カラーラ⑤
炊き込みご飯
「ただいま」
「おかえりリツちゃん、どうだった?」
「沢山収穫したわ。マリちゃんの方は?」
「ばっちり。オータムオイスターにムルーナ貝も沢山。あとは小豆も大量にね、あ、長ネギみたいなのもあったの。とりあえずあるだけ買ったわ」
「長ネギがあったの? じゃあ今日は白菜と長ネギ使って夕飯にしましょうか」
リツさんとマリ先輩が、きゃっきゃ言って話している。ローズさんとショウがぐったりしてるけど。
私もお手伝いして夕飯の準備。白菜はオーク肉をスライスしたのと交互に挟んで煮始める。それから、リツさんのアイテムボックスにあるウサギ肉の唐揚げに、長ネギ、なんがかスティックみたいに長い野菜を刻んで、調味料と混ぜてのせてる。あ、美味しそう。
「油淋鶏だあ」
だから、なんでいるのよ大富豪。
「あ、斉藤君、カラーラクラブを手に入れたんだ。解体してもらったから後で渡すね。それと寄付の件も終わったから」
「ありがとうございます」
ああ、孤児院と治療院、保護院への寄付か。カラーラは街の規模が大きいため、孤児院や治療院等は比例して大きく、数がある。リツさんフィーラ・クライエで得た素材や宝飾品、武器、防具類の買い取り金を寄付すると言っていた。私達は特に文句はない。十分に頂いていますからね。ナリミヤ氏が行政に正式に手続きして、同じ額を寄付する手はずを整えた。リツさんはランクが低いため、あまり高額の寄付は問題があるが、ナリミヤ氏が上手くやったそうだ。うん、ご飯、大盛りにしよう。
リツさんが唐揚げにソースをかけながら聞いている。
「クラブってことは、蟹ですか?」
「うん。一応魔物だからね。松美達と手分けして50体ほど確保したから」
私は吹き出す。
あのグレイキルスパイダー三姉妹来てるの?
この人、ワープにカーゴ使えたね。うん、受け入れよう。
「さあ、ご飯出来たよ」
マリ先輩の声に、グレイキルスパイダー三姉妹の事はきれいに消去。
いくらでも食べます、キリッ
「いただきます」
「「「「いただきまーす」」」」
油淋鶏をぱくり。
あ、いつもの唐揚げと違う。香りが違うし、ちょっとあっさり食べれる。でも、ご飯が進む。白菜とオーク肉のお味噌汁は、と。うん、白菜柔らかい、あんなに沢山あった白菜が、小さくなっているけど、うん、キャベツと違う柔らかさ。
「ああ、油淋鶏だあ」
大富豪がばくばく食べてる。
油淋鶏と白菜とオーク肉のお味噌汁は大好評で終了。食後、ナリミヤ氏がリツさんにカラーラクラブを渡している。そこそこレベルの高い魔物らしいが、ナリミヤ氏とスレイプニル、グレイキルスパイダーにかかれば、数分も持たない。脚一本が太いこと太いこと。私の太もも位ある。
リツさんは次々に出されるクラブを、自身のアイテムボックスに入れる。
「ありがとうございますナリミヤ先輩」
「いいんだよ。夕飯ご馳走してもらっているからね」
「明日、これを使って何か作ってみますね」
「ありがとう斉藤君ッ」
興奮するナリミヤ氏が、自身の宿に引き上げた後、皆総出で下拵えだ。
リツさん、マリ先輩魚を捌き、その魚の切り身を私とローズさん、アーシャで切り分ける。アルフさん、サーシャとリーフはオータムオイスターの処理だ。アーサーとミーシャはエビのから向きだ。
宿に台所あるので、鍋にカラーラクラブを茹でてから、身から外す。なんだろう、いい匂い。
皆で味見。
「蟹だわ」
「あ、美味しいわね」
「濃厚な感じです、茹でてもしっかり味がありますね」
「塩気が旨いな」
「このままでも美味しいです」
好評だ。
「定番は鍋だけど。ちょっとサイズ的に無理ね。炒飯やサラダ、生春巻、クリームコロッケかしら。ゆで汁勿体ないから、明日のお味噌汁か、今からためしに雑炊する?」
