パーティー?③
ハーブ入り
せっせと料理をしていると、リツさんの携帯電話が鳴る。
慌ててリツさんが手を洗って、携帯電話を取る。相手はナリミヤ氏以外いないけどね。
「はい、斎藤です。ナリミヤ先輩どうされました。あ、はい、はい、ああそうですか……」
リツさんが携帯電話で話し出す。きっと、あのけばい人だね。
「はい、そのうちにマリベールに行きますので、その時にお礼を。はい、はい、来年ですけど。はい、ルナちゃんの成人の後ですので、バートルの後ですね。え、醤油? ちょっと待って下さい」
リツさんが、マリ先輩の方に向く。
「マリちゃん、醤油って予備ある?」
「あるけど、どうしたの? ナリミヤ様欲しいって?」
「そう」
「大丈夫よ。新しく仕込んでいるから」
「分かった。ありがとうマリちゃん。大丈夫見たいです。はい、その時に、はい、失礼します。そちらに行く時にまた、連絡しますので」
リツさんは携帯電話での連絡を終える。ふうっと息をつく。
「あのハラヘッタ子爵は御取り潰しだって」
でしょうね。
「とりあえず一件落着かな。さ、新しい腸詰めよ、味見してみて」
リツさんが鍋から腸詰めを上げる。
いい匂いで、あのけばいハラヘッタ子爵の顔、思い出さずに、消去される。
「ハーブ入りよ、どうかしら? 前菜にしても大丈夫かしら?」
リツさんが楊子に刺して私達に差し出す。
いただきます。
「あ、香りがいいですね。私、好きです」
うん、そう、香りがいい。肉汁が溢れてくる。
「美味しいです、リツ様、少しニンニクが入ってて、とても美味しいです」
ホリィさんも美味しそうに、素晴らしい感想を述べる。
マリ先輩、ローズさん、アーサーにも好評。
「ぴぃぴぃッ」
必死に次が欲しいと訴えるショウ。リツさん笑って最後の腸詰めをショウにあげている。
「ふふ、レシピ大丈夫ね、たくさん作りましょう」
リツさんは腕捲りをして、大量のひき肉と細かくしたハーブをボウルで混ぜだした。
次の日、昼過ぎにアルフさんが帰って来た。
「お帰りなさい」
「ただいま、ルナ」
アルフさんから空になったお弁当箱を受けとる。
「お昼、準備しますね」
「頼む。リツ達はどうした?」
「工房で抽出作業です。アーサーも手伝っています」
「そうか」
台所でアルフさんが肩を回して椅子に座る。回すと首や肩がバキバキ言ってる。後で、肩、お揉みしなくては。
マジックバックからマリ先輩製バニーニという料理だ。時間停止のマジックバックなので、熱々。チーズやラタトゥイユや、ハム、キノコなど様々な種類がある。お昼に私もいただきました、はい、美味しいです。
アルフさん用のお皿にあらかじめにのせてあるので、出すだけ。豪快にかぶりつくアルフさん。私はお茶を淹れる。
「あ、そうだ、ハラヘッタじゃない、ハララナイ子爵、御取り潰しだと、ナリミヤ氏から連絡が昨日来ました」
「ん、そうか、まあ、そうだろうな。しかし、宰相と知り合いとは、敵に回したくないな」
「そうですね。はい、お茶です」
「ああ、ありがとうルナ」
アルフさんは、昼食後、シャワーを浴びて仮眠。
食器類を片付けて、私はすることない。ショウのブラッシングをする。
「ぴぃ~」
うん、気持ち良さそう。
夕方前に食堂の準備。アルフさんも起きてきて手伝っていた。作業着から着替えて、メニューの確認。
「ホリィさん、アーサー君、配膳お願いしますね」
「はい、リツ様」
ホリィさんはピシッと髪を上げてる。アーサーはギャルソン風。
それぞれ、身なりをチェック。
リツさん、マリ先輩はハイウエストのワンピース。ローズさんと私はブラウスにスカート。ローズさんはちょっとタイトな濃紺ロングスカート。ローズさん、スタイルいいなあ。私はふわっとした深緑だ。アルフさんは、相変わらず足長いなあ。
『ハーベの光』がやって来た。
「また、お招きいただきありがとう。リツ君、これ受け取ってくれ」
「私達がご招待したのに、ありがとうございます」
かちっと役員風なマルコフさんが、リツさんに手土産を渡している。ピンク色の岩塩だ。
おずおずとバラックがマリ先輩に、何か渡している。
「妹達が、この前の菓子のお礼の手紙を書いたので」
「まあ、ありがとうございます」
嬉しそうにマリ先輩が受け取っている。
ショウとノゾミもお出迎え。
「あれ? ショウ君、大きくなったね」
バーンが驚いている。そう?
「大きくなってるよ、ゴブリンの巣から、絶対大きくなっているよ」
当のショウは首を傾げている。
あ、確かに、嘴の位置が高くなっている。初めうちに来たときは、私の顎下辺りだったのに、額の位置になってる。毎日見てるから、分からないのかな?
「ふふ、ショウは成長期だからね。ご飯一杯食べましょうね」
「ぴぃぴぃ」
今でも十分食べてるよ。私の倍は食べてるよ。
「メエメエ~」
ノゾミはまずマルコフさんの元に挨拶。強面だけど、優しくマルコフさんが、ノゾミを撫でてる。
「皆さん、こちらへどうぞ」
リツさんの案内で食堂に。わいわいと着席。
「ショウ君、なんで僕の隣なの?」
ぴったりとバーンの隣をキープしているショウ。
「ショウはバーンさんが好きなのね」
うふふ、と笑うマリ先輩。ちょっといろいろあるけど、バーンは基本的に悪い人ではない。むしろアーサーのような奴隷でも、一度共闘したからと、食事の同席を促したり、ミュートでは身を案じたりいい人柄が出ている。
「そ、そうなのショウ君」
「ぴぃぴぃ」
「グリフォンに好かれるってすごい光栄だね。ショウ君、あいたッ」
調子に乗って手を出すと、つつかれている。
「失礼します」
ホリィさんとアーサーが飲み物と前菜が載せたワゴンを押し、食堂に入ってくる。
「皆さん、ワイン飲まれますよね?」
「ああ、頂いていいか」
「ホリィさん、お願いします」
「はい、リツ様」
ホリィさんが『ハーベの光』のグラスにワインを注ぐ。アーサーは前菜も皿を配膳。
「うわあ、やっぱりここの飯は見た目がいいが、とにかく旨そうだな」
イレイサーが感嘆の声を上げる。旨そうじゃないよ、旨いのよ。
今日の前菜は二種の腸詰め、カボチャ、マメ、チーズのキッシュ、トマトをくりぬいてポテトサラダが入り彩りがいい。サーモンのマリネ、かぶやニンジンのピクルスがサイドが飾る。
「この時期にトマトが食べれるとはな」
マルコフさんがお皿を彩るトマトに驚いている。トマトは夏だしね。
「たくさん保存していましたから」
リツさんのアイテムボックスはほぼ無限だからね、季節の野菜満載なんだよ。
「では、アルフさんがお世話になりました、どうぞ召し上がってください」
リツさんの挨拶で、食事会が始まった。
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