初ダンジョン①
魔性再び?
短いです。
初のダンジョン。エルフの国オーディスのダンジョン、フィーラ・クライエ。
入れるレベルはパーティーならCランク。ソロは不可。
「ただ、今回、サイトウ君に補助パーティーとして同行してもらう形になります」
朝、ナリミヤ氏が説明してくれる。
後ろで、スレイプニルとグレイキルスパイダーいなければ、爽やかな朝なんだなけどなあ。
「で、事前情報を手に入れてあります」
フィーラ・クライエは階層は29。そしてダンジョン改装期間は約50年。ダンジョン改装とは、ダンジョンが新しく生まれ変わることだが、大幅な変化はないが、10年ほどかけて、ダンジョン内が構造が新しくなる。広くなったり、狭くなったり、新しく罠が出来たり、階段の位置が変わったり。出現する魔物も微妙に配置が変わるし、新しく出現したり、いなくなったり。
25年ほど前に改装は終わっていると。
え、コーヒーとカカオ大丈夫なの?
「実は10日前から松美達の子供が先行して潜っているんだ」
え、いいの?
「一応、15階までは調査は終わっているんだ。まだ、コーヒーとカカオも発見してないけど、おそらくあるとしたら20階前後だね。ここまでいいかな?」
「はい」
リツさんが返事。マリ先輩はワクワク。
「では、15階までは基本的には戦闘は避けて突っ走るよ。ここのダンジョンはスウちゃんが馬車で抜けるしね。捜索はそこからだけど大丈夫?」
「あの、ナリミヤ先輩、少しお願いが」
「なんだいサイトウ君」
「私達、いつか自力でダンジョンアタックしたいんです。それでその、私達にも戦闘参加をしてはダメでしょうか? もちろんお邪魔でしたらしません」
「なんだ、大丈夫だよ。突っ走ってもボス部屋は避けられないからね」
「ありがとうございます」
「じゃあ、斥候は誰?」
「あ、サーシャ君です」
呼ばれて、サーシャは少し驚いた顔。
「うちの斥候は竹子がしてるから付けるね」
後ろのグレイキルスパイダーの一匹が、脚の一本をふらふらする。
すすす、と、サーシャはアルフさんに涙目で訴える。
「生きたまま食われそうで怖い」
分かるよサーシャ。
「あー、大丈夫、じゃないかあ?」
明後日の方を見るアルフさん、必死に袖を引くサーシャ。
「タンクはアルフさん、アタッカーはルナちゃん、バランサーはアーサー君です」
「バランサーがいるの? ちょうどいいね、うちのバランサーは松美だから」
アーサーで顔面から、一気に色がなくなる。
すすす、とアルフさんに涙目で訴える。
「生きたまま食べられそうで怖い」
分かるよアーサー。
「あー、大丈夫、じゃないかあ?」
必死に袖を引くアーサー。
「梅代は後衛の皆さんの護衛に付くから」
今度はローズさんとアーシャの顔色が悪くなる。
「大丈夫よ、みんな、そんなに怖がらなくても」
マリ先輩がいうが、聞いてない。
「恐ろしゅうございます」
「あれ、怖い、食べられそうで怖い」
すすす、ローズさんとアーシャが私に訴える。
すまん、私じゃ手も足も出ないよ。
「あー、大丈夫、じゃない?」
私は明後日の方を見る。
アルフさんには、サーシャとアーサー。私にはローズさんとアーシャがしがみつく。
夜営の片付けをして、いざ、出発。
グレイキルスパイダーが町に入ったら大騒ぎだよね? 大丈夫なの? なんて思っていたけど、ナリミヤ氏の魔法でどうにかなる。時空間魔法の『ゲージ』という魔法があり、グレイキルスパイダー達は大人しく入っていった。
…………え、生体入っていけるの? あ、スキルレベル80越してたな、この人。うん、騒ぎにならないならいいか。
スレイプニルの馬車は、ダンジョンの町フィーラに向かって進んだ。
フィーラの町では、騒ぎにならなかったが、ざわざわされた。そうだよね。うん。でも、なんか、あまり好意的な視線ではない。
まさかと思うが、赤髪エルフ関連じゃないよね。
まあ、スルーだね。
ダンジョン前の冒険者ギルドで、ナリミヤ氏とリツさんが手続きする。
すぐに終了。
伊達に大陸最高のSSランク冒険者だ。
冒険者ギルドの奥に進むと、大岩の下、ぱっくりと開いた入口が。
「ダンジョンッ」
「はいはい。マリ様、お座りください」
興奮するマリ先輩。諌めるローズさん。
「皆さん、一旦下車してください」
ナリミヤ氏の声に、リツさんを先頭に下車。
で、入口のエルフの警備兵に冒険者ギルドカードを提出する。
「はあ、SSランクに、Eランクの補助パーティーですか。まあ、Bランクの彼とDランクの彼女は分かりますがねえ」
渋りながら、スレイプニルとグリフォンに、びびる警備兵。まだいますよ、グレイキルスパイダー。あ、ダンジョンから蜘蛛がわらわら出てきた。誰も気づかないよ。
いいのかな?
アルフさんの方を見ると、あ、何も見なかったことにするのね。はい、そうします。
「でも、その未成年とカラーシープは………」
「私、大丈夫だもん」
「メエメエ~」
必死に訴えるミーシャとノゾミ。ちょっと渋っていた警備兵だったが、ジーッとノゾミが見上げると、何故かのけ反る。
「気を、気をつけて行きたまえっ。これ、ポーションだよっ、あと煙玉だよっ」
なんか、もらってる。
「ありがとうおじちゃん」
「メエメエ~」
ミーシャがお礼を言って、ノゾミは足元にすりすり。なんか、せっかくの美形が、あわわわ、言いながらノゾミを撫でてる。
うん、魔性だ。
ナリミヤ氏はノゾミに注意が行っている間に、ゲージからグレイキルスパイダーを出して先にダンジョンに入れる。で、出てきた蜘蛛に何か渡している。いいのか、本当に?
「じゃあ、皆さん、入りましょう」
涼しい顔で、ナリミヤ氏が促す。
はいはい。
ナリミヤ氏を先頭に、フィーラ・クライエに入った。
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