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女神?の②

カミサマ?

 この世界には宗教がある。

 国よって様々だが、出身国であるライドエルやここクリスタムでは、創造の女神ガイアを主に守護天使を信仰する人がほぼだ。比較的自由で、創造の女神だけではなく、同時に誕生月の守護天使を信仰している人も多い。他の守護天使も重なる人もいれば、全ての守護天使を信仰している人もいる。もちろん無宗教の人もいる。他の国事情はあるが近隣諸国は似たり寄ったり。まあ、一部過激な宗教もある。人道主義の塊のような宗教、ラリア教があるらしい、確か北西のギランバ帝国はこれを国教とし、その周辺諸国はその傾向が強いと。このラリア教の国では人族以外はひどい扱いらしい。

 私達はリツさんを背負ったナリミヤ氏に案内され、近くの教会に。

 そこそこ大きな教会、高い窓にステンドグラスの丸窓がある。すでに夕方だが中には何人か熱心に祈りを捧げていた。中央奥に女神ガイアの像、両サイドには一回り小さな像が並ぶ、守護天使像だ。

 ナリミヤ氏はガイア像の前でリツさんを下ろす。ナリミヤ氏はリツさんの左側、リツさんの右隣にマリ先輩、その隣にローズさん、私と並ぶ。横一列だ。

「サイトウ君、僕の肩に掴まっててね」

 リツさんはいびつな指でナリミヤ氏の肩に触れる。それをマリ先輩が支える。

 何かあるな、これは。

 咄嗟に私はナリミヤ氏の左側に移動し、がっ、と肩と掴んだ。ナリミヤ氏は驚いたように私を見たが、すぐに祈りの体勢に入る。

「女神ガイア様、どうかお導きください」

 手を組んで紫の目を閉じ、ナリミヤ氏が祈りを捧げた。

  ふわっ

 すると、白いベールの様な幕が幾重にも私達を包んだ。


 身構える。回りは真っ白な霧で何も見えない。

「マリ先輩、ローズさん、リツさん」

 呼ぶと、

「ルナちゃん、私はここよ」

「私もいます」

 すぐ近くでマリ先輩とリツさんの声。しかし、姿が見えない。ローズさんの声がしない。それにマリ先輩は気付いたのか、ローズさんの名を呼ぶが返事がない。

「多分、彼女はここには入れないかな」

 ナリミヤ氏の声。

 するすると霧が引いていく。

「あ、ルナちゃん」

 少し離れたところで、マリ先輩がリツさんを支えて立っていた。姿が見えてホッとする。私は二人に駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

 声をかけると二人とも大丈夫と返事あり。

 良かった。

「ここはどこですかね?」

 リツさんは不安そうに辺りを見渡す。

「ここは神界の入り口だよ。あ、大丈夫。死んでないからね」

 白い霧のなか、ナリミヤ氏が出てくる。

「ナリミヤ先輩、ここは?」

「そうだね。神様達と会える場所。謁見の間みたいなところかな? 神様や天使様の加護とかないと来れないんだ。だから、ローズさん?かな、彼女は加護がないからここには来れないんだ」

 ん? と言うことは、私達三人には加護があるのか? まったく心当たりはないが。

「あの、よく分からないんですが?」

 リツさんがナリミヤ氏に聞く。うん、私も。

「そうだね。まず僕には女神様の加護ある。それは僕がこちらの世界に勇者召喚に巻き込まれた時に、女神様が下さった。サイトウ君、君も巻き込まれたから女神様の加護が何かしらあるかと思ったけど、よく分からなかったから、直接女神様に聞こうと思って来たんだ。僕は女神様の加護のおかげでここまで来ることができるんだ。まあ、いつもって訳ではないけど」

 勇者召喚?

 なにそれ?

 何でもナリミヤ氏とリツさんは、別の世界の住人でもともと知り合いだった。コウコウとはライドエルの学園みたいなものらしく、そこでナリミヤ氏が先輩で、リツさんが一年後輩。友人の結婚式の時すでに何と二人とも年齢は30過ぎだった。しかし、勇者召喚にまずナリミヤ氏が巻き込まれ、光に包まれそうなナリミヤ氏に咄嗟に手をつかんで助けようとしてリツさんが更に巻き込まれ。勇者召喚自体は女神様が防いだが、二人の巻き込まれ召喚はどうしようもなかったらしい。召喚のせいで体を消失させてしまったため、女神様は新しい体と様々なスキルを与えてくれ加護までつけた。そしてこちらの世界に来たのは10年前。年は15才だったと。それがナリミヤ氏。しかし、リツさんは今から1年前にこの世界に放り出された。15才はナリミヤ氏と変わらないが、何故か醜い姿で。放り出されたのが、あのナリミヤ氏の屋敷の前だった。異変に気付いたナリミヤ氏がすぐに保護してくれた。リツさんはナリミヤ氏を助けようと手を伸ばしたのだから。責任を感じたようだ。

 しかし、リツさんとナリミヤ氏の扱いの差が激しい。ナリミヤ氏は美しい容姿に、恵まれたスキルに加護を得たのに。

 時間差もそうだが、なんだ、この差は。

「だって、巻き込まれたソウタ君は仕方ないでしょ、勇者召喚とは関係ないんだもの。でもその子は、自分から巻き込まれたのよ」

 不意に、女性の声が降ってきた。

 声の方に振り返ると、光沢のある深い茶色の長い髪、メリハリのある体は白いドレスに包んでいる、美しい女性がいた。背中には淡く光る大きな翼。神々しい女性だ。

 ちょっと気になる言い方だが、まさか。

「ガイア様」

 ナリミヤ氏が名を呼ぶ。

 神界だと聞いたから、まさかとは思っていたが、この女性が創造の女神ガイア様。あまりのことに私は声が出ない。

 この世界を造り、すべての魂を導く、女神ガイア様。

「久しぶりね、ソウタ君」

 親しげにガイア様はナリミヤ氏に声をかける。

「ガイア様、サイトウ君の事でお聞きしたい事があるんです。彼女の加護のところがよく分からないんです。ガイア様の加護だと思うんですが」

「ああ、それね。はい、これで見れるわよ」

 ガイア様は白い手を軽く振る。

 ふわっと光がリツさんを包んだ。

「サイトウ君、また『鑑定』していいかな?」

「あ、はい、どうぞ」

 ナリミヤ氏は再びリツさんを鑑定。すぐに、戸惑いの表情を浮かべる。

「あの、ガイア様、サイトウ君の加護のところが」

 その表情のままナリミヤ氏はガイア様に振り返った。

「気がついた? だって、その子はいらないもの」

 私はガイア様のその言葉にかちんときた。なんでリツさんがそんな風に言われないといけないんだ? 女神様だろうが、なんだろうが、私は関係なく怒りが沸き上がってきた。

「ナリミヤ先輩、何が分かったんですか?」

 リツさんが不安そうに聞くが、ナリミヤ氏は言うべきかどうか迷っている。

「ほら、これよ」

 迷っているナリミヤ氏に代わり、ガイア様が更に手を振る。

 私達の前に、文字が浮かび上がる。


 リツ・サイトウ レベル1

 人族 無職

 スキル・なし

 加護・女神から見放されたもの

読んでいただきありがとうございます。

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