表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/386

春に向け②

 魔の森に入り、しばらく進む。

 先頭はアルフさんとサーシャ、次に私、その後ろにアーシャとミーシャが続き、ローズさん、マリ先輩、リツさん。殿をアーサー。ショウは自由に動いている。

「メエメエ」

 何故かノゾミもいる。マリ先輩特製のピンクのセーター着ている。まあ、かわいい。それで冒険者ギルドに行くと女性冒険者が黄色い声を上げていた。

 コボルトと遭遇して、アルフさんがシールドバッシュしたら、まとめて吹き飛んでいた。空高く。一撃でしたよ。うわあ、関節がいろいろ変な方に向いてる。逃げようとした残り二匹は、サーシャが弓で仕留めた。いい腕だ。

「いまいち、分からんなあ。手応えがない」

 アルフさんが盾を持ち直す。

 コボルトから矢を引き抜いていたサーシャは、無惨なコボルトを見て、えーみたいな顔だ。

「あ、アルフさん、ショウに追いたてさせましょうか?」

 マリ先輩がとんでもないこと言い出す。

「出来るのか?」

「出来ますよ、ね、ショウ」

「ピィ」

 ショウが胸を張る。

「大丈夫ですか? 変に強いの来ませんよね?」

 今日は戦闘力のない、アーシャとミーシャがいるのだ。

「大丈夫よ。ショウ、アルフさんより弱い魔物をつれてきて」

「ストップ。私かアーサーより弱い魔物にしてください」

「ピィ」

 私が言うと、ショウは頷いて、白い翼を広げて空にかけあがる。

 少し旋回してからどこかに向かう。

「行ったな。アーサー、支援を」

「はい」

 アーサーが支援魔法をかける。

 私自身も身体強化、武器強化をして、バートル様に祈りを捧げる。

 結界効果のある鞘をアーシャに持たせ、後方に下がらせる。ミーシャとノゾミも一緒に。すぐ近くでサーシャが待機。

「ルナお姉ちゃん、大丈夫?」

 二代目を抜刀している私に、ミーシャが心配そうに聞いてくる。

「うん? 大丈夫よ。ゴブリンジェネラル位なら」

 あれからレベルもかなり上がったし、身体強化や武器強化を補助するグレイキルスパイダーのマントもある。多分ゴブリンジェネラル位ならタメが張れる。

 ミーシャが首を傾げる。

「お兄ちゃん、お兄ちゃんはゴブリンジェネラル倒せる?」

「無理言うな」

 サーシャが何か悟ったような顔。一応サーシャは戦闘スキルアップのために私と模擬戦をしているために分かっている。今のところ、私が一歩リードしている。

「サーシャ、身体強化しておけ」

「はい」

 アルフさんが声をかけられ、覚えたばかりの身体強化発動する。

 周囲を警戒し、しばらくするとアルフさんの気配感知が反応。

「来るぞ」

 私の気配感知にも、ひっかかる。

  ドスドスドスドスッ

 結構な重量の足音だよ。ショウは何を追いたてているの?

 私は二代目を、アーサーは薙刀を構える。

 アルフさんは前列で盾を構える。

「ぐわあぁぁぁぁぁぁッ」

 飛び出してきたのは、額に角がある、赤い肌の鬼、オーガだ。背丈はアルフさんほどで、筋肉粒々だ。ちなみに悪食。

 涎垂らして、手には木製の巨大な棍棒だ。

 三体もいる。

「ヒートバッシュッ」

 アルフさんの火魔法のシールドバッシュが炸裂する。

  ゴウンッ

 派手な衝突音と共に、一体のオーガが吹き飛んだ。すぐ近くの大木に叩きつけられ、沈黙する。え、嘘、オーガをシールドバッシュで仕留めたの? 残り二体のうち一体は、吹き飛んだオーガの足が当たり、体制を崩す。見逃すわけない。

「ストーンマグナムッ」

 アーサーの援護射撃、見事に顔面に命中。

 私は二代目で、一気に振り抜く。硬いが、首が飛ぶ。

 残りの一体はアルフさんが棍棒の攻撃をシールドバッシュで弾き返し、魔鉄の槍が喉に突き刺さる。

「サーシャッ、止めをさせッ」

「ハイッ」

 サーシャがすでに構えていた矢が、咆哮を上げるオーガの口の中に吸い込まれていく。

 数秒後完全にオーガが沈黙する直前に、ノゾミがとことこ出てくる。え、なんで?

