表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
190/386

マリベールへ⑤

チョップ

「ちょっと落ち着け、お前達」

 アルフさんが引く。さっと手を閉じる。次に手を開くと亀とフェレットはいない。どこに行ったの?

「一滴、一滴でいいんです」

 細いガラスの瓶を握り締めているリツさん。

「勘弁してくれ、小さいから、多分無理だぞ」

「ちょっとでいいんです、ちょっとで」

 マリ先輩もアルフさんに迫る。

「この際、鼻水でも構いませんよ」

「真面目に言うな」

 ローズさんまで言う。アルフさんが突っ込む。

「でも、どうして今まで思い出せなかったんですか?」

 リツさんが聞くと、アルフさんが、ちょっと迷うような顔になる。

「そうさな、仕方ない、話すか」

 アルフさんが隻眼になった経緯を説明。皆、呆然と聞いている。

「あの頃の記憶は曖昧でな、こいつらと契約したのは、その直前だった。さっき片目が戻った拍子に思い出した。それと、儂も加護持ちだ」

 アルフさんはステータスを開ける。

 固有スキルに精霊魔法、加護にハバリー様の名前が。

 あ。

 思い出した。

 確か神界で、言われた。ハバリー様に。

『儂の加護を持つものに、手を差しのべておくれ』

 いかん、完全に、綺麗さっぱり忘れてた。うん、黙っておこう。

 たまに巨大な猪が夢に出てきた、いつも、ハンバーグとかローストとか思っていたよ、どれくらい食べれるかなんて思っていたよ、すみませんハバリー様。逃げてましたねハバリー様。

「アルフさん、どんどん強くなりますね」

 アーサーは羨ましい顔だ。

「こいつらは、まだ、下位の精霊だ、大した力はない。儂の国には、もっと凄い精霊がおるぞ」

 再び、手のひらにフェレットと亀。

「こいつは、レリア。こいつはブレスト」

 アルフさんが紹介してくれる。フェレットがレリア、亀がブレストね。

 再び迫る錬金術チーム。ブレストが甲羅の中に手足を収納。レリアはなぜか、私の服の中。

「きゃあぁぁぁ、くすぐったいッ」

 私は脇が弱い、弱いのだ。

「こら、出らんか、レリアッ」

 慌てるアルフさん。

 のたうち回る私は、たまらずシャツを脱ぎ捨てる。

「ル、ルナァッ?」

「わぁぁぁァッ」

 アルフさんと、アーサーが叫び、サーシャはそっぽを向いてくれる。

「ルナちゃん、落ち着いてッ」

「くすぐったいッ」

 いかん、我慢できん。

 レリアは私の胴体をくるくる周回する。

 もう一枚のシャツ、下着に手をかけると、リツさんのチョップが飛ぶ。

「落ち着きなさいッ、男性はあっち行ってッ」

 リツさんが叫び、私は身を捩り、男性陣はリビングをローズさんに追い出された。

 騒ぎが収まり、アルフさんがレリアを掴んで、すまん、と謝って来た。レリアがじたばたしてる。握りつぶされないよね?

 なんか、すみません、あまり見ごたえのない、体で。はい、私もすみません、ちょっと、耐えきれなくてすみません。


 次の日。

 再び残念金髪美形が来た。

 眼帯をしたアルフさんを心配していた。

 レリアはアルフさんの髪の中をうろちょろして肩に落ち着いてる、ブレストはショウの頭の上だ。

 本日は錬金術の相談、明日帰宅予定だ。

「業務用オーブン?」

「はい、それと馬車、ショウにも牽ける空飛ぶ馬車です」

 忘れてないね。

 アーサーは別室で隠れて、リツさんから借りた錬金術の資料を読んでいる。

 三兄妹は魔力スキルを上げようとし、私はアルフさんと日向ぼっこだ。

 うん、無心。

「馬車なら、スウちゃんのお古あげるよ。まだ、ちょっと大きいかとおもうけど、このグリフォンまだ成長するとおもうしね。あと、業務用オーブンだね、パン屋とかにあるやつだね」

「そうです」

 難しい話を始める。

 うつらうつら。

「ルナ、ルナ」

 アルフさんに起こされる。

「あ、はい」

「飯だそうだ」

「あ、はい」

 目をごしごし。

「ルナちゃん、ご飯よ」

 マリ先輩も声をかけて来た。うん、いい匂いだ。

 ダイニングルームには、リツさんとマリ先輩、アーサーが配膳している。

 ウキウキナリミヤ氏が、鎮座してる。

 私はローズさんのお手伝い。

「今日は飲茶中心です」

「ああッ、肉まん、焼売、餃子、春巻きーッ」

 叫ぶ大富豪。

 炒飯と卵スープもあります。

「どうぞ、ナリミヤ先輩」

「いただきますッ」

 ばくばくばくばくばくばく。

 凄い食欲。

 レリアが炒飯の一粒食べてる。あれ? 精霊ってご飯食べるの?

「この肉まんの中、角煮が入ってるッ」

「はい、多目に作りましたから、持っていかれます?」

「あ、ありがとうサイトウ君ッ」

「馬車を譲っていただきますしね。あ、完全ではありませんが、カレーもありますよ」

「カレーッ、カレーッ」

 叫ぶ大富豪。

「僕がオーブン作るよッ、あ、装備の素材いるッ? ドラゴン系の素材はだいたいあるよッ」

 噴き出す私とアルフさん。

 そんな、私達をそっちのけで、食後、ナリミヤ氏が庭で材料を自身のアイテムボックスから出して、錬金術発動。

「出来たよッ」

 軽ッ。

 サーシャ位の高さの四角のオーブンが、一瞬で出来上がる。

 錬金術チームはあっけに取られている。

 アルフさんは無表情。

「儂、何も見とらん」

 もう、何も言いません。

「なあ、錬金術って、こんなに簡単なのか?」

 サーシャがアーサーに聞いているが、当然アーサーは首を横に振る。

 ドラゴン系の素材は、さすがに辞退してました。

 スレイプニルのお古の馬車も、ショウに試しに牽かせて見たが、問題なし。馬車の中は当然のように空間拡張されていた。トイレにシャワールーム、ミニキッチン付き。あははすごーい。

「空を飛ぶには、風竜の素材がいるね。僕、持ってるよ。本当にいいのかい?」

 聞こえない、私は何も聞こえない。

「角煮とカレーで、これ以上は頂けません」

 リツさんがお断りしてる。

「そうかい? ならいいけど、必要なら言ってね。あ、カレーはこの鍋に、角煮はこれに」

「はい」

 リツさんとマリ先輩が手分けして鍋にカレーと角煮を入れる。

 ナリミヤ氏はスキップしながら帰って行った。

「イメージが狂うな、凄い御仁なのに」

 アルフさんが見送りながら、呟いた。

読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