ドレスアップ①
やめてッ
「絶対にこっちがいいって、昼間だから、ちらっとならいいって、この脚線美出さなきゃ損だよッ」
「いいえ、なりません、いくら軽く、と言われてもお辞儀の間に片足が丸出しになるではないですかッ」
「やめてッ、私のスカートで争わないでッ」
なんだかなあ。
リーフとローズさんが熱戦。
議題はフレナさんのワンピースだ。
例のアンナ達の拐かしがあって数日。アルフさんに少し距離を置いていたアンナとクララがなついて、ルドルフもアルフさんになついた頃に、冒険者ギルドから呼び出し。
アルフさんは鍛冶師ギルドでお仕事のため欠席。
シェラさんといつもの広い会議室で会う。もちろん、マルコフさん『ハーベの光』や、フレナさんの『紅の波』もだ。
話を聞いて、やっぱり私もホリィさんの元夫を蹴っておけば良かったと思った。隣でアーサーもストーンバレット撃ち込めば良かったと呟く。アーサーにとってアンナとクララはかわいい妹も同然だ。気持ちわかるよ。
闇ギルド連中は一生ドラザールの鉱山で強制労働だそうだ。まあ、当然かな。
「今回はお疲れ様。実はねあんた達いろいろ貢献してくれているだろう。それでね、トウラ辺境閣下から直接に、って話になってね」
来週最後の土の日のお昼に、お褒めの言葉がいただけると。ええ、めんどくさい。
「まあ、お昼だけど、『そこそこちゃんとした』格好でね」
そんな感じだけど。
「どうしましょう。着てく服がないわ」
フレナさんがポツリ。
で、こうなりました。
「お任せくださいッ」
リツさんが変なポーズ。
背中の袋にはゴーレムコア。
マリ先輩もノリノリ。メジャーを構えるローズさんとリーフ。
止められません。
アンナとクララを助けてもらったお礼として、全員分の衣装を準備することに。
それから毎日工房はこんな感じだ。
「アルフ、止めなくていいか?」
「無理だ」
呑気にコーヒー飲んでるアルフさん。
男性の衣装は凝ってないため、直ぐに出来上がった。シャツにベスト、タイ、ジャケット、ズボンだ。それぞれ似合う色で作られた。
今日マルコフさん達の衣装のサイズ合わせだ。
マルコフさんは深い紺色で、本当にどこかのお偉いさんみたいだ。イレイサーは落ち着いた緑。バラックは黒、バーンは薄茶だ。
ちなみにアルフさんは深い茶色、アーサーは真っ黒、サーシャは青、リーフは若草色。
うん、皆さんサイズ、大丈夫だし、これなら辺境伯閣下に会うには大丈夫だね。まあ、過度な飾りは必要ないからね。
ただ、女性陣の衣装でもめている。
「ねえ、これどうかしら?」
「リツちゃん、これ、いつの時代の演歌歌手?」
デザインを見ながら、マリ先輩が突っ込み。
「自分、奴隷ですから」
辺境閣下と同じ部屋、まず無理と、会えないとアーサーは訴えるが、リツさんの押しの強い笑顔に勝てる分けない。
「いいじゃない、似合うわよ、アーサー」
私が言うと、姿見で体をよじってみてる。
「うんうん、似合うよアーサー君」
バーンもうんうん、と頷いている。
一式着てみたアーサー、うん、奴隷紋なければどこかの貴族の子息だよ。背が伸びたね。
サーシャもスラッと長い手足だから、まあ、若い女性がみたら、きゃーだ、きゃー。
リーフもなんだか大人びて見える。
向こうでまだ熱戦が続いている。
お茶でも飲むか。ずー。
本日はホリィさんがお茶やお菓子も配っている。アンナとクララもメイド服でお手伝いしている。
バーンがそわそわしているが、我慢している。あんなことあったばかりで、大人の男性(アルフさんは大丈夫)が苦手だと分かっているんだろうね。
試着を終えたイレイサーとバラックが、並べられたゴーレムコアを覗いている。
「へえ、これがゴーレムコアなんだ」
「こんな風なんだな」
「まだ、学習している段階なんです。なので、話しかけてください」
リツさんが説明している。
不思議そうな顔をしているが、固い挨拶をしているイレイサーとバラック。
リツさんはこのゴーレムコアをどこにでも連れていく。
ホリィ一家にも説明している。アンナとクララはお姉さん風を吹かせて、絵本を読んで聞かせている。
「スリットの位置はこの辺からで」
「下にバニエのように重ねれば上品になりますね」
「そこそこちゃんとした、くらいなのに………」
エキスパートするリーフとローズさん。当のフレナさんは取り残されていた。
そして、辺境伯との面会まで、いろいろいじられる。髪ね。
ローズさんとリーフによる散髪。
それぞれこざっぱり。
当日、ヘアセットつき。
「ほら、やっぱりお姉さんこのデザインばっちりだよ」
赤い髪に合わせたワンピースは、こだわったスカートに入った波のようなスリット。もう一枚の下にスカートが重ねてあり、歩くと綺麗に波打つ。サリナはフレナさんと同じ色のワンピースだか、うん、サリナ、ナイスバディ。その美しいラインを生かしたタイトなワンピースだ。キャリーはふわっとしたブラウスに、キャリーの金髪に映えるような緑のスカート。ブラウスの胸元には、可憐な花のコサージュ。髪にも同じ髪飾りだ。大いにキャリーが気に入っている。エレは鎖骨が微妙に見えるスレンダーでシンプルなワンピース。ローズさんの気合いで、美しいラインのワンピース。紫色で大人の女性の艶がある。ララは可愛らしいピンクのふんわりワンピース。落ち着かない様子のララ。ローズさんがワンピースと同じ布のリボンで可愛らしくアップする。
「いやあ、女って、化粧で化けるね」
バーンがいらん一言。フレナさんの拳が鳩尾に入った。
「リ、リツ様、とってもお似合いです」
アーサーが赤くなりながら言ってる。
「そう? ありがとうアーサー君」
リツさんは瑠璃色の目に合わせた鮮やか青のワンピースだ。銀色の髪をシンプルにアップ。うん、綺麗だ。胸元にはユリのコサージュ。
マリ先輩はワンピースだ。上は白で、スカートは淡いピンク。ウエストは幅広く帯で巻いてる。マリ先輩のウエスト、細い。ローズさんのデザインだよね。
ローズさんは詰襟の濃紺ワンピース。シンプルだよ。マリ先輩とリーフがずいぶん別のデザインを提示したが、頑なに拒否。ちらっとみたら、ローズさんのスタイルを最大に生かした、背中の空いたスレンダーワンピースだった。似合うと思うけどね。
私は元々いろいろあるので、アルフさんの誕生会に着た白いワンピースだ。もうこれ以上いりませんから。
アーシャとミーシャはお揃いのブラウスとスカート。詰襟のブラウスで袖もレースで綺麗に飾られている。スカートはシンプルだ。
ちなみにショウは蝶ネクタイ、ノゾミは赤いリボンです。
冒険者ギルドの手配してくれた馬車に乗り、辺境伯の居城に向かった。
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