リツさんの言葉に、皆でゴニョゴニョ。雑炊となる。
醤油で味を整え、小さめに切った白菜を入れて、冷やしてあるご飯入れて、ほぐしたクラブの身を入れて、溶き卵入れて出来上がり。
「熱いからね」
ありがとうございます、キリッ
「「「「いただきまーす」」」」
ぱくり。
あ、あっつう。なにこれ? 今までの雑炊と、味が全然違う、〆とかじゃない、ちゃんとした料理だよ。スープが美味しい、ご飯に味が染み込んでいくらでも入りそう。エビと違う。
「リツさん、これ、美味しい。明日も食べたい」
未成年ミーシャが、リツさんにおねだり。アーシャがたしなめている。
私も食べたい。
「明日も蟹にしましょうね。おいしく作るから」
「私。お手伝いする」
ミーシャが手を上げる。よし、私も。
次の日、リツさんは宿に残って料理の支度をする。アーサーが残りたいと訴えたが、はい、ダメ。貴重な戦力だからね。まあ、リツさんに「沢山収穫してきてね」と言われて、いそいそついてきた。一応リーフも料理のお手伝い。マリ先輩とローズさん、ショウはマルシェを周り、早く切り上げて帰って来る予定だ。
私達は昨日の果樹園をお手伝い。昼過ぎまで手伝いして、持たされたお弁当を食べて、更にお隣の農家の収穫のお手伝い。リツさんが昨日交渉していたのだ。カボチャに白菜、長ネギ、カブを収穫。
うわあ、大量。
アーサーが個数をチェック。支払い額を計算。
果樹園とお隣の農家さんに感謝される。
「いやあ、本当に助かりました。これ、持ってって」
と、果樹園から追加でオリーブ、農家から長ネギを一束追加でもらった。フィーラ・クライエのマジックバックに入れて、挨拶して帰った。明日、トウラに戻る予定だ。
農家の皆さんに別れを告げて、宿に戻る。
ああ、お腹減った。
「おかえり、ルナちゃん」
「メエメエ~」
宿に戻ると、マリ先輩とノゾミが出迎えてくれる。
うん、いい匂いが漂って来てる。
「もうすぐ出来るわ。先にお風呂入る?」
汗もかいてるから、先にお風呂をいただく。アーシャとミーシャとさっと入り、男性陣と交代。
こざっぱりとして台所に行く。
「おかえり、もうすぐ出来るからね」
リツさんが笑顔で迎えてくれる。
ワクワクナリミヤ氏はすでにセッティングすみ。
お皿やカップやら並べていると、男性陣もお風呂終了。
「さ、皆お疲れ様、今日は炊き込みご飯よ」
リツさんがミトンをして土鍋を二つ並べる。
野菜とキノコのお味噌汁と、白身魚のソテーつき。豪華だ。
「まず、こっちが、蟹肉と蟹味噌の炊き込みご飯」
土鍋の蓋を開けるリツさん。
か、香りが、香りがすごいッ。涎が出てきた。
「こっちが、サマーオイスターの炊き込みご飯よ」
もうひとつの土鍋の蓋を開ける。
こっちも香りがすごい。サマーオイスターがびっしり並んでいる。
私は蟹の炊き込みご飯。それぞれお茶碗に盛って、いざ、
「「「「「いただきまーす」」」」」
ぱくり。
うわあ、美味しい、ご飯に味が染み込んでいて、海の香りがする。ちょっと焦げてる所があるけど、そこが美味しい。
サマーオイスターも、味が違うけど美味しい。
皆、よく食べる。
うちの一番の大食漢はアルフさんだけど、ショウも最近食べる量が増えてる。次サーシャとなんと細身のリーフがよく食べる。アーサーも私以上に食べる。ナリミヤ氏もばくばく食べて、土鍋が空だ。
「あら、せっかく出汁用意したけど。まあ、次回にしましょう」
え、そんなのあったの?
なんでも、炊き込みご飯にお出汁を入れて食べるそうだけど、肝心の炊き込みご飯がない。
「斉藤君、蟹採って来ようかッ」
「もう、大丈夫ですよ」
興奮するナリミヤ氏を、リツさんが冷静に対応していた。
読んでいただきありがとうございます




