パーティー①
チップ
次の日早速魔の森へ。
流石に寒いんだろうなあ。グレイキルスパイダーのマント様々だ。
「ピィ」
ショウが身を低くして警戒。黄金色の目が縮瞳している。
「来ましたよ」
私が後方に注意を促す。
アルフさんが、確認。
「トレントだな」
リツさんが表情を硬くなる。
「大丈夫ですよ」
私が声をかける。
そっと覗くと、白いトレントだ。ひーふーみー。
5体、中央に一際大きなトレント。大きなトレントは普通みたいだけど、でかいなあ。
「ホワイトトレントです。これはチップにすると、最高の薫りです」
アーサーも小声で説明。
「ハム」
「ソーセージ」
リツさんとマリ先輩が呪文を唱える。美味しい呪文を。はい、すべていきますよ。
風魔法でリツさんマリ先輩が援護。ローズさんが二人の周囲を警戒。切り込むのはアルフさんと私だ。アルフさんには初代を貸し出し、槍じゃあトレントは不向きだからね。アーサー、ショウは遊撃。ノゾミには結界効果の鞘を背負わせる。
身体強化、アーサーの支援魔法、守護天使に祈り。よし、オッケー。
合図を出し、飛び出す。今は乾燥した冬場だ、火魔法は使えない。
リツさん、マリ先輩の風魔法が襲いかかる根を切り裂いていく。
私は手近のトレントを一刀両断。流石二代目。アルフさんも初代に火魔法を纏わせて、斬りつける。二撃で斬り倒す。アーサーは薙刀を振るい、根を切り裂き続ける。ショウは連続して不可視の刃を飛ばして行く。
「アースランスッ」
アルフさんの土の槍が、傷ついたトレントを薙ぎ倒す。
私は援護をもらって、二体目を斬り倒す。
アーサーとショウは連携して、最後のホワイトトレントを引き倒す。アーサーが薙刀で斬りつけ、ショウが鉤づめで枝を掴んで、翼を広げて引き倒す。マリ先輩が歓声を上げる。
残りは一体。とにかくデカイトレントだ。
「マナ・グラントレントよッ、無魔法を使うわッ、気をつけてッ」
リツさんの激が飛ぶ。
「了解ッ」
私は盾装備。
「アーサー、ショウ、援護しろッ。リツ達はギリギリまで下がれッ」
「はいっ」
「ピィッ」
ショウが上昇。アーサーが魔法を連発。
「ストーンマグナムッ」
アーサーの石の塊が、ホワイトトレントより太い根を突き破る。
「ピィピィピィッ」
ショウが見事な旋回で不可視の刃を飛ばす。本当にこの子、劣化個体なの? リツさん、マリ先輩の風魔法、ローズさんも無属性魔法で援護する。
マナ・グラントレントが大きく枝を振りかぶる。
「ルナッ」
「はいッ」
アルフさんはグレイキルスパイダーのマントを掴み、私は盾を構える。
「「シールドバッシュッ」」
衝撃波が襲いかかる。何とか盾で防ぐ。
【無属性魔法 覚醒】
アルフさんのシールドバッシュは、見事に弾き返し、衝撃波がマナ・グラントレントの幹を傷つける。
アーサーはリツさん達の前で、グレイキルスパイダーのマントを掴んでシールドバッシュを展開している。
私とアルフさんは一気に接近。
一瞬前に出た私は衝撃斬波を飛ばす。
バクッ
マナ・グラントレントの幹が抉られるように斬りつけられる。回りの枝や根も切り裂く。
素早く、抉れた場所に火魔法を纏わせた二代目で斬りつける。
「アーサー、傷口に火を叩き込めッ、再生するぞッ」
「はいッ」
アルフさんの指示で、アーサーが時空間魔法と火魔法を使い、ファイヤーボールを叩き込む。お見事。
アルフさんと私が斬りつけ、ショウが不可視の刃を飛ばす。僅かな隙間を縫って、アーサーの小さく調整したファイヤーボールが着弾。
何度か目の斬りつけで、マナ・グラントレントがぐらつく。
唸る枝をショウが掴む。翼を羽ばたかせる。引き倒すつもりだろうが、物量が先ほどとは桁違いだ。
「アースランスッ」
「ストーンマグナムッ」
「ストーンバレットッ」
「ストーンマグナムッ」
「マナバレットッ」
アルフさん、アーサー、リツさん、マリ先輩、ローズさんの魔法が見事に着弾し、マナ・グラントレントがその巨体を沈めた。
「すごいわショウ」
マリ先輩がショウを抱き締める。えっへんと胸を張るショウ。
リツさんが上機嫌でアイテムボックスにトレントをすべて入れる。本当にどんだけ入るんだろう?
「アーサー、見事だったぞ」
「はい、ありがとうございます」
アルフさんが誉めている。確かに見事な援護だった。
「アーサー、流石ね、私達の中でも一番の魔法コントロールじゃない?」
「えへへ…」
照れるアーサー。
昼食を取り一休憩。
「さ、次はお肉ね」
「お肉、ショウ、お肉はどっち?」
「ぴい」
とっとこ進むショウ。
索敵スキルが高いのか、魔物の勘が高いのか、次々に角ウサギを狩り、ボアも一匹。全部ショウが仕留める。出番が来ない。
最後のお肉、いや、魔物は腕が四本の熊。デカイ、アルフさんよりデカイ。
アルフさんが魔鉄の槍を構える。私は二代目。ショウは地面を蹴り急上昇する。アーサーは後衛三人の前で薙刀を構える。
熊が咆哮を上げる。槍の穂先が鋭く寸分の狂いなく心臓辺りに突き刺さる。私は風魔法で一気に飛び、首筋を薙ぐ。そこに勢いよくショウが急降下し、鉤づめで熊の頭を掴み、そのままねじ曲げる。
バキンッ
音を立て、熊の頭と後ろを向く。轟音を立てて巨体が倒れる。
熊に目から光がなくなる。
後ろでアーサーが「え~一瞬」と呟く。
「初めて見ました。このお肉、じゃない、魔物」
「駄々漏れだぞルナ。確か、フォーアームベアーだったはずだ」
アルフさんが説明してくれる。
「ハイが付きますよ、それ」
リツさんが追加説明。
「上位種か」
「食べれます?」
私が聞くと、リツさんが笑顔。
「素敵なステーキにしましょうね」
「はい、お手伝いします」
きりっ
リツさんは笑ってアイテムボックスにハイ・フォーアームベアーを入れる。
「冒険者ギルドで解体依頼をしましょうね。さ、みんな帰りましょう」
リツさんの号令で帰宅するために、ショウを先頭に魔の森を抜けるために歩き出した。
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