休憩⑤
ダビデさん
「ルナちゃんッルナちゃんッ、起きて平気なのッ?」
「ルミナス様ッ、吐き気はございませんかッ」
「ルナさんッ、歩いて大丈夫何ですかッ」
「いや、良かった良かった」
「ルナさんッ大丈夫なのッ?」
「うわーん、ルナお姉ちゃん、良かったよう」
「ルナっち、本当に大丈夫なのッ?」
「落ち着けって」
「「「「「なんで冷静ッ」」」」」
鋭いツッコミが入る。
サーシャがポリポリ頬をかく。
「足音、足音がいつもの調子だったから、戻ったなって」
さすが、感覚の鋭い獣人だ。
「さあ、みんな」
リツさんが手を叩く。すごく優しい顔だ。
「さあ、ルナちゃん、座って。何か口に出来る?」
「あー、水分なら、大丈夫かと」
今まで固形物が入らなかったから、いきなりは無理かも。
「じゃあ、ジュースにしましょうね。ミックスジュース」
「あの、リツさん、いろいろご迷惑をおかけしました」
「いいのよ、さあ、座って」
「はい」
いつもの定位置に。
リツさんが、さっとオレンジ色のジュースを出す。
うん、いい匂いだけど。
すごい注目、飲み辛い。
マリ先輩ガン見してくる。
「あの、ご迷惑かけましたが、非常に飲み辛いのですが」
「あ、ゴメンね」
ずー、うん、美味しい。ずー、ずー。
「ご馳走です」
何故か半泣きマリ先輩。
「良かった、良かった、ルナちゃんがちゃんと食べてる」
ローズさんも心底安心した顔だ。アーサーも三兄妹もリーフもだ。
「あの、本当にご迷惑をおかけしました」
「いいのよ、ルナちゃん。でも、今日は鍛治師ギルドにはアーサー君行ってね。ルナちゃん病み上がりなんだから」
「はい、リツ様」
「アルフさんにも伝えて」
「はい、リツ様」
アーサーはさっとお弁当を抱えて出ていく。
大丈夫なのに。
「さて、ルナちゃん」
「はい」
「お風呂入る?」
あ、最後に入ったの、いつだっけ?
お風呂ってこんなに体力いったっけ?
とりあえずシャワーだけにしたけど、疲れた。
いかん、本当に体力がないんだ。
まず、体力回復と戦闘のカンを取り戻さなくては。
いざ、素振り。
ものすごい勢いで、マリ先輩が来た。
「ルナちゃん。何をしてるのかな?」
「はあ、素振りを」
「何を抜かしているのかしら? ダメに決まっているでしょ」
自室に連行されました。
「シャワー浴びて疲れたでしょ? おやつまで休憩よ。あ、筋トレしたらなしだからね」
「ぐっ」
すごい笑顔のマリ先輩に負けて、結局昼寝した。シャワーくらいで疲れたけど、久しぶりに心地よく眠った。
おやつの時間に起きると、アンナやクララ、ルドルフがこっちを見ていた。しゃがんで手招きする。
「ルナお姉ちゃん、小さくなったの?」
クララが聞いてくる。痩せたことかな?
「少しね。でももう大丈夫」
「本当?」
アンナも聞いてくる。
「うん、大丈夫よ」
ルドルフは首を傾げている。
「ルナちゃ、ルナちゃ」
かわいい。
私は皆をポンポンして台所に。
「あ、ルナちゃん、大丈夫? おやつ食べれる?」
「はい、多少なら」
リツさんがおやつを出してくれる。
「ミルクジェラートとラズベリーのジャムよ」
はい、いただきます、きりっ
時間をかけて食べたけど、美味しかった。
きっと、アーサーの畑で採れたラズベリーだね。うん、ちょっと酸っぱいけど、甘いミルクジェラートと合ってて美味しい。
リツさんがとにかく嬉しそうに見ている。
「ご馳走様でした」
「いいのよルナちゃん。ところでその木刀は何なのかしら?」
「はい、素振りを」
「何を抜かしているのかしら?」
木刀、取り上げられました。
まずは散歩よ、と。リツ邸の庭を帽子被ってうろうろ。しっかりついてきてますローズさん。
「あの、大丈夫ですが」
「なりません。影で筋トレしそうですから」
「ぐっ」
読まれてる。
「ルナ、もう起きて平気か?」
アルフさんが早めに帰って来た。
「はい、ご迷惑おかけしました」
「迷惑とは思っとらん。顔色が少しいいな」
アルフさんが私の顔に、手を当てようとしたが、私は一歩下がる。
「本当にご迷惑をおかけしました」
「ルナ? どうした?」
「ご迷惑をおかけしました。もう、大丈夫です」
私はまともにアルフさんの顔が見れない。あの夢のせいだけど、いずれくる未来だ、今からちゃんとしないとね。アルフさんの優しさに甘えちゃいけない。いい加減、子供卒業しないと。まず、頭以外の接触は避ける。それからだ。
さみしいけど。
「ご迷惑をおかけしました」
もう一度言って私は、台所に向かった。
夕食はシチューだったが、半分も食べられなかった。ごめんなさい。
それから、やはり戦闘訓練に直ぐに参加を許されず、歩いたり、ストレッチしたり、アーサーの畑の収穫手伝ったりして過ごした。
食欲も少しずつ改善。
やっと、鍛治師ギルドにお弁当配達許可降りるまで、1週間かかった。
アーサーとショウがついてきた。
一人で大丈夫なのに。
すごく久しぶりの鍛治師ギルド。受付の女性が私を見てびっくり。まあ、ちょっと痩せたからね。
おじいちゃんドワーフダビデさんも出てきた。お久しぶりです。
「お嬢さん、体調はもういいのかい?」
「はい」
「そうかそうか、それは良かった。安定期じゃな。で、いつが予定日じゃ?」
はい?
「え? なんの?」
「ほっほっほっ」
いや、ほっほっほっじゃなくて。
「まあ、順番がおかしいが、まあ、よかろう。ところでお嬢さんのご両親とも挨拶せんとな、儂はアルフの保証人だからのう」
ほっほっほっ。
「あ、挨拶? なんで?」
私は訳がわからず、アーサーを見るが、アーサーも分からないと首を振る。
「あの、なんのことでしょうか?」
「とぼけんでもよいよい。お嬢さんの体調不良、果実の汁しか受け付けん、食べ物は吐く、それは『つわり』じゃろう?」
はいぃぃぃぃぃぃぃぃ?
私は眼を剥く。
「だだだだだ誰が、誰のつわりだと?」
「ほっほっほっ、お嬢さんが、アルフの子を身籠ったから、つわりを起こしたんじゃろう?」
ドワーフとして順番がおかしいが、まあ、あやつも我慢したしなあ。やはり仮住まいではなく、西通の物件かのう。
ダビデさんの声が遠くなった。
読んでいただきありがとうございます




