一旦休息③
レイピア
ゴブリンは7体。
「儂らは援護だ」
「「「はいっ」」」
サーシャの矢が先頭のゴブリンに肩に突き刺さる。アーサーとマリ先輩のストーンバレットが飛び、リツさんのウォーターバレットも飛ぶ。アーシャのウォーターアローも飛ぶ。
「メエメエ~」
ノゾミのファイヤーボールも飛ぶ。
「リーフ。前にッ」
「了解ッ」
私が貸し出した初代を構えてリーフが前に出る。
「はッ」
負傷し鈍ったゴブリンを、リーフが斬りつける。
瞬く間に終了。
「これって接待?」
リーフが疑問の顔だが。
「気にしない気にしない」
私達はゴブリンの耳を切り落とす。
それから魔の森を順調に歩き回る。
時折薬草も採取。
夕方、冒険者ギルドにブラッディグリズリーやゴブリンの耳等を提出。
「グリズリーの肉は少し回してください」
必死にオルファスさんが訴える。
「では、2割回します」
「後、もうちょっとッ」
「えー」
リツさん、お腹すいたから早く。
結局3割。後は魔石だ。
明日引き取りになる。
「ふふ、明日はステーキね」
「お手伝いします」
キリッ。
無事にローズさんのランクがDになる。
屋敷に戻り、リツさんのアイテムボックスから、魚のフライが出てきて並ぶ。タルタルソース付きだ。
「明日はお肉だからね」
はーい。
「いただきます」
夜、アルフさんがリーフと工房に籠る。リーフの剣を作ることに。
サイズを確認している。
私はお茶を運ぶ。
「サイズはどうする?」
「今日借りた、ルナっちの剣より細身がいいかな」
ルナっちって何? アルフさんもひきつる。
「そうか、レイピアみたいな感じか」
こくこく頷くリーフ。
「付与はどうする?」
「火と風がいいけど……」
リーフは遠慮がち。
「構わんさ、さて、軽さ重視で造るか」
私もちょっと見学。
魔道炉に火を入れて、魔鉄と軸にミスリルでレイピアの刀身が出来上がる。ダンジョンで得た魔石で付与が付く。中の火・風の補助、小の重量軽減が付く。
「今日はここまでだな。自動修復はマリかリツに頼むしかないな」
「え、もう出来たの?」
「さて柄は、マナ・グラントレントだな」
てきぱき柄を作るアルフさん。
「なんで、アルフが鍛治師ギルドに連行されていた意味分かった」
リーフが納得している。
「鞘には皮がリツのアイテムボックスのどれかにするか。鞘の付与は自分でしろよ」
「分かった」
リーフは嬉しそうに何度も頷いていた。
「えへへ、僕の剣だあ」
本当に嬉しそうなリーフ。
そんなリーフは私達の中で最年長なのに、やたら可愛くみえた。
更に数日後、残念金髪美形から連絡が入る。アルフさんの仕事も落ち着いた。
リーフの歓迎会も済み。半泣きだった。
リーフのレイピア、マントが完成。
アーシャの槍も完成した。
二人とも嬉しそうだ。
ひたすら訓練を繰り返している。アルフさんが忙しいので槍はアーサー、剣は私だ。
「あ、はい。はい。分かりました」
「ナリミヤ様。何だって?」
「うん、転移門も設置したし、おいでって」
行くことになりました。
迎えに来てくれることになり、せっせとお料理です。
業務オーブンフル稼働。
コンロもフル稼働だ。
「うん、いい感じ」
私はブラッディグリズリーのワイン煮込みの味見。
「おお、いい匂いだ」
肩越しにアルフさんが覗き込む。
近いって。
「どうぞ、アルフさん」
「うん、旨い」
良かった。味見を出すと、肩をちょんちょんされる。
「ぴぃっ」
「はいはい、ショウもね」
小皿のお肉をつつくショウ。
あら、ショウ、また大きくなってる。
次々に出来上がる料理達。
バットに移される料理達。
燻製器はホリィ一家が見ている。
出来る限りの準備をして、ナリミヤ氏がやって来た。
ちょっと隈出来てる。
「さ、どうぞみなさん」
嫌がるショウを乗せる。
新しく見つかったダンジョンはあのオークの巣から、ミュート方向に南西にあり。ミュートから魔法馬で1日進み、魔の森をまっすぐ北上する。その魔の森を切り開いているらしい。
え、一人で?
