表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
243/386

カラーラ⑥

 私はパジャマ姿で、波打つ水面の上に立っていた。

 ? ? ?

 見渡す限りなにもない。

 何? 何の夢?

「ルナ?」

 呼ばれて振り返ると、こちらもパジャマ姿のアルフさん。

「え、アルフさん?」

 何で、私の夢にパジャマ姿のアルフさんがいるの? 寝癖なんてリアルだし。何で?

「ここは夢か? まあ、いい」

 アルフさんは波打つ水面の上を、道の様に歩いてくる。

「ルナがおるなら、何もいらんな」

 そう言って、ゴツゴツの手が、私の両頬を包み込む。優しく私を見るのは、きれいなオッドアイ。ああ、私の顔が、写っている。

 アルフさんの顔が近づいて来る。

 あ、夢の中だから、いいか、そうか、夢だし、いいか。うん、セーフ。

 いいよね。

 私は、目を閉じる。

「はい、アウトー」

 聞き慣れた声に、私はアルフさんの肩を咄嗟に押す。

「何でおる?」

 恨みがましいアルフさんの声。

「ダメですよ。正式にお付き合いしてないのに」

「そうですよ、きちんとお付き合いしてからです」

 そう言ったのは、リツさんとマリ先輩。お揃いで色ちがいのパジャマ姿だ。

「夢の中ならよかろう?」

「ダメですよ」

 リツさんがバッサリ。

 私は恥ずかしくて、必死に肩を押す。

「あのー、僕もいるんだけど」

 は?

 振り返ると、水色の水玉模様のナイトキャップを被ったナリミヤ氏。

 何だ、何だ、何の夢だよ。

 アルフさんや、リツさん、マリ先輩が出てくるならわかるけど、何でナリミヤ氏が出てくるの。

 私は未だにアルフさんの腕から解放されず、もぞもぞしてる。

 リツさんとナリミヤ氏が何か話しているけど、よくわからない。

「これ、何の夢でしょうか?」

「さあ、よく分からないけど、只の夢じゃないよね」

 私は抵抗を諦めて、大人しく、アルフさんに抱き締められることにした。いいよね、夢だし。

 しばらくして、マリ先輩が慌てて指差す。

「リツちゃん、あそこ」

 マリ先輩の指先にいたのは、灰色の髪、瑠璃色の瞳の女性。

「リ、リリィ様」

 私も慌てる。

「アルフさん、ちょっと離してください」

「仕方ないか」

 皆で礼の姿勢を取る。

「リツさん、あそこを見て」

 白い指先には、二又の特徴的な山頂を持つ、カラーラのダンジョン、青龍の棲みかの山だ。かなり、遠いけど。

 と、言うことはここは海面か。

 リリィ様は無言で指先を移動。私達も視線を移動させると、雲の隙間から、何か出てくる。

 え、あれ、何?

 空から、何か巨大な何かがゆっくり落ちてくる。

 巨大も巨大。多分、トウラ位の面積と体積。

 え、あれ、何?