「メエ~」

  ぽんっ

 小さなファイヤーボールがオーガの足にぽこんと当たる。

 ……………

「メエメエ~」

 呆然とするサーシャに、その足にすがり付くノゾミ。

「ご、ごめんね、サーシャ君……」

 マリ先輩が申し訳なさそうに言う。

 レベルが上がった、ノゾミのレベルが。

 レベルは普段の生活でも上がる。真面目にしていれば、15くらいまでは上がるが、それ以上は鍛練だったり、何かを極めたりだが、一番レベルが上がるのは戦闘だ。特に止めを刺すと、レベルが上がる。もちろん共闘関係にあれば影響を受けるが、その差は歴然だ。

 今の最高レベルはアルフさんの81だ。斥候として入ったサーシャは18、差がありすぎるため私達パーティー内で一つ決まったことがある。まず、サーシャのレベルの底上げだ。あまり誉められたことではないが、パワーレベリングをすることになった。先頭になるサーシャの基本ステータスを上げて保有魔力を増やすだけでも、生存率が変わるだろうから。

 そう、なったんだけど。

「メエメエ~」

 なんとも言わせない雰囲気になったが、仕方なくすがり付くノゾミをサーシャは撫でる。

 ショウが追いたてていた方からやって来て、マリ先輩が迎え入れる。

「お疲れ様ショウ」

「ピイピイ」

 胸を張るショウ。そんなショウを優しく撫でるマリ先輩。

「魔石ありますかね?」

 リツさんがアルフさんに確認。

「あるさ、革は鎧に使われるから。冒険者ギルドに解体に出せばそこそこの額になるぞ」

 それを聞いてリツさんは三体すべてアイテムボックスに。

「さ、帰りましょうか?」

 リツさんが腰を上げると、ショウの瞳が縮瞳する。

 オーガが来た方からカサカサ音がする。

 アルフさんが盾を構える。

「全員戦闘体制に、ショウはアーシャ達の警護だ」

「ピイッ」

 アルフさんの指示に私達は展開。

「サーシャは後でアーサーと位置を変われ、指示を出すまで援護、必要時迎撃しろ。後衛は援護だ」

「はい」

 私は二代目、アーサーは薙刀を再び構える。

 カサカサカサカサカサカサカサカサ。

 白い甲殻に覆われた蟻の軍団。

 ホワイトアーミーアントだ。

「ストーンマグナムッ」

「ウインドスラッシュッ」

 アーサー、私の魔法が炸裂する。アルフさんは盾に魔力纏わせる。かなりの魔力を。

「ストーンマグナムッ」

「ウォーターマグナムッ」

「ウォーターアローッ」

「ウォーターアローッ」

「ピイーッ」

 後方からも魔法が飛ぶ。

「サンダーアローッ」

 一瞬遅れてローズさんの魔法。

 そうわざと。水に濡れたアント達は感電し、動きを止める。

 その動きが止まったアントを乗り越え、新たなアントが出てくる。

 うん、気持ち悪い。

 私は魔力を調整し、衝撃斬刃を放つ。数匹のアントが真っ二つ。

 それでも怯むことなく白いアント達は前進するが、アルフさんが腰を落とし脇を締め、盾を前に出す。

「ヒートバッシュッ」

 アルフさんの全力のシールドバッシュが炸裂した。

読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