「ううん、松美達に手伝ってもらってるよ」
へえ。
半日で現場に到着。
魔の森の中を進み、いきなり道ができている。
「あ、あそこがダンジョンだよ」
はい?
ダンジョンの入口を中心に半径一キロ位に丸く切り開かれて、それを囲うように水堀が囲む。堀の幅は10メートル位だ。
みんなでぽかん。
え、ここ、魔の森の中よ、木とかどうしたの? 地面、きれいに整地されてるし。小さな小屋がある。
「あそこの地下に転移門を設置したんだ」
へえ。
なんでも、毎日夕方帰り、娘達に夕食を食べさせて、お風呂にいれて、寝かしつをするため、毎日マリベールに帰っていると。
「ナリミヤ先輩、どうやって整地したんですか?」
リツさんが聞く。
「魔法だよ、土魔法。地面に干渉して木の根を吐き出させるんだ。運搬には土木用のガーディアンと松美達にやってもらっているんだ」
あ、アーサーが孤児院の畑でやったかなり上位の魔法だね。
確かにあちこちガードマン・ガーディアンと同型のガーディアンが木材を運んでいる。あ、いたグレイキルスパイダーが。手、いや、足を振ってる。小型の蜘蛛も作業している。
「ナリミヤ先輩、私達もお手伝いしましょうか?」
「うーん、大丈夫だけど、そうだね」
ナリミヤ氏とリツさんが相談。
一日10万も頂けることに。
まず土魔法スキルの高いアルフさんは、ナリミヤ氏と整地に回り。錬金術チームとアーサーは道に敷き詰めるブロックを作成。ドラザールで得た鉱石のカスを使って作成すると。捨てるに捨てられなかった物だ、リツさんは喜んで放出。残りは雑用だ。石を広い、残っている根を掘り出す。これが腰に来るんだよ。ショウはマリ先輩の言う通りに鉱石を細かく砕き、ノゾミはお昼寝。ここは魔の森の中だ、蜘蛛達が常に警戒しているから作業に専念できた。
そんなこんなで1週間。
もうすぐリツさんの誕生日だ。
「ありがとうございます。かなり作業が進みました」
ナリミヤ氏の後ろには何軒かの小屋、いや建物が立っている。警戒するために兵の宿舎らしい。見せてもらったが、大きいのは三階建て。一階は食堂に広い洗面所に、シャワーブースがいくつも並ぶ。各階に水洗トイレも設置されている。二階は指揮官の部屋、個室が並び、三階は二人部屋が並ぶ。すぐとなりにも同じサイズの三階建て。こちらには各階に洗面所と水洗トイレのみ、後は二人部屋と四人部屋。大きな倉庫もあり。後の建物でギルドを派出所にするらしい。そのギルド運営の宿も出来ている。一軒家タイプの宿もあり。
回りは深い水堀、そして高く分厚い壁に囲まれ、更にナリミヤ氏は壁に結界の道具を埋め込んだ。
これ、ほぼ、錬金術です。
万能だね、錬金術。
気合い入れて発動して、出来上がった瞬間。私は明後日の方を向いた。
ただ、ナリミヤ氏は始終楽しそうだ。こういった作業の方が、好きらしい。
私達は切り出された木材で出来上がる家具を運び、魔道具の設置を行った。大量にできたブロックは、小型の蜘蛛達によって運び出される新しい道に敷き詰められる。
私達はここで一旦帰ることになる。
途中まで、ナリミヤ氏が見送ってくれる。
「あとは道と何軒かだからだけだから、2週間かな? とにかくおわったら連絡するからね」
「分かりました」
あと2週間でできるのね。ふーん。
リツさんがナリミヤ氏からお金を受け取り、ショウが牽く馬車に乗り込み、魔の森から抜けてミュートに向かった。
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