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Jランク①

未成年の冒険者。

「はい、ルナちゃんどうぞ」

「ありがとうございます」

 マリ先輩からかわいい藤の籠に入ったサンドイッチを受けとる。リボンで飾られてとてもかわいい。

 お昼になり私達は冒険者ギルドの外の広場にいた。人目もあるから、さすがにいつものティーセットは出てこない。ベンチに座り、並んでいただきます。

「ん~、美味しい、パンが柔らかい」

 ハムの塩気がいい塩梅、しゃきしゃきの葉野菜、マヨネーズが合う。何よりこの白パンが柔らかい。基本的にパンはライ麦パンで噛みごたえがある。特にライ麦パンはみっしり詰まっている感じで、噛んでいると味が出てくる。何度も噛まないといけないが、保存が効くため冒険者には必須アイテムだ。白いパンも無いわけではないが、ちょっと高いため、ほとんどライ麦パンだ。

 しかし、美味しい白パンだな。ふわふわだからいくらでも入りそうだ。もちろん中の具材も素晴らしい。玉子美味しい、マヨネーズが合う。

 もくもくと食べてると、マリ先輩がじっと見つめてくる。

「なんです?」

「ううん、ルナちゃんって、食べてる時すごく幸せそうにしてるから」

「そりゃ、こんなに美味しいものを食べてれば、誰だって幸せそうな顔しますよ」

 だって本当に美味しい。

「本当? 美味しい?」

「美味しいですよ、いくらでも入ります」

 そう言うとマリ先輩は嬉しそうだ。

「まさか、この白パンもマリ先輩が作ったんですか?」

「そうだよ。食パンだよ。オーブンが出来て、酵母が上手く出来たからね」

 酵母は以前からあるが、オーブンは一定の温度を維持し焼き上げる釜の魔道具。薪だと焼きむらが出るから、オーブンだと温度で調整もできる。素晴らしいクレイハート製魔道具。

「今度はクラブサンドイッチかフレンチトーストご馳走するね」

「楽しみにしてます」

 きっと絶対美味しい名前がマリ先輩から出た。うん、楽しみだ。しかし、本当にこのまま甘えていいのかな?

「あの、マリ先輩」

「なあにルナちゃん」

「いつも頂いてばかりなので、何かお返ししたいのですが」

「そんなの、気にしなくてもいいのに」

「それでは、私の気がすまないのです」

「そう? じゃあどうしようかな? うーん」

 マリ先輩が悩む。

「今は思い付かないから、思い付いたら言うね」

「はい」

 自分から言ったが、とんでもないお願いではないことを祈ろう。私はサンドイッチをひときれ残さず食べる。残す? あり得ません。藤の籠をきれいに拭きあげマリ先輩に返した。


 午後は体術講座があり、三人で受講。

 やはり体術スキルのあるローズさんの動きは良かった。マリ先輩は、まあ、かわいいからいいとしよう。

 重心の置き方がおかしいんだよね。体術講座の教官にも言われてたけど、なんかおかしい。

「とにかく相手の動きを読め、大事なのはバランスだ、足腰を疎かにするな」

 はい、その通りだと思います。

 最後に模擬戦なのだが、今回は希望者のみ。もちろん参加です。相手は教官でしたよ。現役のAランク冒険者で流れるような動きで、撃退されました。悔しい。身体強化はダメと言われ、素のままで挑んだが、どう逆立ちしても勝てない。何せ私は平均的な背格好だし、同年代と比べたら力はあるが、成人男性に勝てる筋力はない。ローズさんも似たような感じだった。

 最後に教官から筋がいいと誉められはしたけど、悔しい結果。まともカウンターは食らってしまい、くらくらしながら立とうとしていたため、マリ先輩が「どうどうルナちゃん」と止められた。私、馬じゃないよ。

 本日二回目のヒール。あぁ、温かい。マリ先輩の性格が出てるのか、温かい。

「ありがとうございますマリ先輩」

「いいのよ、大丈夫? もう一度かける?」

「いいえこれ以上かけたら、自然回復力が育ちませんから」

 私の言葉を聞いて、体術の教官が感心したように「よく知ってるな」と声をかけてきた。

 ヒールは確かにキズを癒すが、それに頼りすぎると自己治癒力がヒールに頼る傾倒にあり、また、ヒールをかけないとキズの治りが遅くなったり体力の回復が遅くなる。緊急時は仕方ないが、軽傷だったり体力の回復だけならヒールには出来るだけ頼らない方がいい、それは前世でも言われてきた。その説明をするとマリ先輩は納得してくれたが「必要時はかけるからね」と謂われた。まあ、マリ先輩のヒールは温かいし、気持ちいいから、お願いしますね。 

 それから、休憩を挟んで私の剣術講座です。もちろん手加減しましたよ。マリ先輩とローズさんはね。何故か例の四人組少年冒険者が並んでいたので、仕方なくビシビシバシバシしました。

 後ろでマリ先輩が「抑えてルナちゃん」と言われたので、抑えました。うん、こんなもんかな?

「「「「ありがとうございました姐さん」」」」

 その姐さんって言うのだけはやめてほしい。

 よたよたしながら少年達はお礼を言って帰って行った。

 夕方にグラウスさんと会うため、早めに春風亭にマリ先輩とローズさんを送り、再び冒険者ギルドへ。リツさんが不思議そうな顔をしていたが、マリ先輩が説明してくれるとのことで私は春風亭を出た。

 依頼の報酬を受けるためごった返す冒険者ギルド、さて、どうしようかな? 誰に声かけようか? 相談窓口にも並んでいる。仕方ない、そこに並ぶか。最後尾に並んでいると、中年の女性職員から声をかけられ、以前グラウスさんと会った部屋に案内された。

 程なくしてグラウスさんがやって来る。

「お待たせしましたね」

「いえ、そこまで待ってませんから。手短にお願いします」

「ええ、分かっています」

 グラウスさんは対面するソファーに座り、テーブルに一枚の書類を差し出した。

『Jランク 登録書 保証人 クリスタム王国冒険者副ギルドマスター・グラウス・ハッカー』

読んでいただきありがとうございます。

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