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スキル①

いろいろスキル。

 一年に十ヶ月。それぞれに守護天使がいる。つまり十の守護天使がいる。

 一の月、新年を告げ咆哮を上げる、虎の姿のリオン。

 二の月、冬を耐え乗り越える、少年の姿のバートル。

 三の月、命を根を伸ばす、木の姿のアルベロ。

 四の月、春が腰掛ける、兎の姿のハーゼ。

 五の月、新緑を巡らせる、女性の姿のリリィ。

 六の月、風を運ぶ、馬の姿のカヴァーロ。

 七の月、作物に水と光を与える、イルカの姿のデルフィン。

 八の月、豊穣の祈りを知らせる、狼の姿のヴォルフ。

 九の月、実りの感謝の祝詞を上げる、鷹の姿のファルコ。

 十の月、冬の支度を整える、猪の姿のハバリー。

 勢揃いしてますよ。守護天使が、全員が。

 うーん、目眩がしそう。あ、マリ先輩、かわいいからって抱っこしたらダメですよ、それ兎の姿でも守護天使だから。

 わらわら出てきた守護天使にリツさんは、完全に戸惑っている。

「スキル?」

「そうスキルよ。何がいいかしら」

「ちょっと待ってください」

 リツさんはこちらに振り返ると、聞いてくる。

「あの、スキルって、何ですか? 魔法とか使えるようになるんですか?」

「ああ、そうですね」

 リツさんが聞いてくるが、マリ先輩が狼のヴォルフにすりすりするのを、あわあわしながら見ている私は生返事。

「サイトウ君、スキルはいろいろあるけど、先天性スキルを希望した方がいいよ。あとは鑑定とかアイテムボックスとかは便利だよ」

 ナリミヤ氏がスキルの説明をしてくれている。

 だから、マリ先輩、背中撫でてる虎も、それ守護天使だから。怖くないの? めっちゃデカイよ、その虎。

 リツさんはナリミヤ氏と相談中。私は馬を追いかけているマリ先輩を、わたわたと追いかる。

「サイトウ君はやはりポーションとかで生計を立てるなら、水魔法が必要かな。薬草とかを扱うなら風魔法も」

「なるほど」

「加熱には火魔法だね、あ、土魔法も鍛治とかに使えるよ。自分の好きなサイズのフライパンとか作れるよ」

 フライパンって何? 手作りするもの?

 ちょっと待ってマリ先輩、イルカの背中乗っちゃダメだって。

「光は傷を治すよ。闇は使いようだけどね。時空間魔法はワープとか使えたりするよ」

「ワープですか…」

 マリ先輩、その木から普通に果物もらっているけど、それね守護天使なんだって。

 ナリミヤ氏の説明にリツさんが考えている。

 いえ、果物、ほしい訳じゃなくてですね。あ、半分こですか、マリ先輩からニコニコして渡された半分の果実。はい、頂きます。あ、甘い。いいのかな、守護天使から果物もらったよ。

「氷は水、雷は風の魔法スキルを上げたら手に入る可能性あるからね」

 うーん、と悩みリツさん。

「あの、早くお願いします。マリ先輩止まらないから」

 悩んでいるところ申し訳が、リツさんを急かす。マリ先輩が腕に鷹を止めて、背中を撫でてる。だから守護天使なんだって。

「あ、はい。とりあえず鑑定、アイテムボックス、火水風土、光と闇、時空間魔法を希望します」

 全種類いったよこの人。今、この世界に全種類の魔法持っている人はいるのか? 魔力の豊富な魔族やエルフ族でもいないと思うけど。

「分かったわ。ちょっと待ってね。皆、決まったわよ」

 猪の背中によじ登ろうとしたマリ先輩を止めていた私はほっとする。猪はするりと移動。えー、みたいな顔しない。

 守護天使に囲まれ、さすがにリツさんの顔がひきつる。

 リリィ様が大丈夫と笑いかける。小さな光が、いくつも現れリツさんの体に吸い込まれていく。

「さあ、これでスキルはいいわ。最後に私から加護を」

 リリィ様が両手を広げると、リツさんの全身を光が包む。

「確認してみて」

「どうやって?」

「サイトウ君、ステータスって念じると分かるよ」

「あ、はい。ステータス、あ、本当にスキルが一杯ついてる」

 本当にスキルついたのね。

「良かったね、リツちゃん」

「はい、ありがとうございますマリさん」

 マリ先輩とリツさんが嬉しそうに話している。うん、かわいい二人が揃うと、お花が飛んで見えるのは気のせいか?

 あ、そういえば。

「あの、リリィ様」

 私はおずおずと手を上げる。

「何かしら?」

「ここは神界で、加護がないと入れないんですよね? 私には加護がないのですが」

「あら、気がついていないのかしら?」

 リリィ様が少し驚いている。いや、あの、まったく身に覚えがないのですよ。

「お前には俺の加護があるぞ。まあ、加護は気づかず人生を終えるのがほとんどだからな」

 進み出てきたのは、少年の姿のバートル。

「え、バートル様の?」

「そうだ、前の持ち主から、譲渡されたのだ」

「譲渡? 誰から?」

 一体誰が、何のために? 天使の加護を譲渡って、あり得ない。

「思い出せないか?」

 首を傾げるバートル様。

 必死に思いだそうとするが、ダメだ分からない。

「ヒントいるか?」

「お願いします」

 バートル様の言葉に私飛び付く。

「前世だよ、お前の前世で加護が譲渡されることが決まり、今のお前が生まれたことを機に、加護が移動したんだ」

 その言葉に私の頭に、前世で聞いた最後の声を思い出す。

『加護を与えたまえ、彼女に加護を与えたまえ、どうか、次の生で幸せを与えたまえ』

 ああ、そうだ、あの時。自分で首をかき切った私に駆けつけたのは、私に騎士の称号を賜る時に背中を押してくれた友人。

 そうか、彼が、バートル様の加護を持っていたのか。

 馬鹿だな、私なんかの為に、加護を放棄するなんて、馬鹿だな。そう思いながら、自然と目頭が熱くなる。

 なんて、馬鹿なことを。

 いつも腐れ縁のような関係で、10代の頃は何かと張り合いって。向こうはちゃんとした爵位があったから、あっという間に騎士になっていた。騎士として、とても優秀だったから。私がいつまでも騎士補佐だったから、置いていかれたというか、もう横で戦えないのが寂しかった。

 そうだ、騎士の称号を賜る時、言ってくれた言葉。

「また、一緒に戦えるな」

 思いだし、私はたまらず口元を押さえた。情けなく嗚咽が出そうだ。

 ああ、なんだろう。今頃思い出すなんて。本当に今頃だ。

 あの時、意識が無くなる瞬間に見た彼はとても苦しそうで、苦しそうで。私は彼の残り人生に、影を落としたのではないだろうか? 天使の加護まで譲渡して、何故、愚かなかつての同僚と、切り捨ててくれなかったのだろうか?

「思い出したか?」

 バートル様の言葉に私は頷く。

 胸の奥が、暖かい。

【火魔法 覚醒】

 頭の中で声が響く。

「え、何? 火魔法って?」

「確認してみろ、今なら加護も見れるはずだ」

 私は慌ててステータスを開ける。


 ルミナス・コードウェル レベル24

 人族 14歳 剣士

 スキル・剣術(26/100)・槍術(12/100)・短剣術(16/100)・弓術(14/100)・体術(15/100)・盾術(10/100)・風魔法(13/100)・火魔法(1/100)・魔力感知(29/100)・気配感知(18/100)・索敵(10/100)

 加護・天使バートルの加護

読んでいただきありがとうございます。

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