パーティー依頼⑤
カサカサ
「はい、アルフレッドさん、その鎧はなんでしょうか?」
バーンが手を上げて聞いている。
アルフさんのフル装備に、みんな唖然としてます。
洗練された黒い全身鎧に身を包んだアルフさんは、お世辞抜きにカッコいい。うん、よく見ておこう。
「似合わんか?」
「とってもカッコいいですよ」
バーンの口調がおかしい。
「アルフ、それ、どうした? まさか作ったのか?」
マルコフさんまで聞いてくる。
「ああ、最近出来上がったんだ。今回が初陣だな」
「そ、そうか」
おずおずとバーンが続けて聞く。
「盾はどちらですか?」
「ここだ」
アルフさんが左の籠手に魔力を流すと、反応してアダマンタイトの黒い盾が出る。びびるバーン。無口なバラックが目を剥く。
「ここに魔力を流すとな、兜が」
首元の魔石に魔力を流すと、兜が出て自然装着。イレイサーが吹き出す。
更に口調のおかしなバーンが聞く。
「あの、いつもの槍は何処でしょうか?」
「ここだ」
右の籠手に魔力を流すと、お馴染みの魔鉄の槍。
「ああ、安心するッ」
「ちなみに新しい槍もあるぞ」
「もうお腹いっぱいです」
バーンがおかしい。魔鉄の槍に涙流している。
「しかしアルフ、また、すごいの作ったな」
「まあ、意識飛びそうだったがな」
あはは、と笑うアルフさんとマルコフさん。
次の瞬間、マルコフさんがすごい顔になる。
「アルフ、お前、なんて鎧を作ってるんだ? 見る者が見たらどうなると思う?」
「ちょっと調子に乗ってしまってな。まあ、依頼されたら作るぞ。因みに予算は」
「結構です」
マルコフさんまで口調がおかしくなる。
そこに、カサカサとおかしな動きのビルツさんが来る。
「あのアルフレッドさん、その鎧は?」
「ん? 作ったんだ」
「そ、そうですか? あの、すごい仕込みですけど、そのどうやって?」
「詳しく聞くか?」
アルフさんは兜をしまう。
「いえ、結構なんですが、あの、普通に指名依頼したらおいくらなんですか?」
聞いちゃう? 聞いちゃう? バーンがカサカサ。
「そうさな、ヴェルサス殿の鎧の少なくとも300倍だな。仕込みなし、付与なし、指名料は別だ。ビルツ殿なら、指名料割引くぞ」
「あははははは、お気遣い、ありがとうございます」
カサカサカサカサと去っていくビルツさん。
アーサーが私の袖を引く。
「ルナさん、アルフさんの鎧っていくらなんですか?」
「分からないわよ。知らない方がいいって」
多分仕込みや付与なんかいろいろ込みで、ちょっとしたお屋敷買えるよ。多分、コードウェルの家と土地含めて、余裕で買えるよ、お釣りが来るよ、リフォームできるよ。
カサカサ帰ったビルツさんが、向こうで奇声をあげてる。ヴェルサスさんが天を仰いでいる。
『暁』のメンバーは仲間内で何か話している。
「おい、トルバ、お前ドワーフだろ。作れないか?」
「無茶言うな、儂は出来んぞ」
仲良く話している。
なんやかんやで出発。
数人の騎士と、オルファスさん、アーシャ、ミーシャ、ノゾミが残る。
「メエメエ~ッ」
着いていきたいと、抱えたアーシャの腕の中でもがくノゾミ。マリ先輩が言い聞かせていたけど、最後まで鳴いていた。
ぞろぞろと、魔の森の中に。
巣が見つかったのは、たまたま中堅手前のパーティーが探索して発見。風下だったせいか向こうには見つからず、慌ててギルドに報告したそうだ。
「巣の規模は200以上。上位種も確認されている。レッド、、ブラウン、ブラック、シルバーまで」
結構な規模だね。
ゴブリンに例えるなら、レッドはポーン、ブラウンはナイト、ブラックはルーク、シルバーはジェネラル。ゴブリンと違うのは、みんな食べれます。
歩きながらヴェルサスさんが説明。今のところ、女性の被害はないらしいが、潰しておかないわけない。
こちらの戦力はミュートの騎士団28人、トウラの冒険者が15と1匹。まずは魔法で数を減らして、私の衝撃斬刃だ。こちらは魔法が使える。『暁』のライナスさんが、水と風魔法、シンザは火と風、土魔法が使える。騎士団にも魔法が使える騎士が複数。こちらも魔法職はいる。初撃でかなり数が減るはずだ。しばらく進む。時折ショウが角ウサギを咥えて来る。マリ先輩が撫で撫で。騎士団の人達はもう突っ込まない。
1時間歩いて休憩、1時間歩いて休憩、そして到着。
200どころじゃない。倍はいる。
ヴェルサスさん、ライナスさん、マルコフさん、リツさんで緊急会議。
「続行だ」
はい。
奥方面でシンザが火魔法を放つことに。アルフさんアーサーも火魔法、私とイレイサー、ライナスさん、リツさん、マリ先輩が風魔法。ローズさんは雷魔法だ。騎士団からも魔法を放つことに。
冒険者チームは右翼、騎士団は左翼だ。
「我が守護天使バートル様、皆をお守りください」
祈りを捧げる。
リツさんたちも祈りを捧げる。『ハーベの光』も全員捧げる。
「守護天使か、では俺も祈るか。我が守護天使ハバリー様、お守りください」
ライナスさんも祈りを捧げる。
ふーん、アルフさんと同じハバリー様か。
ん、あれ? 何か忘れている。
なんだっけ?
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