アーサーの里帰り①
マルコフさんの鎧の作製が始まる。
破損した鎧をベースに、小さな模型ができる。うん、アルフさんの全身鎧ほどではないが、なかなかシャープな感じでかっこいい。デザインはローズさんがメイン。同時並行し、大剣も作製も進む。これは先に出来上がる。魔鉄がメインでミスリルと、わずかにアダマンタイトを含ませた剣。真っ二つに折れた剣に比べたら、かなりグレードが上がっている。サイズは同じでこちらもシンプルなデザイン。柄にはマナ・グラントレントを使用、付与はブラックオークの魔石を使用したと。マルコフさんは無属性魔法を駆使するため、付与は中の無属性魔法補助、衝撃吸収、小の自動修復、重量軽減。鞘は以前のものを使用し、魔鉄を合成し強度を上げて、小の自動修復がつけられる。
剣と木製の仮鎧ができた時点で、マルコフさんがサイズチェックに屋敷に来た。
「アルフ、どうした、その目は」
「ああ、ちょっとな」
眼帯をしているアルフさんに心配するマルコフさん。
いずれ、分かることだと、眼帯を外して見せると驚いていた。
「運よく治ったがいいが、まだ、感覚が掴めんでな」
「そうか、まあ、治って良かったな。だが、俺も慣れんな。片目のお前に慣れているから」
リツさんに案内されて、工房で仮鎧のチェック。
「どうです? どこか痛いとかありません?」
マリ先輩が胴回りを、ローズさんは手足をチェック。
「問題ない。大丈夫だ。動きやすい」
軽い動作チェックしていたが、大丈夫のようだ。
「なら、本格的な作成に入るが、今日、剣が出来上がったんだ、確認してくれ」
「ああ」
アルフさんから布に包まれた新しい剣を受け取ると、その出来栄えに驚いている。
「すごいな、比べ物にならないな」
「どうだ? 前の剣とほぼ同じ重量でサイズだが」
「ああ、問題ない、素晴らしい。お前に頼んで正解だな」
マルコフさんは満足して、大事そうに剣を抱えて帰って行った。
それから、アルフさんが籠手をすね当てをまず作り上げ、付与は錬金術チームが担当。
その作業に間、私とアーサー、三兄妹、ショウは再びパワーレベリングだ。
オークの巣の掃討作戦で、サーシャのレベルがかなり上がったようで、動きがいい。アーシャのミーシャも置いて行かれないように必死だ。どちらかというと、アーシャは魔法職、ミーシャは戦闘職に向いているようだ。
戦闘はパターン化し始めた、まず、ショウが発見し、アーサーが闇魔法で敵の意欲をそぎ落とし、三兄妹が止めだ。サーシャにはアーサーがフォローに入り、アーシャとミーシャには私とショウがつく。
剣が出来上がった2週間後、やっとマルコフさんの鎧が出来上がる。
「リーダー、かっこいいよ」
なぜかついてきたバーンがはしゃいでいる。ちゃんと手土産でハーブの詰め合わせを持ってきてたけどね。無事に姪御さんもお嫁に行ったようで、アルフさんに丁寧にお礼を言ってた。オッドアイになったアルフさんには驚き、呟く。
「なんか、アルフ、どんどんかっこよくなるね。リツさんのパーティーって、顔の偏差値高いよね」
うん、そう思うよ。
かわいいリツさんにマリ先輩、美人のローズさん、美少女アーシャに、ミーシャもあと数年したら元気な美少女になるだろうしね。アーサーだって品のある顔立ちだし、アルフさんは穏やかで整った顔立ち。サーシャも切れ長の目できりっとして美形よ。女性陣はバランスのとれたスタイルだし、男性陣も顔が小さくて足長いしね。私がちんちくりんだよ。うん。うん。
バーンの呟きはアルフさんに笑って流される。
で、マルコフさんだ。
前の金属鎧と比べたら、シャープな感じはあるが、うん、似合っているしデザインがいい。魔鉄にミスリル、そこそこにアダマンタイト使用。こちらもブラックオークの魔石を使用。付与は中の無属性魔法補助、重量軽減、小の自動修復、衝撃吸収、魔法防御。うん、ヴェルサスさんの鎧より高価になった。まあ、作るために、アルフさんは魔力回復ポーションも何本も空けていたけど。
「本当に素晴らしい、アルフ、みなさん、感謝します」
特殊依頼はこうして無事終了した。
報酬は一括してリツさんが受け取ることになる。
次の水の日、魚の日の後に、アーサーの里帰りとなった。
魚の日を無事迎え、いざ、アーサーの故郷、メーデンの街へ。
明日には帰ってくる予定だ。
ショウに例の馬車を牽かせる。何度か練習もしているから問題なく出発。門番の人たちはあっけに取られていた。
メーデンの街は馬車で4~5時間位だが、ショウの牽く馬車は倍近いスピードで進む。馭者台にはマリ先輩とアルフさんが座る。ショウは賢いから手綱を操る必要はないが、体裁のためだ。
3時間で到着。
そこそこの大きさの街で、土壁と木製の壁、堀に囲まれている。
門番に全員冒険者カードを見せる。ショウには引いていたが、ノゾミは可愛く鳴いて、一発でオッケーだった。
アーサーとは顔見知りではなかったのか、なんとか入ることができた。入ったら入ったで、ショウにざわざわされたが、スルー。真っ直ぐ教会向かう。アーサーは馬車の中で固い表情だ。数ヵ月前まで、生活していた街だ、奴隷紋を見られて騒がれたくないらしい。チョーカーを巻くことも、考えたようだが、こんな手が通じるのは子供くらいだ。アーサーの家は、家計が苦しいのは皆分かっていたし、突然アーサーがいなくなれば、理解した筈だ。
溺愛していた長男のために、次男を売ったと。
まず、アーサーを育ててくれた、おばあさんのお墓参りのために、馬車を進める。
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