炊き出し②
姉ちゃん。
短いです。
炊き出し当日、昼前に教会に併設された孤児院へ。
アルフさんはマルコフさんの指名依頼のため、鍛治師ギルドに。
「すまんなリツ、手伝えんで」
「いいえ、お仕事頑張ってくださいね」
朝、リツさんはあらかじめ鍛治師ギルドに出勤する前にアルフさんにお弁当屋を渡している。あれ? 私が毎回お昼頃持って行っているけど、朝渡せるなら、いや、何も言いません。
昨日、準備したスープにパンを確認。
昼前に孤児院に到着する予定だが、ちょっと早めに出発。ショウとノゾミもついていく。
20分程歩いて到着。
まだ若いシスターが出てくる。
「今日はありがとうございます。子供達も楽しみにしています」
シスターが案内され食堂へ、準備に取りかかる。最年長の子供達が手伝ってくれる。ここの孤児院には合計37人、乳飲み子がま3人、最年長の14~15才の子供は7人だ。あ、あの子達、確か鍛治師ギルドの見習いの子がいる。ここの子だったのか。
準備している最中に、ノゾミとショウは小さな子供達の相手をしている。ひたすらにノゾミは駆け回り、ショウはおとなしく撫でられている。シスター達はショウを見たとき悲鳴を上げたが、子供達に何をされても動じないショウに、おとなしいグリフォンっているのね、と呟いている。
シスター、うちのショウのおとなしい感じに騙されちゃだめよ。レベル50越えてますからね。鉤ヅメは凶器ですからね。
年長者の子供は木の皿やスプーンも数えて準備、シスターは口を出さずに見守っている。準備が整うと、配膳に最年長の二人の少年が順番に入ってくる子供達に、皿もスプーンを渡す。うん、ワクワクしているが、ちゃんと待ってる。小さい子は大きな子に手を引かれている。
「皆さん、今日はこちらの皆さんがスープとパンをいただきました。感謝していただきましょう」
「「「「「はーい」」」」」
キラキラした目で順番に並び、小さなお盆にマリ先輩のパンにカットされたチーズ、そしてリツさんの具沢山スープ。今にも食べたそうだが、必死に我慢している。全員行き渡ったみたい。
「では、創造の女神ガイア様に、こちらの方達に感謝していただきましょう」
シスターの挨拶でいただきます。
「「「「「いただきます」」」」」
がつがつがつがつがつがつがつがつ
いい食べっぷり。あ、シスター達の目に涙が。
やはり食費を切り詰めているらしく、満足感のある食事は難しいらしい。まだ、トウラの孤児院はいい方で、やりっ放しの所もある。ここは辺境伯からの援助もありなんとかやっていると。まだ、孤児院に入れているのはいい方だ、変な奴隷商会に売られたら悲惨な人生しかない。そして、もう一つ、トウラには孤児院があり、来週炊き出し予定だ。この二つの孤児院は辺境伯の思想で、読み書きは最低限教えられ、必要時は各ギルドで見習いとして受け入れているように、働きかけている。成人後に路頭に迷わないように、安易に犯罪に走らないようにだ。
うん、みんな、いい子みたいだ。輝くような笑顔でパンにかぶりつき、スープを飲んでいる。
「パン、柔らかい」
「スープ、いっぱい入ってる」
すごい食欲。
おかわりもすごい。
大鍋に作ったスープはあっという間に空っぽ。
食べている最中にリツさんは明日のスープ鍋を牧師さんに渡している。食後、教会裏の畑の手入れを手伝い、みんな土まみれ。こう言うときはアーサーが強い。てきぱき動いている。魔法で余計な石や草を地面が吐き出すように魔力を調整すると、子供達から歓声が上がる。リツさんにも、褒められて、ほわわ、とお花を飛ばして照れている。今日のアーサーはチョーカーを巻いている。別に隠すつもりはないが、聞かれた時にいろいろ説明するのが、大変だからね。
「ねえ、アルフの姉ちゃん」
「ん? 何?」
石を拾っていると、鍛治師ギルドの見習いの子、年下の方が、声をかけてきた。アルフの姉ちゃんって、明らかに私が年下なんだけど。
「アルフの姉ちゃん、いつもどこから来てるの?」
「私? あそこにいるリツさん、スープ作ってくれた人のお家に間借りしてるのよ。そこから来てるの」
「アルフ兄ちゃんと住んでないの?」
「えっと、それはね。アルフさんもリツさんのお家に間借りしてるから、一緒に住んではいるかな?」
「ふーん、そうなんだ。鍛治師のみんな気になってるみたいだから」
「何が?」
「いつけっ、いだっ」
がつん、とげんこつが落ちる。
もう一人の見習いの子が、慌てて飛んできてげんこつを落としたのだ。
「こら、デック、余計なこと聞くなって言われているだろう。すみません、気にしないでください」
「いいけど」
げんこつを落とした子が、デックと呼ばれた子を連れていく。なんだったんだろう? まあ、いいや、石を拾おう。
畑を整備して、教会を後にする。みんなで見送ってくれた。
…………なんか、思い出しそうで、胸がつっかえた。
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