パーティー依頼⑦
流血表現続きます、ご注意ください
戦闘は一応終了
「サーシャ、来いッ、アルフさん飛ばしてッ」
【風魔法 身体強化 発動】
【風魔法 浮遊 発動】
私は二代目を構えて、素早く反応してくれたアルフさんの盾を駆け上がる。
「飛べッ」
アルフさんがタイミングよく盾を押さし出し、私は跳躍する。続けて、サーシャが盾を駆け上がる。
墜落したショウの回りにオークが、棍棒片手に群がる。地面に叩きつけられたショウは、なんとか起き上がろうともがいている。一番近くにいたオークの首が、切れ飛ぶ。まだ、なんとかショウは自分の身を守っている。そのショウとオークの間に、土の壁が盛り上がる。
アルフさんじゃない、マリ先輩だ。すでにアルフさんはオークと交戦している。
土壁、アースウォールだ。
ただ、マリ先輩の土魔法レベルだと、少し足りない。マリ先輩自身のレベルもだ。魔力が枯渇し崩れ落ちるマリ先輩の姿。その前にローズさんがバチバチ鳴るナイフを構える。リツさんはマリ先輩に魔力回復ポーションを飲ませる。
私は二代目を振るってオークを切り飛ばして着地。サーシャも勢いをころしながら着地する。
やはり無理に発動した土壁は、もろく崩れていく。だが、十分に時間が稼げた。
私はショウに近づこうとするレッドを斬り倒す。ショウが聞いたことがない小さな声で鳴いている。サーシャがショウにヒールをかける。
ジリジリと詰め寄るオークに、私は二代目を向ける。
「ヒートアクセルッ、リードッ」
アーサーの支援が飛ぶ。かっ、と体が熱くなる。
ハム共、私が相手だ。
私は地面を蹴ってオークを仕留めていく。
「ショウ、飛んでッ」
回復したマリ先輩が叫ぶ。
無表情なローズさんが雷を纏わせたナイフ一撃でオークを倒す。本当に恐ろしい戦闘メイドだ。リツさんとアーサーは騎士団の方に移動。リツさんは吹き飛ばされた騎士達の治療、アーサーは支援魔法を飛ばす。
ゴールドオークはものすごい勢いで、マルコフさんに向かっている。
迎え打つマルコフさんの大剣が、真っ二つに割れる。そのままゴールドオークの剣が金属の鎧を割り、肩に食い込む。完全に剣がマルコフさんの肩を切り落とす前に、アルフさん十文字槍が寸で止める。かなり腕力があり、自身の身体強化とアーサーの支援の影響を得ているのに、ゴールドオークの剣を受けている槍を持つアルフさんの腕が震えている。
まずい、まずい、あれはまずい。
「リーダーッ」
バラックが倒れたマルコフさんを、ゴールドオークの前から引きずり出し、バーンがヒールをかける。ヒールくらいじゃ無理だ。わかっているだろうが、バーンは諦めない。そこにマリ先輩がマナ・グラントレントの杖をかざす。
「光よ、女神の慈悲を与えよ、癒しの恵みを」
ヒールの上位魔法。
「ミドル・ヒールッ」
光がマルコフさんの体を包み込み、びくり、と巨体が震える。多分、マルコフさんは大丈夫だが、今、アルフさんがピンチだ。
達人寸前の槍術を持つアルフさんが、圧倒されている。激しい金属音を響く。援護も出来ないほどの激戦だ。
アルフさんも気になるが、こちらも鼻息荒く近づくレッドを斬り倒す。なんとかサーシャとショウを守らなければ。
「ピィッ、ピィッ」
後ろで羽ばたく音が響き、白い翼を広げたショウが、空に駆け上がる。駆け上がる瞬間、近くにいたブラックの顔面を鉤づめで引き裂く。
「ショウッ」
マリ先輩が叫ぶ。その声に反応し、旋回するスピードが増す。
サーシャとオークを迎撃しながらリツさんの方へ移動する。
「ピイイィィィッ」
「ヒートアクセルッ」
アーサーが支援を飛ばす。
「炎よ、紅蓮に滾れ、彼の者に息吹きを与えよ」
続けてアーサーが支援魔法、上位魔法を発動。
「フレイムブーストッ」
