、バックに着いたウェルダン領の伝統に従い、私をかけて決闘を申し込んできたと。

「決闘? 今時?」

 リーフが声を上げる。

「ウェルダン領でね、昔、領主を巡って女騎士が決闘したのが始まりで」

「逆でしょ普通」

 リーフの突っ込み。

「ウェルダンは昔から強固な騎士団で守られていますからね。特に女騎士団は、オークも武器を捨てて逃げ出す程です」

 ローズさんが説明。

「どんな女傑の集まりだよ」

「私にも、スカウト来てた」

 流石ルナっち、と親指立てるリーフ。

「今では、ウェルダンの春祭りの名物です。もちろん殺傷不可。あちこちの騎士団が参加し、かけるのは、騎士団のプライドです」

 ローズさんが追加説明。

「子供の部もある」

「ルナっち、優勝したりした?」

「12の時にね」

「流石ルナっち」

 ぐ、と親指リーフ。

 話を戻そう。

「父はそんなことに私をかけられないって、断ってそうです。でも、なんかいろいろあって売り言葉に買い言葉で、その、私がアルフさんに、その、アルフさんを連れて帰ることがばれて、なら、アルフさんにその」

「分かった、儂がその『決闘』に出ればいいんだな」

「すみません………」

 本当に申し訳ない。

「心配するな、きちんとぶん殴ってやるからな」

 いい笑顔のアルフさん。

「しかしルミナス様、確かウェルダンの春祭りの決闘は、団体戦でしたよね?」

「そう、今、何人制か決めているって。とりあえずアルフさんは出てくれるし、私も入れて」

「「「「「何を言ってるの?」」」」」

 異口同音。

「ルナちゃんをかけてでしょうが」

「綺麗な格好で並んでないと」

「衣装の準備をいたしましょう」

「春祭りだから、薄い色だよね」

 錬金術チームとリーフが何か考え出す。やめて、恥ずかしい事になる。

「あの、ルナさん。団体戦ならあと何人かいるって事ですよね?」

「ええ、そうよ。ウェルダン領の騎士を貸してくれるって」

「あの、自分も、お手伝いできないですかね? ルナさんにはお世話になっているし。奴隷はダメですかね?」

「アーサー、ありがとう気持ちだけでも十分だよ」

 申し出が嬉しい。

「でも、ルナちゃんは私達がパーティーメンバーよね? 私達からメンバー出してはダメなのかしら?」

 リツさんまで。

「ルイースお婆様が許してくれるなら、大丈夫ですけど。形式上、お婆様が私のバックに着いてくているから、ウェルダンの騎士を出さないといけないかも」

「そうですか……」

 しゅん、とするアーサー。戦場なら騎士の隣で戦うことは出来るが、試合形式では基本奴隷は出場できない。

 しばらく続いた錬金術チームの白熱した会議を終わらせて、出発する。

「ルナ、大丈夫だ、儂は負けん」

「はい」

 窓の外を見ていると、アルフさんが声をかけてきてくれた。

 心配はしてないけど、不安だ。

 昼過ぎにマリ先輩の携帯電話から連絡がある。

「5体5ですね。はい、分かりました。あのメンバーって、アルフさん以外は」

『ウェルダン領の騎士になるだろうね』

「そうですか。あの、今所属しているパーティーメンバーが、出場してくれると」

 マリ先輩、サーシャ、ミーシャ、リーフも自身を指している。あはは、マリ先輩は絶対にダメよ。ミーシャは論外よ。

『まあ、そうだね。おば様が許してくれるなら。出場メンバーは直前までに決めればいいはずだから。とにかく、お前は春祭り頃に帰ることになっているから。下手に帰って来たら狙われそうで怖いんだ。あの獣人、何かに迫られるようにお前を欲しているからな』

「はい、分かりましたお父様」

『それと、その、アルフレッド、君? いるかな? ちょっと、話したいかな? あ、いないならいいけど』

 なぜ、疑問系なのよ。

「いますよ」

『くうっ、代わってもらえるかい?』

 なぜ、悔しがる。

「あの、アルフさん、父がお話したいと」

「そうか、やっと挨拶が出来るな」

 携帯電話を渡す。

「初めまして、鍛治師アルフレッドです。このような形での挨拶、お許しください。はい、そうです。そうです。え、あの、その、あ、どうされました?」

 なんだなんだ?

「ああ、コードウェル夫人、今、打撃音がしましたが。いえ、問題ありません。誰が立ち塞がろうと、すべて粉砕致します。はい、はい。お任せください。はい。ルナ、代わってくれと」

「はい? あ、お母様?」

『ルナ、帰るのが先になったけど、待っているからね』

「お母様、お父様は?」

『けつまづいたのよ。でも、アルフレッド様って頼りになる方ね』

 母の言葉が嬉しくて。

「はい、とても」

『………ふふ、あなたがそんな声を出すなんて。よほどアルフレッド様が好きなのね』

 ぼわっ、と頭に血が昇る。

「あの、お母様、その」

『ふふ、あなたの帰りを待っているからね』

『ジェシカも話したいッ』

『はいはい、ルナ、いい?』

『ねえ様ッ、いつお婿さん連れて帰って来るのッ』

 私は吹き出した。

読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