 巨大な物体は、ゆっくり、いや、ゆっくりじゃない。どんどんスピードを上げて落下してくる。

 咄嗟に、アルフさんが私を庇うように動く。

「大丈夫よ、これは今じゃない」

 リリィ様の声がする。

 巨大な物体は、勢いよく着水。

 激しい水飛沫が上がるが、全く冷たくないし、濡れない。アルフさんが庇ってくれたが、大丈夫だ。

 恐る恐る目を開けると、リツさん、マリ先輩、ナリミヤ氏が真っ青な顔をしている。視線の先には、水の壁が、見上げるように高く唸りを上げて、カラーラに迫っている。

 津波だ。

 津波は勢いを落とさずに、カラーラに迫る。

「ナリミヤ先輩、何とかしないとッ」

「無理だよッ、あれだけの体積、いくらなんでもッ」

「カラーラがッ、ローズッ」

 リツさんが叫び、ナリミヤ氏が絶望的な顔になり、マリ先輩が悲鳴を上げる。

 巨大な津波は、カラーラの街を飲み込み、ダンジョンまでも激しく破壊する。

 私は顔を覆う。

 音がない、全く音がない。それがやけに非現実で、怖くて、私は震える。

 カラーラは、恐らく壊滅だ。

 あれだけの津波だ、逃げようがない。

 カラーラにはアーサー達がいるのに。

 私は膝をつく。

「リリィ様ッ、一体どういうことなんですかッ」

 リツさんが、リリィ様に食って掛かる。

 リリィ様は最後に指先たのは、オレンジ色の星。明け方に光る独特なオレンジ色の星だ。


 私は飛び起きた。

 同室のリツさんもだ。

「ルナちゃん、ねえ、今、津波の夢なんか見た?」

「はい、見ました」

 ああ、やっぱり。と、言うことは。

 私とリツさんはガーディアンを羽織り、部屋を出ると、マリ先輩も出てきた。アルフさんもだ。

 無言で一階の居間に集合。

「確認だけど、津波の夢? リリィ様も出てきたわよね」

 リツさんの言葉に、私達も頷く。

「と、すると、ナリミヤ先輩も見てる可能性があるわね。あの夢って、一体、どんな意味があるのかしら?」

 空から何か巨大な物体が落ちて、それで津波が発生、カラーラを襲う。洒落にならない事態だ。

「最後にリリィ様が指した星、あれは『金木犀』ではないか? 今年はすでにもう見れんはずなのに」

 アルフさんが、最後に見た場合を思い出すように言う。『金木犀』とは秋、ファルコの月始めに三日間しか現れない星で、今年の『金木犀』はすでに見れない時期だ。

「じゃあ、いつの『金木犀』かしら?」

 リツさんが考える。

「リリィ様は『今じゃない』って、仰ったわ。なら、単純に考えて先のこと、つまり、未来予言じゃない?」

 マリ先輩が考えた結果を言う。

 私もそう思っていた。

「だが、そうなると、カラーラを守るための予言だな。だが、守護天使がそんな予言とは聞いたことないぞ」

「え、どうしてです?」

 アルフさんの言葉に疑問で聞き返すリツさん。

「守護天使ってのは、基本的には見守る立場にあって、この世界は干渉はせん。スキルの管理と、まあ、加護を与えたものには、祈れば相応の力を与えてくれるがな。こういった街の崩壊等には、見守るだけのはずだ」

「そうなんですか。なら、どうして、あんな夢を?」

「さあなあ」

 分からん、とアルフさんはお手上げ。

「何より。なんでこのメンバーなんでしょう?」

 私が聞くと、マリ先輩が答えてくれる。

「『加護』持ちじゃないかしら? ナリミヤ様もガイア様の加護があるし。共通点はそれしかないような気がする」

 なるほど。そうか、加護か。

「どちらにしても、きっとリリィ様は何か私達に伝えたかったはず。それが分かればいいんだけど。このままにしておけないわ、もし予知夢なら、何とか回避できないか考えないと」

「どうやって? カラーラの人口は10万を越すぞ。それを避難させるのか?」

 アルフさんが、ほぼ不可能なことをいう。そうだ、カラーラはクリスタム第二都市。相応の人口がいるし、避難と言ってもどこが安全かなんて分からない。

「ねえ、あんな大きな物体、そもそもどこから来たのかしら? 隕石でもないようだし」

 マリ先輩が初めて聞くワードを言う。説明してくれたけど、よく分からないが、世界の外から降ってくる石らしい。ただ、勢いとかの問題で、小さくても破壊力が凄いらしい。

「確かに、あれだけの物量が空にあること自体がおかしいし。実はちらっとしか見えんかったが、建物の様なものがあったんだが、関係あると思うか?」

「あ、アルフさんにも見えました?」

 リツさんとアルフさんには、あの巨大な物体に、建物らしきものが見えたらしい。

「え、じゃあ、あれに人がいるの?」

「分からないわ、確かめようがないもの。はあ、考えが纏まらない。ナリミヤ先輩に相談しましょう。もしかしたら、同じ夢を見ているかもしれないし」

 リツさんが、頭を振ってどうするか決めた。

読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