薙刀の穂先を向けた先には、ゴールドオークと対峙するアルフさんだ。十文字槍の穂先が、真っ赤に染まる。
「ピイイィィィッ」
スピードを上げたショウが、翼を畳んで、とんでもない勢いで、まるで鋭い錐のように回転しながら急降下。翼が、全身がかまいたちのような風に包まれる。
アルフさんが、横に飛ぶ。
ゴールドオークが衝撃波を含んだ咆哮を上げる。初めの咆哮程の威力はない。私のシールドバッシュでも十分防げる。
ショウはそんな衝撃波をものともせず、突き破る。
ブチィッ
鋭く交差した剣を持っていたゴールドオークの腕が、肩からちぎれ飛ぶ。そのまま地面を抉りながら着地。大きく傾いたゴールドオークに、間髪おかずにアルフさんが十文字槍で、袈裟斬りにするが、それでも倒れない。もう一撃、真っ赤に染まった穂先が喉に突き刺さる。口から血を吐きながら、残った手で槍を掴むが、既に振り払える程の力は残っていない。アルフさんが槍を抉るように回し、一気に引き抜くと、血が噴き出し、やっとゴールドオークが倒れる。
飛び抜けて強いゴールドオークが倒れた。
ショウは再び空に駆け上がり、不可視の刃を放つ。
「バーンッ、鎧を脱がせろッ」
なんとか起き上がろうとするマルコフさんを守ろうとするバーンに、指示を飛ばす。バーンは疑わずマルコフさんの鎧のパーツを繋いでいた箇所にナイフを入れて、切り離すように脱がす。
アルフさんが後退、ライナスさんが盾と剣で、トルバが斧で前に出る。
「こいつで凌いでくれ」
アルフさんは全身鎧の上半身の部分を、仕込みの小型マジックバックを使用し、外してマルコフに装着させる。そしてバスターソードを渡す。
「バーン、使え」
最後にナイフが折れているバーンに、自身の大型ナイフを渡す。
「さあ、後一踏ん張りだ」
アルフさんは十文字槍を構える。
私は騎士隊に混じって、オークを斬り飛ばす。アーサーとサーシャは治療に回るリツさんを守りながら、対応している。
一匹も通さないぞ。
後ろでアーサーとサーシャが交代しながら、魔力回復ポーションを呷る。
オークとレッドもブラウンも問題なく、捌く。ヴェルサスさんはシルバーと対峙している。あまり旗色がよくない。
「ヒートアクセルッ」
アーサーの支援魔法が飛ぶ。
騎士達は眼前のオークに、必死に武器を振るって対象している。私はオーク達の隙間を縫って、二代目を振るう。なんとかヴェルサスさんの近くに。身を低くしタイミングを見定め、ヴェルサスが一瞬離れた瞬間、私に二代目を脇に突き刺し、一気に振り抜く。どう、と体制が崩れ落ちるシルバーに、ヴェルサスさんは剣を首に叩き付ける。
「後少しですッ」
「応ッ」
リツさんの治療で復活した騎士達が、武器を手に戦闘に加わる。
アーサーもリツさんを守りながら、抜けてくるオークを始末し、リツさんは新しいロングソードを構える。リツさんの剣術は独特だ。光属性を纏わせ、両手で剣を真っ直ぐ握る。気合い一発、リツさんが切り込み、オークの片手を深い斬り、怯んだすきに、バックステップから一気に喉目掛けて剣先が突き刺さる。………リツさん、いつの間にオークまで倒せるようになったの? まあ、自衛手段があった方がいいよね。
アルフさんの方は、なんだかおかしなことになっている。十文字槍を振り回す速度が明らかに上がっているし、次々に鎧をマルコフさんに渡した軽装アルフさんに群がるオーク。だが、色なんて関係ない。十文字槍の餌食になっていくオーク達。土魔法もすごい、一斉に土の細い錐が地面から飛び出し。オークどもの足を貫通。身動き取れないところをみんなでタコ殴りだ。
アルフさん、越えたんだ、スキルレベル50の壁を。
私はサーシャを後ろにつけて残存オークを斬り続けた。
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