初ダンジョン⑤
コーヒー
「闇よ、悪戯な意志から守れ。ダークガード」
アーサーが闇の支援魔法発動。
闇の支援魔法は不安や混乱、恐慌から守る。
「大地よ、すべての力から、その身を守れ。アースプロテクト」
今度は土の支援魔法だ。物理防衛力を上げる。
次の日、ナリミヤ氏と分かれ調査に出た。
別れ際、ナリミヤ氏は2つの筒を渡した。
「これは非常時に使ってね。こっちはコーヒーかカカオを発見したら使ってね。松美と梅代がいるから大丈夫だろうけど、気を付けるんだよ」
「はい、ありがとうございます」
ナリミヤ氏はスレイプニルに跨がって颯爽と去っていった。竹子はちょっと心配そうに振り返っていた。
「サーシャ、大丈夫か?」
「はい」
気合いを入れてサーシャが頷く。サーシャの後ろにはアーサーがつく。適宜闇魔法で周囲をチェックだ。
16階は森林タイプだ。
慎重に周りを伺いながら進む。
リツさんとマリ先輩、ローズさんが簡単な地図を作成。出てくるのは蛇系の魔物だ。松美と梅代は援護に徹してくれて、問題なく倒していく。皮と肉が出る。せっせと回収。
「肉は唐揚げにでもしましょうか」
はい、全部拾います。
「皮は使いますか?」
マリ先輩がアルフさんに聞く。
「いや、必要ないだろう。今の装備を考えたらちょっと役不足だな」
買い取りに出されることに。
途中で宝箱発見。サーシャかチェックして開ける。石だ。何故か石。
「それは原石だな。オパールとエメラルドだな。研磨せんとどれくらいかわからんな」
アルフさんが見て、確認。買い取りに出される。
結局、蛇系とたまに猿系とボア系が出てきたが、目的の魔物は出てこなかった。
最後にもう1つ宝箱あり。中身は豆がぎっしり詰まっている。
「まあ、カシューナッツにピスタチオ、マカダミアナッツじゃない」
「ピーナッツとアーモンドもあるわ」
リツさんとマリ先輩が嬉しそう。ちょっと別々の袋に入っている。
お菓子の材料にもなるし、料理にも使えると。
さ、まだ、宝箱ないかな? キリッ
夕方、ナリミヤ氏と合流。がっかりしていた。
17階への階段はナリミヤ氏が発見してある。
次の日、階段まで移動し、降りる。
再び森林タイプだ。
ちょっと、16階より広く、2日くまなく探すが見つからない。鹿系と大型ウサギ系が出てきた。角ウサギ、はい、すべて狩ります。生姜焼のためだ。
再び宝箱。
何故か大量にドライフルーツが詰まっていた。全部回収です。もうひとつあり、ナイフだったが、今の装備品から比べると見劣りするため、買い取りに出すことに。
「もう一周します?」
キリッ。
18階へはボス部屋を通る必要あり。
「「キターッ」」
叫ぶナリミヤ氏とマリ先輩。
いましたよドリアノールが。木の魔物、女の姿だが禍々しい。葉っぱの髪には、赤い粒が張り付いている。あれが、コーヒーか。
「殲滅ッ」
叫ぶナリミヤ氏。
「イエッサーッ」
答えるマリ先輩。はい、ダメですよ。
リツさんとローズさんが杖を振り回そうとするマリ先輩を押さえ込む。
もう、ナリミヤ氏パーティーの蹂躙劇だ。
私達はドロップされた赤い実を必死に拾い集めた。
「コーヒーッ」
「カフェオレッ」
叫ぶナリミヤ氏とマリ先輩。
「サイトウ君ッ、僕焙煎の道具作って来たんだッ」
ナリミヤ氏は自身のアイテムボックスから、大きなたらいのようなものが付いた、魔道具を取り出す。
「いきなりそんな大量にはしませんよ。私は知識はあっても、焙煎の経験ないんですから」
リツさんがバッサリ。リツさんは小さなフライパンを出す。
コーヒーは乾燥、分離し、リツさんが焙煎に入る。時間がかかるので、ナリミヤ氏はもう一度ボス部屋に行ってる。どんだけ欲しいのよコーヒー。私達も同行。コーヒー拾います。
あ、香りがする。なんか香ばしい感じ。
「コーヒーッ」
「カフェオレッ」
叫ぶ二人。
「はいはい」
リツさんはガリガリと焙煎したコーヒーをひいて、ナリミヤ氏のフィルターの紙にひいたコーヒーを入れる。
わくわく、わくわく、わくわく。
ナリミヤ氏、マリ先輩が並んでリツさんの前に並ぶ。
皆興味津々だ。
リツさんがそっとお湯を注ぐ。
「あ、薄い」
「「十分ですッ」」
グビッ
熱くない?
