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サーシャ②

真ん中の子

 インゴットの処理はレオルの月が半分過ぎてようやく終了。いくつかのインゴットを鍛治師ギルドに回した。その時、ドラザールで派手に採掘したのがばれて、バルハさんが血走った目でアルフさんに迫っていた。

「派手にやりおって、アルフ、いい加減、トウラ専属にならんか。流れの鍛治師じゃ庇いきれんことになるぞ」

「すまん今は無理だ。出来るだけのことはするから」

 迫り来るバルハさんを、やんわり止めたのはダビデさん。

「アルフや、お前はトウラを離れる気はないだろう? なら、いいじゃないか」

「まあな」

「いいじゃないか、なあ? ギルドマスター?」

「くっ、仕方ない。インゴットも約束通り入れてもらったから、今回は見送ろう」

 今回は、ね。

 鍛治師ギルドはなんとかなったが、次は冒険者ギルドだ。

 私に基礎剣術講座の補助員、アルフさんは槍術の講師依頼が来た。今度はオルファスさんが血走った目で迫って来た。なんでも講師の冒険者達がクエストに出てしまい、人員不足と。

 仕方ない、毎回は無理、そしてその講師の冒険者が帰って来るまでの間と受けた。

 びしびし、久しぶり。剣術にはアーサー、ローズさんとリツさんも参加。「ひーっ」って言ってた。槍術にはマリ先輩が参加。こっちはアルフさんが「ひーっ」って言ってる。

 平行し、アルフさんの全身鎧(フルプレート)の作製が進む。まず木製で型を作り動きをチェック。

 試行錯誤してようやく納得の模型が出来る頃にはレオルの月が後数日になっていた。


「寒ッ」

 冒険者ギルドを出ると、冷たい風が吹く。雪もちらほら。

「ルナ、早く帰ろう。風邪引きそうだ」

 アルフさんが白い息を出しながら言って来る。

 今日は水の日、魚の日。前回は吹雪いて中止になったため、リツさん、マリ先輩が朝から気合い入れて出発。ローズさん、アーサー、ショウも着いていった。ノゾミはホリィさん、ちびっこ達とお留守番だ。私とアルフさんは午前中それぞれの講座だ。帰ったら、きっと魚の群れと遭遇だね。お手伝いしないと、エビフライ、シーフードグラタン、西京焼き、チャンチャン焼き、マリネにポワレ、ぐふふ。寒いからシーフードグラタンかな。

「ルナ、顔」

 しまった、ぐふふ。

 ため息つくアルフさん。

「こんな時、お前は子供だな」

「子供です。さ、アルフさん帰りましょう。グラタンが待ってます」

「ただ漏れだぞ」

 ちょっと呆れるアルフさんだが、優しく笑ってくれる。

 屋敷に向かって歩き出すと、見た記憶がある、青みがかった銀髪が見えた。あ、確か、あの三兄妹の真ん中の子だ。トウラにいたんだ、そうか、枷をはずすために来てそのまま定住したのかな。ミュートは全てを受け入れり住居がないってビルツさんが言ってたし。

 でも、何か思い詰めた顔で、路地に入って行く。

 気になる。

「アルフさん。あの路地って、何があるんですか?」

 私は咄嗟に聞くと、アルフさんは眉を寄せる。

「あそこは近づくな、娼館通りだ。おい、ルナッ」

 私は駆け出した。

 アルフさんの制止を無視して、私は駆け出した。

 真ん中の子、名前なんだっけ。アーシャかミーシャかどっちかだ。

 路地に入る。薄暗い中で、見渡すと、目付きが気持ち悪い男が私を振り返る。

 あの銀髪の子は、いた。

 真っ青な顔で男の腕を掴まれていた。

 私はその男の腕を払い、真ん中の子を背中に庇う。

「なんだテメエ」

 私を頭のてっぺんから足先まで舐めるように見る。気持ち悪い。

 答える義理はない。私は真ん中の子の手を掴む。

 相変わらず美しい顔立ちだ、私を見て戸惑っている。

「あなたは…」

「こっちへいらっしゃい」

 有無を言わせず、真ん中の子の手を引き、この路地から出るために、振り払うように早足で抜ける。

「おい、待て」

 しまった、囲まれた。

 蹴散らせる。一人ならだか、背中に真ん中の子がいる。

「上玉だ」

「げへへ、おい、お前、いくらだ?」

 あまり騒ぎを起こしたくないが、大丈夫みたい。

 追いついて来たアルフさんが、凄まじい顔で男たちを睨み付ける。

「その子たちに手を出したら許さんぞ」

 ひるんだ男たちの隙間を縫って、アルフさんの後ろに隠れる。

「なんだ、お前が買ったのか」

「儂は女は買わん。行くぞ」

「はい」

 私は真ん中の子の肩を抱き、先に進む。

「待て、お前が買ったんじゃないなら、こっちに、ひっ」

 男がアルフさんに詰め寄るが、アルフさんの容赦ない殺気に当てられて、気絶する。どさりと倒れる男。傍観していた男達も、怯んでいる。

 ふん、とアルフさんがバカにしたように息を吐き出し、私達を追いかけてきた。

「あの、あの」

 真ん中の子が、戸惑いながら、私に手を引かる。

「ルナ、鍛治師ギルドに行こう」

「はい」

 アルフさんに促され、鍛治師ギルドに。いつもの受付の女性が驚いた顔をする。

「すまん、応接間を貸してくれ」

「ど、どうぞ」

 いつもの応接間。

 真ん中の子を座らせる。

 勝手しったるなんとかで、私はお茶を淹れて出す。

「飲んで、温かいから、ね」

「はい」

 ほうっとした顔で飲む真ん中の子。

 落ち着いたかな?

「えっと、ミーシャだっけ? 私の事、覚えている?」

「アーシャです。はい、覚えています」

「じゃあアーシャ、何で、あんな所にいたの?」

「それは……」

 いいよどむアーシャ。

「お金が………」

「うん?」

「兄さんが私達生活の為に、必死に働いたお金を盗られて」

「空き巣に入られたか?」

 アルフさんが聞くが、アーシャは首を振る。

「村の人、ここに、避難していた人に」

読んでいただきありがとうございます

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