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年末②

挨拶?

「おはよう、ルナ」

「お、おはようございます」

 朝、私はちゃんと自分のベッドで寝てた。

 昨日のあれ、夢じゃないよね。

 あ、錬金術チームの優しい目。夢じゃない。

 すっかり朝の鍛錬に起きれず。おずおず起きてきたら、アルフさんが優しく、おはよう言ってくれた。

「さ、ルナちゃん、早く食べて支度しないと」

 リツさんが温かいスープをよそいながら言ってくる。

「え、支度?」

 何の?

 手伝いながら、私は首を傾げる。

「鍛治師ギルドによ」

「え?」

 分からずアルフさんに振り向くと、肩をすくめる。

「副ギルドマスターだ。儂の保証人だからな」

 え、そうなの?

 そう言えばなんだかんだと心配してくれたな。

 一応、挨拶しないていけないのかな。でも、父の許しがまだないんだけど。

 いつもの定位置、アルフさんの隣。なんだか、恥ずかしい。

「ねえ、ルナお姉ちゃん、アルフお兄ちゃん、いつ結婚するの? 明日?」

  ブハアッ

 私は盛大に噴き出す。

 ミーシャの純粋な言葉に、私は噴き出す。

 噎せる私の背中を、リツさんとアルフさんが擦ってくれる。

 サーシャとアーシャが慌てて、ミーシャの口をふせている。

「ははは、儂的には今日にも結婚したいがなあ」

 私は泡を吹きそうになる。

「ダメに決まっているでしょ、まずはルナちゃんのご両親にご挨拶ですよ」

 リツさんが突っ込む。

「じゃあ、私がお父様に連絡して、コードウェルのお家に連絡を取ってもらうわね」

「ごほっ、ちょっと待ってください、クレイハートから連絡なんか来たら、両親失神しますから」

「ああ、そうね、ルナちゃんには内緒にしてたね」

 何とクレイハート伯爵様から、我が家に連絡が行っていたらしい。

 内緒にしてくれてなかったのね。

「親としては黙っておけなかったのよ。それにルナちゃんにナリミヤ様の屋敷で起きた事を伝えないと行けなかったし」

 私の存在はクレイハート伯爵様から、両親に連絡が行き、それから細やかだけど交流していたみたい。いろいろ便宜を測ってくれたそうだ。学園に入学したエリックにも、シュタム様が声をかけてくれていたと。良かった、私の事でいじめを受けてないか心配だった。

