出発準備②
獣魔
炊き出しも無事に終了する。
リツさんが、ホリィさんにいろいろ渡している。
食料管理のマリ先輩が、料理のリストをチェックしている。
「おにぎりが、1000個、サンドイッチがハムサンドが500、卵サンドが200、野菜サンドが200。コッペパンサンドがハムが300、卵が300、メンチカツが100、ポテトサラダが100、ベーコンが100と。スープが、お味噌汁が」
ちょっと、ずいぶん作ったね。
まあ、20日分。合計9人と2匹分だしね。
一度、工房でアルフさんが、バットに囲まれて寝てたよ。
一旦、マリベールに移動するらしい。あの爆走馬車で迎えに来てくれると。
しばらく、トウラを離れることは、冒険者ギルドに連絡すみ。アルフさんも、鍛治師ギルドに連絡すみ。バルハさんが、「いつ帰って来るッ」って迫っていたけどね。
そんなこんなで出発日。
「リツ様、早く帰って来て」
アンナとクララが、リツさんにすがりつく。
「20日位で帰って来るから、お母さんの言うこと良く聞いてね」
初めて長期に家を空ける。ちびっこは不安そうだ。
「リツ様、どうぞ、お気をつけてください」
ホリィさんはルドルフを抱えてお見送りしてくれる。
装備を確認。うん、大丈夫。
準備期間が短く、ほとんど料理に費やしたため、新しい装備品はできず。アーサーのおばあさんの指輪を下げるためのチェーンのみ。アーサーはコツコツ、コツコツ作っていた。出来れば、サーシャに新しいナイフ、アーシャの弓や槍の製作したかったらしいが、時間がなかった。
トウラの門を抜けると、いましたよ、輝くような笑顔の残念金髪美形が。
「皆さーん、こちらでーす」
はい、いましたよ、スレイプニルが。
嫌がるショウを乗せる。
「今回はありがとうございます。私達もダンジョンに入れます」
「いいんだよ、こちら方こそありがとう。コーヒーの件では君に悲しい思いをさせたね」
「いいえ」
大富豪が、奴隷に頭下げてるよ。
慌てるアーサー。
とりあえず、馬車に全員乗車。
爆走馬車がマリベールに向けて出発した。
「転移門?」
「そう、うちの地下に作ったんだ」
ふーん。
お昼の一休憩の時に、ナリミヤ氏がオーディスまでの行程を教えてくれる。
「大陸のあちこちに転移門設置したんだ。移動が面倒だしね。オーディスにもあるんだ」
ふーん。
ふーん。
ふーん。
あれ?
「個人で転移門なんて持てるものなんですか?」
アーサーが聞いてくるが、私は首を振る。
転移門って、古代の遺産で、国や転移門がある領が管理している。個人で管理? 無理無理。でも、あの残念金髪美形のことだ。
「作ったって言ってたから、作ったんでしょう。受け入れましょう、ね」
業務用オーブンを一瞬で作ったしね。転移門くらい作れるでしょうよ。錬金術だろうけど、どうやったか、分からないけど。アルフさんは聞こえないふりしている。
うん、考えない、私は脳筋。サンドイッチ美味しい。モグモグ。
「オーディスの端に知り合いから土地を借りてね。そこに転移門を作ったんだ。フィーラ・クライエまでは、ちょっと距離があるけど、スウちゃんならすぐだし」
でしょうね。モグモグ。あ、卵サンドですか、いただきます。はい、食べます。
「ワープだと、獣魔は体調悪くなるし、ドワーフも体質的に厳しいからね」
あ、ショウとノゾミと、アルフさんのためね。悪い人じゃないね。
「僕も獣魔スウちゃんだけじゃないしね。戦闘面を任せる為に連れていこうと思って」
スレイプニルだけじゃないのね。
なんだろう? 変な予感。あ、ハムサンドですか? ハーブ入り? はい、いただきます。
「スウちゃん以外にも、いるんですね」
「うん、マリベールで紹介するよ」
普通の魔物じゃないだろうね。
もう、スレイプニルだけで、お腹一杯ですよ。
あ、アーモンドのフロランタン? あ、いただきます。はい、いただきます。
夕方、マリベールに到着。ナリミヤ氏がまた宿を取ってくれていました。
「じゃあ、明日ね」
「ありがとうございます、ナリミヤ先輩、何から何まで」
「いいんだよ、コーヒーの処理は僕じゃ時間かかるからね」
「任せてください」
「じゃあ。明日、待ってるからね」
ナリミヤ氏がにこやかに帰って行った。
明日、あの豪邸に行くことに。リツさんにとっては、いい思い出はないはずだけど。
「気にしないわ」
ですと。リツさんがいいなら、いいけど。
夕食をいただき、早めに就寝。
で、全員で行きました、ナリミヤ氏の豪邸に。
相変わらず、すごいなあ。
初めて見たアルフさん、アーサー、三兄妹はぽかんとしている。
ガードマン・ガーディアンが重厚な扉を開けてくれた。
リツさんを先頭に入る。
相変わらずすごい庭園。噴水、キラキラしてる。
ミーシャが、ちょっと興奮してる。はいはい、かわいいなあ。
豪邸からナリミヤ氏が出てきた。本日はマントを装着してる。
「さあ、どうぞ」
豪邸に入る直前に、庭園で走り回る小さな女の子が二人。ああ、ナリミヤ氏の娘さんね。ベビーシッターに見守られて、走り回る小さな女の子。1人は真っ赤な髪、あの赤髪エルフの娘ね。
私は見なかったことにした。
あの子は関係ないけど、赤髪エルフを思い出す。
今頃、ダラバでどうしてるだろう。
まあ、関係ない。本当に関係ない。
ナリミヤ氏の豪邸の中は、やはり豪邸。
ピカピカだよ、ピカピカ。まぶしいなあ。
「さ、こちらに転移門です」
ピカピカ。まぶしい。
目をしぱしぱ、しぱしぱ。
みんな、しぱしぱ。
リツさんとマリ先輩とローズさんは、普通だ。リツさんは一年いたし、マリ先輩とローズさんは、まあ、慣れているんだろうね。さすが、ライドエル有数の財閥の伯爵令嬢とそのメイドさん。貧乏男爵出身の私は、落ち着かない。
ナリミヤ氏に誘導されて、地下に。
トウラのリツさん邸の三倍ありそうな地下室。
いましたよ、スレイプニルが、うん、で、天井になんかいる。
「あ。紹介するね。スレイプニルのスウちゃん。で、グレイキルスパイダーの三姉妹。長女の松美、次女の竹子、三女の梅代」
気絶して、いい?
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