ドレスアップ④
エクエス様とアーサーの話に、何故か私もいる。アーサーが子犬みたいな目で訴えてきたので、付き添いです。
「君の戦闘スキルは、やはりあのアルフレッド殿からの指導か?」
「はい、剣以外はすべてアルフさんから教えてもらっています」
少し緊張した様子で受け答えしている。
「魔法スキルもか?」
「いえ、おばあ、祖母が教えてくれました」
「ほう、祖母からか。君の祖母は魔法職か?」
「はい。Aランクの魔法使いです」
アイリーンさん、優秀だったみたいだしね。
「それは凄いな。Aランクとは、姉さんなら知っているかもな、君の祖母の名前は?」
「アイリーンです」
エクエス様がシェラさんの方に向くと、シェラさんの方がやって来た。
「まさかアーサー、あんた、メーデン出身?」
「え、はい」
シェラさんに迫られてアーサーが顎を引く。
「アーサー、あんた、闇魔法使いのアイリーンの孫なの?」
シェラさん、アイリーンさんの事知っているのかな。
「は、はい、そうです」
「なんで、アイリーンの孫が奴隷に?」
「ああ、あの………」
ちらっとリツさんを見ると、頷いているリツさん。
「実は………」
アーサーが自身が奴隷になった経緯を説明する。
深いため息を吐き出すシェラ・エクエス兄妹。
「苦労したな少年」
優しい声で辺境伯様がアーサーに声をかける。
「アイリーン殿はな、私達が若い頃に名を馳せた魔法使いでな。美しい黒髪を靡かせて、放つ魔法はそれはえげつなかった」
誉めてるの、それ?
辺境伯様もアイリーンさんを知っているんだ。
「少年、よく見たら、アイリーン殿によく似てる。きっと少年がアイリーン殿の後継者だな」
「あ、ありがとうございます」
アーサーは胸元を押さえる。アイリーンさんの指輪だね。
「少年、君は優れた才能がある。感謝しなさい。アイリーン殿と、その才能に気付いてくれた指導者達に」
「はい」
うん、私も誇らしくなってきた。
それから辺境伯様はアーサーの肩を叩き、再びシェラさんと談笑。
代わりにフリオル様がやって来た。ローズさんに「なんと美しい」と言って手を取ろうとして、ショウが無言で迫って撃退していた。ちなみにノゾミは配膳していたメイドさんについて回っている。あまりの可愛さに、優秀なメイドさんも陥落寸前だ。
「ヴェルサスから聞いていたが」
どう聞いていたんだろう?
私はカーテシー。
「盗賊やオークを容赦なく切り裂いたと聞いたが、これはこれは美しい少女ではないか」
はい?
「名を聞いても?」
「ルミナス・コードウェルです」
「うん、君に似合う美しい名前だ」
「はあ」
なんだ、なんだ。
「あと二、三年したら、誰もが振り向く美人になるだろう。私がもっと若ければ」
「フリオル殿」
あ、アルフさんがやって来た。さりげなく、私の前に立つ。
「指名料、限界まで引き上げますぞ」
「すみません」
アルフさんの魔法の言葉に、素直に謝るフリオル様。え、ミュートの総隊長さんよね。
ヴェルサスさんまでやって来た。
「すみません、うちの総隊長は女たらしで。後で奥方様に絞めて頂きますから」
「あ、それだけはやめて」
うわあ、情けない総隊長さん。
しゅーん、となっているところに、我かが癒し担当のノゾミが膝にすがり付いている。
「ははは、君は可愛いなあ」
「メエメエ~」
撫で撫で。
新しいお茶を頂きながら、話に花が咲く。
野良ダンジョンの話に、装備の話に、野営で振る舞われたリツさん達のお裾分けの話に、私達の戦闘スキルの話。
「失礼だが、あの獣人少年とエルフは?」
ヴェルサスに聞かれ、サーシャとリーフも呼ばれる。
「あの奴隷狩りの被害に? それは大変だったな」
「はい。でも、リツさんにはよくしてもらってます」
「君は?」
「いろいろありまして」
リーフは言葉を濁した。
「しかし、よく見たら、本当にバランスのいいパーティーだな。優秀なドワーフのタンクに獣人の斥候、魔法スキルの高いバランサー、アタッカー、グリフォン、ヒーラー、魔法使い」
そうだね、バランスいいよ。
「やはり伸び代があるのは、彼か?」
ヴェルサスさんがアーサーを見る。
「そうですな。アーサーとそれとサーシャですな」
アルフさんが答えて、サーシャと驚いている。
「え、俺?」
「そうですね」
私も同意。ますます分からない顔のサーシャ。
「なんで俺?」
「基礎能力が高いし、戦闘スキルに関しては、誰よりも飲み込みが早いからな」
「素でまともに打ち合えるの、アルフさんくらいだし」
アルフさんと私の言葉に、戸惑うサーシャ。
「俺、そうなのか?」
アーサーに聞いてる。
「自覚してないところが、逆にすごいですよ」
ええ~、みたいなアーサー。
そう言えば、アーシャが言っていたな。覚えが早くて父親が困っていたが、サーシャには自覚なかったと。おそらくサーシャは身体能力が高い獣人の中でも、優秀なんだろう。素でまともに対応できるのは高レベルのアルフさんだけ。私でも最近身体強化しないと対応できない。なんせ速いんだよ、サーシャは。懐に入られたら私ではどうしようもない。アルフさんは手刀を叩き込んで迎撃してる。瞬力で負荷がかかった身体に、光属性の身体強化で回復し続ける事が出来るから、魔力が続く限り、こちらも身体強化しないとまともに撃ち合えない。
「魔法スキルはアーサー、戦闘スキルはサーシャが群を抜いていますな」
「そうですね」
いかん、アタッカーとしての私の位置が。
隣でリーフが、しゅーん、となっている。
「リーフ、帰ったら、訓練しない?」
「うん、お願いルナっち」
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