「ありがとうございます、マリ先輩」

「いいのよ。それよりルナちゃん、今回の事は、直接自分の口から伝えた方がいいわよ。いきなり帰って、アルフさんの紹介したら絶対許してくれないわよ」

 それもそうだなあ。音信不通の娘がいきなり男性を連れてきたら、怒るなあ。

「とりあえずセッティングするから」

「あの、クレイハート伯爵様にそんなご迷惑をかける訳には」

「大丈夫よ。私もそろそろ一旦帰国考えていたの。無事に婚約者候補から外れたから。一度帰って来なさいって謂われていたのよ、いい機会だわ。ね、ルナちゃん」

「はあ」

 やっと婚約者候補から外れたのね。

「すぐには連絡つかないから、ちょっと待ってね。あ、アルフさんもいるときじゃないとダメね」

「事情説明すれば、その間に仕事抜けて来るぞ」

 なんだか、トントン拍子だけど。

 わあ、携帯電話越しだけど、ほぼ二年ぶりの家族の声を聞くのか。なんだか、緊張してきた。どうしよう、ダメって言われたら。

 不安だなあ。私、いい、娘じゃなかったし。

 何とか朝ごはんを終えて、私はローズさんによって支度される。サイドの髪を編み込んで、後ろで束ねる。

「どちらのワンピースにいたしましょう?」

「えっと、そっちの」

 成人の時にもらったワンピースにしました。

 外套を来て、アルフさんとリツ邸を出た。

 手、繋がれてる。

 いつもなら心配症だなって思ってたけど、何だろう、すごくドキドキする。周りの目が、異様に気になる、変に思われてないかな、恥ずかしい。

「「行ってらっしゃい」」

 見送られたけど、恥ずかしい。

「どうしたルナ」

「な、何でもないです」

 私はまともにアルフさんの顔が見れない。恥ずかしい。

「あの、アルフさん、私、マダルバカラにご挨拶に行った方がいいですよね?」

 確か兄弟子さんがいたはずだし、アルフさんの養夫婦のお墓もあるはず。

「来てくれるか?」

「そりゃ、もちろん行きますよ。今からの移動はきついけど、行かないと」

 モゴモゴ言うと、アルフさんは嬉しそうに笑う。

「ありがとうルナ、これで兄貴達に会える」

「え、会えるって?」

「実はな、国を出るときに約束してな。次に帰って来るときは、嫁を連れて帰って来るってな」

「え、そんな約束してたんですか? でも、うちの父が、その許してくれないと、その」

 私の不安はそれだ。

「大丈夫だルナ」

 アルフさんは、握っている私の手をぎゅっと更に握る。

「何度でも、何度でも、ルナのお父上に頼むさ。許しが出るまで何度でもな。儂はドワーフだかな、許しが出るまでは梃子でも諦めん」

 嬉しい。嬉しい、嬉しい。

「はい、アルフさん」

 嬉しくて、私はそれが、顔に出てしまった。

「さて、まずは副ギルドマスターだ」

「そうですね」

 私はアルフさんに手を引かれて、鍛治師ギルドに到着。

「ん? 何事だ?」

 私もアルフさん越しに見ると、冒険者ギルドマスターのシェラさんがいた。朝なのに、なんでいるんだろう? まさか、アルフさんに指名依頼的な事かな? 鍛治師ギルドマスターのバルハさんも、副ギルドマスターのダビデさんもいる。

「ああ、アルフや来たか。おや、お嬢さんもどうした?」

 おじいちゃんドワーフダビデさんが、優しく声をかけてきた。あ、手、繋いだままだけど。

「お、おはようございます」

 恥ずかしくて、私は小さくご挨拶。今さらだけど恥ずかしいし、緊張してきた。いけない、しっかり挨拶しないと。

「実はな、ダビデ殿に、挨拶しようと思ってな」

 アルフさんは繋いだままの私の手を、ダビデに見せる。

「ほっほっほっ、そうかこれはめでたい。お前も40だからな。所帯を持つには丁度よかろう。お嬢さん、アルフの申し入れを受けてくれたか、ああ、感謝するよ」

「いえ、そんな……」

「まだ、ルナの両親に正式許しをもらってはおらんが、挨拶に行こうと思っとる」

「そうか、そうかアルフ」

 ダビデさんは、優しく笑っている。後ろで受付女性や他のドワーフ達が静かに万歳。恥ずかしい。

「アルフや。めでたい、儂はお嬢さんさえよければ、すぐに物件を紹介したい、したいんだがな、アルフ」

 なんとも歯切れの悪いダビデさん。

 困った顔になってる。シェラさんも、バルハさんもだ。

「アルフや、お前さんに帰国命令が来とる」

「は?」

 え、確か、知らせるのはずっと先じゃなかった?

「兄貴達からか?」

「いいや」

 ダビデさんは首を振る。

「マダルバカラ第一王子、バーミリアン殿下だ」

 なんで?

 私と繋いだアルフさんの手が強ばる。

「何故、今になって?」

「詳しくはわからん。ただな、アルフ」

 ダビデさんが、息をつく。

「お前さんの師匠の手紙が見つかったらしい。それにはアルフや、お前さんの事が書かれてあるようでな。兄弟子達が変わりに聞こうとしたが、ダメだったそうだ」

 アルフさんを育ててくれた人の手紙。

 私は、握っていたアルフの手に、空いた手を重ねる。

「行きましょう、アルフさん、マダルバカラに」

読んでいただきありがとうございます

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