カラーラ④
収穫
次の日。
マリ先輩を先頭に別部隊が出撃。マルシェですよ。マルシェ。ショウがいるので下心あるのは撃退できる。
私達はリツさんと一緒にお手伝いに向かう。そこそこ歳の女性がニコニコしながら、マルシェの入り口で待っていた。
「本当に助かるよ。旦那が腰をやってね。収穫が間に合わなくてねえ」
女性はマルタさん。
いつも大きな背負い籠を背負ってマルシェで野菜を売っていると。息子さん夫婦もいるが、孫達まだ幼くお嫁さんは手が離せず、息子さんとマルタさんで作業していると。
一時間ほど歩いてやっと到着。野菜を背負ってマルシェまで通っているなんてすごいなあ。
畑には男性、マルタさんの息子さんがせっせと白菜を収穫していた。
ずらりと並んだ白菜。え、何個あるの?
リツさんが浮き足立つ。
男性、タットさんと挨拶して早速作業開始。
三兄妹はマルタさんと別の野菜の収穫に向かい、私達は白菜の収穫だ。
「こうやって、こうです」
「こうですか?」
「そうそう上手だね」
こういう時、アーサーが強い。あっという間にコツを掴んで、次々白菜収穫。
私もなんとかかんとか収穫。コードウェルの畑の整備のお手伝いしてはたからね。アルフさんは運ぶ、リツさんがてきぱき汚れを落とす。
うわあ、腰にくる。
アーサーが三個収穫し、私は一個のペースで収穫。途中リツさんが中座、腰をやったマルタさんの旦那さんの様子を見に行った。
「ありがとうございます、本当に助かりました」
しばらく収穫して、お昼近くでやっと終了。
山積みになった白菜。
リツさんが個数確認して、計算してる。
アーサーが額の汗を脱ぐっている。うん、爽やかだ。
私は腰、腰、痛い。
「ルナちゃん、一休憩しましょう」
「はい、リツさん」
リツさんに呼ばれて向かうと、シートを敷いてお茶の準備している。
三兄妹とマルタさんも合流。マルタさんの旦那さんに、タットさんの奥さんと二人の子供、一人はヨチヨチ歩きだ。あ、危ない、転けそう。
「本当にありがとうございます、治療までしていただいて」
マルタさんの旦那さんがリツさんにお礼を言ってる。
「軽いヒールなので気にされないでください。野菜を全て売って頂いたんです。こちらの方がお礼をしないといけないんですから。さ、どうぞ、私の故郷のお菓子です。良かったら食べてください」
と、たい焼きを並べる。
リツさんが内容説明。
まあ、大好評。上の三才のお孫さんの食べっぷりのいいこと。
下の子も柔らかい所をお嫁さんにちぎってもらって食べてる。
私も頂こう。ぱくり。
リツさんとマルタさんの会話が弾む。
ぱくりぱくり。
途中でお茶を追加しながら、ぱくりぱくり。
「え、作り方ですか?」
リツさんが聞かれて困っている。
「型はありますが、この型は熱伝導がですね、えっと、そうだ」
リツさんはぽん、と手を叩く。
「アルフさん、ちょっといいです」
「なんだ?」
三個目のたい焼きを食べてるアルフさんに、リツさんが相談。
なんだろうぱくりぱくり。
「出来るが出来るが、炉がないと出来んぞ」
「大丈夫です、魔道炉持って来てます」
ぶっ
吹き出すアルフさんと私。
え、持って来てるの、工房の魔道炉。
結局、マルタさんの家の庭先に魔道炉を出して、午後はアルフさんとリツさんは何かの作業に入り、私達はお隣の農家の収穫のお手伝い。噂を聞いた、お隣さんが来て、リツさんと交渉。私とアーサー、三兄妹が行くことに。もちろん買い取りだ。お隣さんは果樹園だ。オリーブやリンゴ、洋梨、ブドウが豊作と。私とミーシャはオリーブを摘み、アーサーとサーシャ、アーシャは果実だ。普段使わない筋肉使うから、あちこち痛い。
作業を終えた頃にリツさんが来て、果実をチェック。買い取りとなる。お隣さんはほくほく顔だ。
「買い取ってもらって助かるよ。今年はどこも豊作で値崩れしそうでね。買ってもらって感謝するよ。出来れば明日も来て欲しいんだけど」
「明日までなら、大丈夫ですよ」
リツさんが約束しちゃったよ。いくつかおまけにもらっている。
お隣さんはしきりにアーサーとサーシャに何か聞いてる。なんだろう?
帰り際聞いてみた。
「どうしたの?」
二人は気まずい顔。
「下の娘さんを紹介されまして。でも、自分、リツ様の奴隷ですから」
「俺にはアーシャがいるしな。ミーシャもまだ未成年だし。断ったよ」
「そうなの」
二人とも、顔、いいしね。働き者だし。
そうこうしているうちに、マルタさんの家に到着。
「あんた、働き者だね。男前だし、うちの娘をもらってくれないか?」
「お前んとこは行き遅れだろうが、うちの娘はどうだい? 親が言うのもなんたが、料理上手なんだよ」
アルフさんが困惑して、いろんな人に囲まれている。私達の姿を見て、アルフさんはほっとした表情だ。
「ああ、やっと戻って来たか」
私はアルフさんに手招きされる。なんだろう?
「心遣い感謝するが、儂には、ルナがおるのでな」
はい?
一斉に視線が集まる。私は顔に血が集まる。
あ、そうか、あれか、私は防波堤だ。だけど、恥ずかしい。恥ずかしい。嬉しい。恥ずかしい。
恥ずかしいからうつむいていると、アルフさんに言い寄っていた人達は諦めたようだ。
「ずいぶん。べっぴんさんだね」
「うちの娘じゃ、勝てんなあ」
恥ずかしいから、言葉が耳から抜けていく。さりげなく、アルフさんが肩を抱き寄せるから、心臓ばくばくだ。恥ずかしい恥ずかしい。だけど、私は防波堤。じっとして、役割を果たさなくては。なんとか去って行ったけど、私は恥ずかしいままだ。
「あの、アルフさん」
「なんだ?」
「皆さん、帰りましたよ」
「ああ、そうだな」
私は肩を抱くアルフさんの手をちょんちょんする。やっと解放された。
「ところで、何を作っていたんですか?」
それでも恥ずかしいから誤魔化して聞いてみた。
「これだ」
丸い型が横並びに二つ並んだ型だ。たい焼きと同じように挟んで焼くみたい。
「これなら。焼きむらがでないと思ってね」
リツさんが、マルタさんとお嫁さんに使い方を教えている。たい焼きの丸バージョンかあ。具材はたい焼きと同じ、中身はいろいろ変えられるらしい。うちでは、焼かないのかな?
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