サーシャ⑤
ピカピカナイフ
屋敷に着き、まず、ガードマン・ガーディアンに魔力登録。まあ、おっかなびっくりだったけど。
「広いね」
ミーシャがキョロキョロ。サーシャもアーシャもキョロキョロ。
門を抜けると、玄関が開き、マリ先輩とローズさんが出迎えてくれた。
「お帰りなさい」
マリ先輩の笑顔、ほっとする。
土禁の説明し、スリッパに履き替える。エントランスに入り、口を開けて見上げる三人。
中ではホリィさんが待っていた。アンナとクララもメイド服で並んでいる。
「お帰りなさいませ、リツ様」
「只今ホリィさん、彼らが今日から一緒に暮らすから。サーシャ君、アーシャちゃん、ミーシャちゃんよ」
リツさんが三人の紹介する。
「ホリィでございます。こちらが娘です。ご挨拶なさい」
「はい、アンナです」
「クララです」
うん、可愛くご挨拶出来てる。
「あ、アレクサンドル、サーシャです」
「アーシャです」
「ミーシャです」
こちらもご挨拶。
「まず、ご飯にしましょう。お腹空いてるでしょう?」
はい、ペコペコです。でも、私なんかより、三兄妹の方が、きっとペコペコだよね。サーシャは明らかに痩せてる。多分、生活を切り詰めて、あまり食べてなんだろう。
「ご飯、出来てるわよ」
「みんなこっちよ」
リツさんが誘導、ホリィさんにお風呂の依頼をする。台所には、補助テーブルが出ていた。
「メエメエ~」
ノゾミがお出迎え。
「かわいい」
ミーシャが駆け寄ってきたノゾミを撫でる。
「カラーシープ?」
サーシャがショウとノゾミを見比べる。まあ、言いたいことは分かるよ。グリフォン(捕食者)とカラーシープ(捕食対象)だからね。後で説明しよう。
「まず、座って、はい、そこね」
リツさんが佇む三人にこえをかけて、座らせる。ローズさんが手早く配膳。本日は温かいポトフだ。柔らかいロールパン付き。
「じゃ、いただきましょう。おかわりあるからね」
リツさんが、声をかけて、いただきます。
「あつ、美味しい、お姉ちゃん、美味しいよ」
「ええ、とても美味しい」
ミーシャとアーシャがポトフに夢中になる。
サーシャは二人が食べ始めたのを確認してから、やっとポトフを食べ始める。
「……旨い」
ため息を出すように言うサーシャ。
「たくさん食べてね」
食後にリツさんとアーサーは再び買い物に。マリ先輩主導で三人の部屋をどこにするかで揉めた。
空いている使用人部屋でいいと言う三人。流石に狭いよ三人じゃ。結局二階の部屋。私と同じサイズのこの屋敷では小さい部屋だ。
「いいんですか?」
サーシャが心配そうに言う。
「大丈夫よ、さ、次は工房よ」
「工房?」
マリ先輩とローズさんに三人は工房へ。
戸惑う三人のサイズを測る。
「今日は間に合わないから、明日から作成にはいりましょう」
「はい、マリ様」
「作成?」
ますます戸惑うサーシャ。
私は肩をぽんぽんする。
「受け入れなさい」
「はあ」
足の裏まで測定。靴ね。確かに、ぼろぼろだ。靴底が抜けそうだ。
アルフさんはテーブルに置かれた、サーシャが下げていたナイフを手にする。
「お前のか?」
「それは違います。ミュートの盗賊が持っていたのです。そのまま持ってて、採取とかに使ってます」
「抜いていいか?」
「はい、どうぞ」
ぼろぼろの鞘から出てきたのは、これまたぼろぼろのナイフ。アルフさんが固まる。
「研いでいないのか?」
「砥石を買えなくて」
生活費切り詰めていたね。アルフさんは息をつく。柄もぼろぼろだ、かなり使い込んだんだろうな。
「そうか、ちょっと借りるぞ。作り替える」
「はあ?」
よく分からないサーシャ。
アルフさんが魔道炉の前に。火を入れる。なんだなんだ。本格的にやりだした。ナイフ溶かして、ミスリルと魔鉄を含めて形成し、槌である程度形を整え、魔法で調整。砥石で研いで、はい、終わり。
相変わらずすごい腕。付与までつけてる。
「ほら」
「は、ほらって」
渡されたのは新品のピカピカナイフ。全く別物だよ。
「すごい、あっという間に出来たね」
ミーシャが新しいナイフに興奮する。
「鍛治って、こんなに簡単だったっけ?」
正しい疑問よ。
「ちょっと秘密があるんだよ。ほら、儂の古い砥石やるから、ちゃんと研げよ」
「あ、ありがとうございます」
採寸しながら話を聞きと、トウラでの生活費はほとんどの収入源がサーシャによる薬草採取だったらしい。村では、母親が薬師をしていたため、サーシャが薬草採取をほぼ行っていたと。サーシャ一家は、その薬師の母親が作った薬で生計を立てていた。勿論栽培もしていたが、どうしても自生の薬草が必要で、サーシャは何故か採取の難しい薬草をいつも探しだしていた。村一番強い父親は狩人として、必要時狩りをしていたらしい、狩りには父親だけが他の村人と行っていたと。
なんで、サーシャは狩りに参加していなかたっか疑問だが、それは、後で知ることとなる。
リツさん達が帰って来る。どうやら家具屋に行っていたようだ、三人の部屋にアイテムボックスから、二段ベッドとシングルサイズのベッド、ラグを敷き、チェストを置く。クローゼットはもともと備え付けだ。ミーシャがベッドに興奮する。
「見て、お兄ちゃん、フカフカだよ」
「あの、こんなにしてもらって」
「みんなにしているわ。私は家主だかね。床に寝かせる訳にはいかないし、さ、皆、お風呂に入るわよ」
じゃあ。私は最後で。
捕まりました。風呂場に抵抗むなしく連行された。
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