「ああ、コーヒーだあぁぁぁぁ」
「久しぶりのコーヒー………」
だくだくと涙を流す二人。
「薄いわ、焙煎時間を長くしなきゃ」
味見をするリツさん。
コーヒーは二人分。ちょっと味見したが、苦い。これ、そんなに好きなの? よくわからない。
そうして数日、ボス部屋前で過ごす。
うーん。
「飽きた」
ミーシャが訴える。しっ、とアーシャがたしなめる。
分かるよミーシャ。
ひたすらコーヒー拾い。確かにここのダンジョンの潜れたのはナリミヤ氏のおかげだし、コーヒーとカカオのためだけどさ。大量のコーヒー豆。一体何年分よ。リツさんが試行錯誤して焙煎している。
私には苦い。三兄妹も似た感じだ。ただ、アルフさんとアーサーはいいらしい。ローズさんはまだよく分からないと。
マリ先輩がミルクと砂糖を入れてくれたら、甘くてほろ苦くて美味しいけど。
ボス部屋で今日もナリミヤ氏が張り切っています。グレイキルスパイダーの三姉妹は更に下層に入り、調査している。次のカカオのためだ。
「ふんふんふーん」
上機嫌のナリミヤ氏。
「ふんふんふーん」
かわいいマリ先輩。
二人して、コーヒー豆を見ている。
ボス部屋での戦闘終了して、休憩。
アルフさんが、サーシャとアーシャの新しい武器の構想を練ってる。サーシャのレベルが上がり、今のナイフが合わなくなって来ていた。
「ナイフじゃあ、大型を仕留めるにはきついからなあ」
光魔法のレベルが上がれば、破壊力が増すが、そう簡単には上がらないレベルに差し掛かっているようだ。
サーシャの意見を聞きながら、片刃のショートソードとなる。作るのは帰ってからだ。
アーシャは時間があれば弓を引いている。ミーシャは魔力感知のアップとナイフだ。
私が相手をしている。
「なんであんなに強いの」
「あれはな、違う生き物なんだよ」
だから、失礼だな。
たまに息抜きで、17階を回る。すでに周囲は把握しているし、かなりレベルアップしただろう私達は、グレイキルスパイダーの保護なくなんとか戦闘をこなす。再びドライフルーツの宝箱発見した。はい、頂きます。ダンジョンの宝箱は開けるとしばらくして復活した。ただ、同じものがでるとは限らないし、復活までかかる時間がまちまち。だが、ドライフルーツは1日で復活。なんどか回収した。そして最後にナイフを回収した宝箱には、魔鉄のインゴットが3本入っていた。16階にも行き、豆の宝箱も何度か回収した。
そんなこんなで更に一週間。
こんなに豆、いるの?
大量に並んだ豆。
「あ、お帰り」
グレイキルスパイダー三姉妹が戻っくる。
いくつもの袋に包んだものをナリミヤ氏に渡している。
「ああ、カカオは見つからなかったかあ」
残念とナリミヤ氏。
何でも22階までくまなく調査済んだが、カカオは見つからず。袋の中は皮や骨、角、甲羅に魔石。宝石や宝飾品は別の袋に入れてある。
「いるかい?」
ナリミヤ氏が袋から取り出す。リツさんと何かの角だけもらっている。宝飾品はサファイアのイヤリング、指輪。大粒のアメジストのペンダントにブレスレット、髪止め。オニキスとダイヤモンドのイヤリングにブレスレット、トパーズの指輪と髪止め。さすがに下層付近は出る宝箱の内容がグレード高い。うわ、高そう。あとはいくつかの武器、宝石とインゴットは銀、魔鉄とミスリルだ。そしてみすぼらしい袋。マジックバックと。許容量は私のナリミヤ印のマジックバックの半分で、時間遅効(半分)と。まあ、必要ないかな。マジックバックは私達2つあるし、リツさんとローズさんにアイテムボックスあるしね。買い取りに出されることに。
ナリミヤ氏は買い取りに出して、寄付に回すと。
「22階のボス部屋までは確認済み。あるなら更に下層だね。でも、そろそろ時間切れだね」
ナリミヤ氏が残念そうだ。一旦ダンジョンを出ることになる。予定は20日だからね。
次の日、15階のセーフティゾーンまで移動し、ワープストーンを使用しダンジョンを出た。
ナリミヤ氏はスレイプニルに馬車を繋ぎ、まっすぐ転移門へ。夢のような花畑で、蜘蛛達がせっせと働いている。
「まあ、ありがとう」
マリ先輩が何かもらっている。お花だ。
ナリミヤ氏は手紙だ。多分、オルティナという女性のことだろうな。だが、手紙を見て難しい顔をしている。
「皆さん、すみません。マリベールで数日待って頂けます?」
「どうされましたナリミヤ先輩」
「ちょっと、リーフ君がまずい状況で。僕行かないと。義理だけど、僕にとっては大切な弟だし」
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