カラーラ③
あっつう
買い物を済ませて集合場所へ。
「あれ、サーシャ、リツさん達は?」
集合場所にはサーシャとアーシャとショウしかいない。
「何か、野菜買いに走って行った」
疲れた表情のサーシャ。こちらもぐったりショウをアーシャが優しく撫でてる。
「野菜?」
「ハクサイ、とか叫んで」
「そう」
目に浮かぶ。
話を聞いていたら大変だったらしい。リーフは野菜中央に回り、露店のおばちゃん相手に、心弾むトークをしながら値切り、野菜をゲット。途中で美少女アーシャを狙ったナンパを撃退、鼻息荒いのがミーシャを狙って来たので、路地裏に連れ込んで気絶させ、リーフにまで息づかいのおかしいのが忍びよって来たので、これも路地裏に連れ込んで締めて来たと。
お兄ちゃん、大変。
しばらくしてスキップでもしてそうなリツさんとマリ先輩。元気なリーフとミーシャ。げっそりとしたアーサーとローズさん。お疲れ様です。
「お待たせ、ルナちゃん、貝柱買えた?」
「はい、かなり買えましたよ」
「ありがとう」
「リツさん、何の野菜買いに行ったんです?」
「ふふふ、これよ」
と、見せてくれたのは、キャベツの太くて長い感じの葉野菜だ。
リツさんは頬擦りしそうだ。
「何の食事になるんです?」
「代表的なのは鍋だけど。せっかくだからキムチにもしたいから沢山手に入れたいの。明日収穫のお手伝いよ」
何故?
何でも今年は豊作らしく、露店に出していた女性に人手が足りないと聞いてお手伝いを希望。もちろん全て買い取りを条件で。
結局、野菜の収穫にはリツさん、アーサー、私、アルフさん、三兄妹が行き、残りメンバーとショウとノゾミは魚や野菜の買い出しだ。
「魚醤が欲しいわ」
「何に使うの?」
「キムチに使うのよ」
「じゃあ探しましょう。露店の誰かが知っているかも」
リツさんとマリ先輩が楽しそうにお喋りしてる。かわいい。
ほどなくしてナリミヤ氏がやって来て、宿に向かう。ナリミヤ氏は別の宿だ。
宿に着いて、休憩してから、再び出かける。漁港だ、完全に観光だ。オータムオイスターの殻を見事な手つきで外している主婦の皆さんに混じり、リツさんやマリ先輩がチャレンジ。上手く行かない。何故かアルフさんは道具を研いでる。指名料がいる鍛冶師が、研ぎをしてるよ。
「いやあ、兄ちゃん。あんた覚えがいいなあ」
「ほんまやなあ、えらい男前やしなあ」
「はあ」
サーシャが主婦に大人気だ。
ちょっと無愛想な感じのサーシャだが、無言でもくもくとオータムオイスターの殻を開けていく横顔に、主婦達がメロメロだ。
あっという間とコツを掴んで次々に殻を外していくサーシャ。私もやってみたが、無理だ、最後は真っ二つにしようと、ナリミヤ印のナイフを引き抜いたので、リツさんのチョップが飛んだ。アーサーも四苦八苦。
リーフとアルフさんはそのうち出来るようになるし、何故だ。
ローズさんがいつも通りにお茶を出すと、主婦達は感動。何かもらっている。
小さな魚だ。
「小さいから、売り物にならないけど、素揚げして酢漬けしたら、まるごと食べれるよ」
「ありがとうございます。あの魚醤って、どこに行けば手に入ります?」
リツさんが聞いている。
「魚醤? あれは売ってはないね。家庭ごとの味だから。作り方教えてあげるよ」
「ありがとうございます」
リツさんが主婦達にレシピを聞いている間に、アーサーがサーシャに教えてもらって殻むきしてるが、上手く行かない。私も上手く行かない。きい、悔しい。
「かわいいねえ」
「ほんまにかわいいねえ」
「メエメエ~」
ノゾミがご機嫌で鳴いて主婦達が撫でてる。小さな子供まで来て、囲っている。
「あんたおとなしいねえ、これ食べなあ」
「ほら。こっちも食べな」
「ピィ~」
ショウには干した小さな魚だ。せっせと食べてる。
てか、グリフォン怖くないの?
「ほら、こうして、こうだって」
サーシャが手際よく殻を開けて中のオータムオイスターを外す。
「くうっ」
アーサーが四苦八苦、私も四苦八苦。
何度かチャレンジしたが、結局、出来なかった。
本日の夕食は取れたてのオータムオイスターのフライだ。
リツさんが片栗粉でオータムオイスターを洗うと、灰色っぽい汁が出てきた。
「片栗粉が汚れをすいとるのよ」
「へえ」
それから次々にパン粉をまとって、からっと揚げられる。タルタルソースたっぷり。
お魚が沢山入ったお味噌汁もあり。
何故か別の宿のナリミヤ氏が来て、ワクワクして待ってる。
ご飯、エビフライと白身魚のフライもついて。
「ミックスフライ定食ね」
わーい、美味しそう。
「はい、頂きましょう」
「「「「「いただきまーす」」」」」
まず、お初のオータムオイスターのフライを一口。
「あ、あっつう」
熱々のオータムオイスターは、旨味が溢れて、僅か塩気があるがそれが絶品。だが、激熱。タルタルソースが冷たいけど、あっつう。
「あっついわね」
マリ先輩が熱々言いながらオータムオイスターを食べてる。ローズさんは沈黙してる。熱いんだろう。アルフさんもアーサーもハフハフ言いながら食べてる。三兄妹とリーフも熱すぎたのか、水を飲んでる。
「ああっ、カキフライだあっ」
ナリミヤ氏はばくばく食べてる。熱くないの?
「美味しいわね。また、沢山手にいれましょうね。コロッケやどて焼きとかもいいかも。クラムチャウダーもいいし、あ、白菜あるから鍋もいいわね」
「はい、リツさん」
キリッ
私はふうふうしながら、オータムオイスターのフライを慎重に食べた。お魚のお味噌汁もずー、うん、いつもと違う。魚の美味しさが出ていて、ご飯が進む。エビフライもタルタルソースつけてパクッ、安定の美味しさ。白身魚も美味しい。
ご飯が美味しい。幸せかも。うん、食べれる、美味しい。
「ルナちゃん美味しい?」
リツさんが優しく聞いてくる。
「いくらでも食べれます」
キリリッ
読んでいただきありがとうございます
しばらく隔日投稿になります、すみません




