空⑤
結末
壁が上に移動。
多分、騒然となる事なんだろうけど、いろいろ見すぎて驚かない。
そこには棚があり、5個の球体。大きさは私の両手の手のひらで持てるサイズ。なんか、白く濁っているけど。
「これが、ゴーレムコア? すごい、なんて細かい魔法陣なんだ」
ナリミヤ氏が驚いた声を上げる。あのナリミヤ氏が驚いているから、かなりすごいんだろう。
「…………私の声、わかる?」
リツさんが優しくゴーレムコアに話しかける。リツさんにしか、聞こえないんだろう。
「そう、そうなのね。ずいぶん待ったわね。でも、もう大丈夫だからね。貴方達のお母さんのお骨は、私の責任を持って埋葬するわ。庭が広いからそこでもいいわ。そうしたら、毎日お参りできるわ。もう、大丈夫だからね。私の所にいらっしゃい」
こうなるだろうなって思っていた。リツさんがあの壁のメッセージを見て、知らん顔なんてしない。
「ナリミヤ先輩、持ち歩いても大丈夫ですか?」
「ちょっと待ってね。うん、大丈夫だね。ただ、無機物だけど、アイテムボックスは無理だね。意識があるし、そうだねAIみたいだね。サイトウ君、ゲージ使える?」
「いえ、まだです」
「出来ると便利だよ」
何を言ってるのよ、レベルのおばけが。
ただ、時空間魔法が使えるアーサーが悩み出す。
「スキルレベルはどれくらい必要ですか?」
「サイズによるけど最低35くらいかな」
ぐっ、と詰まるリツさんとアーサー。
まだなのね。あれだけパンの発酵してるのに。
「35になると、ショートワープ使えるよ」
悩み出すアーサー。ショートワープまで使いこなせたら、私の出る幕ないね。
「時空間魔法のスキルレベルアップしましょう」
「はい、リツ様」
それからナリミヤ氏がゴーレムコアをチェック。
「うん、全体が目で皮膚で耳だね。普通のゴーレムコアとそれは変わらないけど、どちらにしてもボディが必要だね。サイトウ君、僕のガーディアン、何体か使う?」
「いえ、この子達の希望を聞いてから作って見ます。しばらくは様子見ます」
「分かったよ、良かったら基礎のガーディアンの神経構図あげるね。参考にして」
「ありがとうございます」
それからリツさんが藤の篭に入れる。
「さあ、行きましょうね」
優しくリツさんが篭に声をかけて、私達は部屋を出た。
「濁ってはいないんですね」
私は並べられたゴーレムコアを覗き込んで呟く。
濁っていたと思っていたけど、コアの内部は大小金様々な魔法陣が、絡み合うようにびっしり刻み込まれている。
「これを作った人は優秀な人みたいだね」
ナリミヤ氏がコントロールルームで作業の休憩しながら、答えてくれる。
只今、お昼ごはんです。
ホットドッグと具だくさんのコンソメスープだ。
好みで粒マスタード。ナリミヤ氏、アルフさんはたっぷり。リツさん、ローズさん、アーサー、サーシャはそこそこ。私、マリ先輩は少量。アーシャとミーシャはなし。
リツさん特製の腸詰め、マリ先輩のロールパン、うん、最高。パクパク。
「そうよ、人はね、こうやって食べてエネルギーを得るのよ」
リツさんがゴーレムコアに声をかけている。
端から見たらおかしいけど、何もいいません。
「とにかくいろいろなものに見て、聞いて、それから感じることから始めた方がいいよ」
「はい、ナリミヤ先輩」
「いずれボディを作るなら今から神経となる、『線』を作っていたほうがいいよ」
神経?
「神経って言うのはね、頭と全身を繋ぐ回路ね。これが傷ついたりしたら、その先の手足が動かなくなったり、動きが悪くなったりするの」
ふーん。パクパク。ずー。分かりません。
ナリミヤ氏とリツさんが説明してくれるが、ちんぷんかんぷんだ。しばらくしてまず理解したのはアルフさんだ。付与と関連付けて考えたら、理解できると。ふーん。
アーサーとリーフもなんとなく理解してる。
「お兄ちゃん、分かる?」
「俺に聞くな」
三兄妹は揃って首を傾げる。私もだよ、ずー。
お昼ごはんの後、再びいろいろ探索する。
「リツさん、ゴーレムコアはここがどうしてこうなったか分かってます?」
「ううん、分からないみたい。製作者の女性としか向き合ってなかったみたい。製作者はいろいろ教えていたみたいだけど。いつか、ゴーレムコア達を助けてくれる人が現れるまで、待っていてって、言っていたみたい」
「そうですか」
私は篭に入れられたゴーレムコアを覗く。
「製作者の女性は、いつかボディを作って、世界のあちこちを回りたかったみたいね。この子達に、いろいろスキルあるみたいよ」
「え、ゴーレムコアが魔法スキルを?」
「あるみたいね。ナリミヤ先輩曰く出来ないことはない技術だけど、魔力の消費がかなり悪いし、使える魔法も制限されるみたいだから、そこを補ったなにかを作らないとね」
お悩みリツさん。
「魔石はダンジョンアタックでかなりあるし。まず、神経の作成、骨格をどうするか、背丈に、表面をどうするか。金属の割引もどうしましょう?」
更にお悩みモードのリツさん。
「まず、ボディの簡単なデザインしたらどう?」
マリ先輩が、悩んでいるリツさんに声をかける。
「いくつか作って、好きなデザインを選ばせたらどうかしら?」
「そうね。それがいいわね。基礎の構図あるし」
話がまとまる。
「マリ様ー。奥に変な馬車ありますよ」
通路の奥でリーフが手を降る。
「馬車?」
「マリちゃん、行って見ましょう」
私達はリーフの元に。
確かに変な馬車だ。金属製で、筒みたいなのがあって、車輪がごつい。それに馬と繋ぐ場所が分からない。何台も何台もある。
「変な馬車ですね」
「そうだな」
私はアルフさんと見て回ろうとすると、リツさんが待ったをかける。
「待って、触らない方がいいわ」
「? リツさん、これ分かるんですか?」
「これは『戦車』よ。私達の前にいた世界の武器の一つよ。アーサー君、ナリミヤ先輩呼んで来て」
「はい、リツ様」
アーサーがナリミヤ氏を呼びにコントロールルームに向かう。ナリミヤ氏は整然と並ぶ戦車に厳しい顔だ。
「ナリミヤ先輩、どう思われます?」
「そうだね。ある程度予測していたけど。ここは武器の製作工場、もしくは武器庫だね。女神を引きずり下ろすってメッセージにあったけど、あながち嘘じゃないみたいだけど。これは、ちょっと残してはいけないね。録な連中の手に渡れば、世界構造かわってしまうから」
ナリミヤ氏は一つ、息をつく。
「この島は、内部を破壊後、落とそう」
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