パーティー依頼⑥
追撃
流血表現あります。ご注意ください。
「降り注げ炎よ、焼き尽くせ、覆い尽くせ、息を奪い取れ」
さすが時期Aランクパーティーの魔法使い。高位の火魔法を発動させる。
「フレイムレインッ」
シンザが杖を天に向かってかざす。
赤い光がいくつもいくつも現れる。あれがすべてファイヤーアロー。鋭い音を立ててまさに雨のように降り注ぐ。
「「フレイムランスッ」」
アルフさんとアーサーの魔法も炸裂。騎士団からも魔法が飛び出す。次に風魔法が飛び、炎を巻き上げる。ローズさんの雷魔法も着弾。巨体のオークが吹き飛んでいく。第二弾も発動し、私は身体強化をする。
【風魔法 身体強化 発動】
【風魔法 武器強化 発動】
【火魔法 武器強化 発動】
魔力操作を得て、私は三つまで強化魔法が使えるようになった。
アーサーが立て続けに支援発動。『ハーベの光』にも、こっそりしている。
「ショウ、遊撃に回れ。ルナ、行けるか?」
「ピィッ」
「いつでも」
「よし」
魔鉄の槍とアダマンタイトの盾を装備したアルフさんが、マルコフさんに合図する。マルコフさんは騎士団に腕の動きで合図。
「ルナ君、頼む」
「はい」
気をつけて、とリツさん、マリ先輩。
ショウが空に駆け上がり、私は二代目を構えて飛び出す。魔力を操り、鋭く、できるだけ圧縮して。
「はッ」
私は衝撃斬刃を放つ。
ざうんッ
レベルの上がった私の衝撃斬刃は、オーク達を真っ二つにする。
もう一発。
ざうんッ
さすがナリミヤ印の二代目だ。オークが悲鳴も上げずに真っ二つ。しかし、魔力かかなり持っていかれる。
ショウは旋回しながら逃げようとするオークに、不可視の刃を飛ばす。
「突撃ッ」
ヴェルサスさんの声に騎士団が飛び出している。私のすぐ近くに、アルフさん、アーサー、サーシャ。そして『ハーベの光』に『暁』も。
「下がれルナッ」
「はい」
私はアルフさんの後ろへ。
衝撃斬刃を逃れたオークが、こちらに向かって来る。それでも初撃の影響で無傷のオークはいない。
私はアルフさんの後ろで魔力回復ポーションを一気のみ。
それぞれのタンクが盾を構える。
「「シールドバッシュッ」」
「ヒートバッシュッ」
一匹がゴブリン10匹のオークが、吹き飛ばされる。
呆然となる、ライナスさんとバラック。
「追撃ッ」
私が叫ぶ。
「ストーンマグナムッ」
アーサーが連続で石の礫を放つ。
サーシャが矢を放ち、後方からも魔法が飛ぶ。次々に倒れ伏すオーク。レッドもブラウンも倒れていく。やはり初撃が効いている。騎士団も連係プレーでオークを倒していく。
「サーシャ、前に出すぎるなッ、アーサー、状況判断しろッ」
アルフさんが魔鉄の槍を振るい、棍棒を持つブラックと交戦しながら撃を飛ばす。二人は返事をし、後衛との間で展開。サーシャは隙間を縫うように矢を放ち、アーサーが移動しながら魔法を放ち、薙刀で横から出てくるオークを仕留めていく。
私はブラウンの足を切り飛ばし、崩れた瞬間を狙って首を薙ぐ。
マルコフさんは大剣を振るって対戦している。他のメンバーは援護に徹している。ライナスさんとトルバもブラックと対峙し、交互に攻撃を仕掛けている。後方からは断続的に魔法が放たれる。
アルフさんがブラックを時間をかけずに始末し、シルバーと対峙する。邪魔しようとするオークを私は斬り倒す。アルフさんは盾を籠手に戻して、両手で魔鉄の槍を振り回す。相変わらず無駄がない動きでシルバーを翻弄し、穂先がシルバーの喉を深く突き刺さる。
「フレイムランスッ」
そのまま魔法を発動。頭が半分になり、真っ黒なったシルバーが轟音を立てて沈む。バーンがえげつな、と呟くが聞き流す。
息つく間もなく残存のオークを仕留めるために、アルフさんが槍を引き抜く。おそらく残り2~3割。無傷のオークはいない。
「ピイイィィィッ、ピイイィィィッ」
旋回していたショウが高い鳴き声を上げる。
「魔法準備ッ」
私が叫ぶ。
マルコフさんが騎士団に手で合図を送る。
「アーサー、サーシャ、あっちッ」
呪文詠唱に入ったシンバを指す。どうしても上位魔法の詠唱は時間に集中力が必要で、その間無防備になってしまう。ライナスさんとトルバは前線で交戦中。斥候のクリタナだけしかいない。
アーサーとサーシャが素早くフォローに回る。襲い来るブラウンをアーサーの薙刀が腹を裂き、サーシャが跳躍し首をナイフを突き立て離脱。二人は連係し、まとわりつこうとすりオークを切り伏せていく。
「来るぞッ」
巣の奥の方の地面が吹き出し、オークがわらわら出てくる。
地下に巣があるのか。何体残っているかなんて確認する暇ない。
「フレイムレインッ」
シンバの魔法が出てくるオークに降り注ぐ。すごい熱気。
「「ウインドカッターッ」」
リツさんとマリ先輩の魔法が飛び、ローズさんの雷魔法も発動。
私は魔力を操り、衝撃斬刃の準備。
「はッ」
気合い一発放つ。
降り注ぐ火の矢を掻い潜って来たオークに放つ。
千切れとんで行くオーク。
「ピイイィィィッ」
ショウが再び高い声を上げる。
「防御ッ」
先に気づいたのはアルフさんだ。ブラックの首を半分にして蹴り倒し、しまっていた盾を出す。
「後ろに」
私は後衛三人に言ってアルフさんの後ろへ。隣でバラックも盾を構えて『ハーベの光』が駆け込んでくる。
少し離れた場所の『暁』とアーサーとサーシャ。ライナスさんが盾を構え、アーサーも仕込みの籠手から盾を出す。ブラックトレントにミスリルにアダマンタイトを含ませた特製盾。私のラウンドシールドより一回り大きい。サーシャが後ろに下がる。
地響きを立てて明らかに一体だけ違うオークが現れる。金属の鎧に金属の大剣を持ち、鈍い金色のオーク。
ゴールドオークだ。ゴブリンなら、キング。
汚い目でこちらを確認すると、ゴールドオークが咆哮を上げる。
グワアアァァァァァァッ
衝撃波だ。タンク職がシールド展開しているが、後ろにいる私にも伝わる衝撃波。ガタイのいいバラックが盾ごと後ろに倒れる。ライナスさんも膝を着き、アーサーもしりもちをつく。騎士団の数人は後方に吹き飛ばされている。その中にビルツさんの姿。
まずい、あれはまずい。
アルフさんが魔鉄の槍をしまい、出したのは十文字槍。本当のフル装備だ。
「キャアァッ、ショウッ」
マリ先輩が悲鳴を上げる。
視界の端で、墜落していくショウの姿を捕らえた。
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