リハビリ①
「やっぱり、錆び付いてる」
私は模擬刀片手に呟く。
「なんで、あんなに強いんだあ」
「どうしてルナお姉ちゃん強いままなの?」
「あれはな、別の生き物なんだよ」
リーフが地面を叩き、ミーシャが訴える。
サーシャが慰めるが、聞こえてるって、失礼だね。
私は戦闘訓練に参加が許されたが、体が言うこと聞かない。
「うーん」
模擬刀ブンブン。
「ダメだ、錆び付いてる。ちょっと魔の森に行ってみるか」
「あはは、ダメに決まっておろう」
アルフさんがツッコミ。
くう、閉じ籠り期間が長くて、錆び付いてる。
アーサーとサーシャに勝てない。
悔しい。
仕方ない、ちらっ、とアーシャを見る。
びくっと震えるアーシャ。
「ルナ、顔、顔」
アルフさんが、更にツッコミ。
とにかく、閉じ籠り前までに戻さないと。
私はひたすら基礎動作を繰り返した。
久しぶりに冒険者ギルドに。
冒険者ギルドカードを失効しないために、薬草提出をした。
「あ、アルフー。久しぶりー」
パタパタとバーンがやって来た。マルコフさん達『ハーベの光』。フレナさんの『紅の波』もいる。
「マルコフさん、帰って来ていたのか」
「ああ、一昨日な」
あの野良ダンジョン。何度か潜ったようだ。
詳しく聞きたいけど。
「ルナ君、どうしたんだい? ずいぶん痩せたようだが」
マルコフさんが私に気付いて心配して声をかけてきた。
「ちょっと、体調崩して」
「本当、痩せたわねルナちゃん」
フレナさんも心配そうに聞いてくる。
「もう大丈夫です。食欲戻りましたから」
「何だったの?」
「食べ物が入らなくて、吐いてばっかりで。果物のジュースしか入らなくて」
「ふーん。それで?」
「だるくてだるくて、でも、今はちゃんと食べれるようになりましたから」
「そう、アルフ、ちょっといいかしら」
「なんだ?」
アルフさんが、マルコフさんとフレナさんに連行される。
「ちょっとアルフ、あんた、なに考えているのよッ。ルナちゃんまだ成人したばかりでしょうがっ」
「なんの事だ?」
「アルフ、見損なったぞ。ルナ君、つわりじゃないか? まだ、正式に式も上げてないだろう」
「違う違うって」
アルフさんが、必死に弁解してる。
慌てて説明に入る。
何度も言って、やっと納得してくれた。
「勘違いだったんだね、ごめんねアルフ」
「すまないアルフ」
「いいさ」
なんで、こんな事になるんだろうね。
「なんで、アルフさんなんですか? 私、アーサーとかと一緒のことが多いから、アーサーと勘違いさせるなら納得するんですけどね」
沈黙。
ん?
アーサーの顔色が悪くなる。
「じ、自分は、ルナさんの弟の位置ですっ」
必死に訴えるアーサー。
何、何、何を必死に訴えてるの?
あ、アーサーはリツさんだったね。
「ごめんアーサー。ごめん」
「いいえ、ひぃッ」
何故か怯えてサーシャの後ろに。
なんだ、なんだ。
バーンが、大人げない、って呟くけど、意味わかんない。
それからしばらく雑談していると、来月カラーラに行く話題になる。
「あら、私カラーラ出身なのよ」
キャリーが嬉しそうに言う。
「貝類がほしくて」
「そうね、行くのはファルコの月ね。秋時期ならオータムオイスターが美味しいわよ」
「オイスターですか…………」
リツさんの中できっと何か浮かぶ。
なんだろう、わくわく。
「貝柱を干した物とかもあります?」
「もちろん、あるわよ。有名はお土産ね。ちょっと手間はかかるけど、スープのもとにするととっても美味しいのよ」
「貝柱…………」
リツさんが何か頭に浮かべている。
なんだろう、わくわく。
「ダンジョンには行かないの?」
バーンがポロリ。
凄まじい視線が突き刺さり、バーンが、え、みたいな顔。
「ダンジョンはしばらくいいわね」
「そうね、しばらくいいわね」
「こちらをしばらく拠点といたしましょう」
リツさん、マリ先輩、ローズさんが息つく間もなく続ける。
あれだけ、ダンジョンダンジョン言ってた癖に。
でも、今ならダンジョン潜りたいなあ、錆び付いてるから。
マルコフさんがアルフさんに、どうしたんだ、と聞いている。
「ちょっとな」
と、言葉を濁すアルフさん。マルコフさんはなんか察知したのか、それ以上は聞かない。
「あ、そうだ、アルフ達に土産があるんだ」
「そうそう」
マルコフさんとフレナさんがごそごそ。
「装備品を格安で作ってもらって、こちらも助かったからな。受けてってくれ」
「そうね。この装備品のおかげでかなり深く潜れたよいなものだからね」
マルコフさんとフレナさんから袋が渡される。
リツさんが中身を確認。
「魔石ですか?」
「そうだ、きっと皆さんなら有効に使ってもらえると思って」
中には赤、緑、水色、黒の魔石が一個ずつ。無色が五個。そこそこ大きい。
「こんなに高級な物、いただくわけには」
「いいんだ。これくらいさせてくれ。今回のダンジョンアタックで、俺達もかなり稼がせてもらったからな」
「そうね。これでサリナの武器の新調できるわ」
サリナの武器は確か、鉈みないな形の剣だったなあ。
話が進む。
「ルナちゃん、ルナちゃん」
「あ、はいはい」
ぼーっとしていた。マリ先輩が心配そうに覗き込んで来た。お肌、きれいだなあ。
「大丈夫? まだ、具合悪いんじゃない?」
「大丈夫ですよ、ちょっとぼーっとしていただけですから」
「そう? ならいいけど、さあ、帰りましょう。皆さんをお茶にご招待したのよ。ルナちゃんは何がいい? 暑いからジェラートがいい?」
「何でも食べます」
キリッ
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