パーティー?①
大きな剣
トウラの冒険者ギルドの地下訓練場で激しい剣劇が繰り広げられる。
私ではありません。
アルフさんと『ハーベの光』のマルコフさんだ。
模擬の大剣を持ち、二人とも凶悪な笑顔を浮かべてる。
体格いい二人の剣劇に、回りは圧倒されている。アーサーもバーンも引いてる。
ことの起こりは少し前にいろいろ報告がてらに冒険者ギルドに来た時に、『ハーベの光』と遭遇。ミュートの件でお礼と言う話になった。アルフさんの無料付与か、もしくはリツさん達の手料理か。散々悩んで選んだのは後者。ギルドマスターのシェラさんが手が空かず、待つことになり。
「マルコフさん、すまんが剣の相手をしてくれんか? 儂は剣術は大したことなくてな」
「構わないぞ」
で、こうなりました。
だが、やはりアルフさんが押されている。しかし、さすがにマルコフさんの動きはいい。得物が大剣だけはある。
模擬の大剣の音が響く。
汗を飛ばし、アルフさんが押される。追撃するマルコフさん。
あ、あれは。
アルフさんが腰を落とし、脇を閉め、左手を押し出す。
ドワーフの盾術だ。無盾だけど、魔力がかなりの濃度になってる。
「アースバッシュッ」
土魔法をのせたシールドバッシュだ。
巨体の二人が弾けて派手に尻餅をつく。
「あ、たた、さすがマルコフさんだな」
アルフさんは左手を押さえる。いくら魔力を纏っても、無盾であの攻撃を、受けきれないのだろう、額に浮かぶのは脂汗だ。慌ててリツさんとマリ先輩が駆け寄る。マルコフさんには、バーンが駆け寄る。
「リーダー、ヒール」
「ああ、大丈夫だが、助かる」
マルコフさんはバーンのヒールを受ける。アルフさんも治療終了。
「もう一回ヒールを」
マリ先輩が心配するが、大丈夫だとアルフさんは断っていた。左手を握ったり、開いたり感覚を確認している。
傍観していた若い冒険者達が話している。
「なあ、あのマルコフって確かAランクだよな?」
へえ、マルコフさん、Aランクなんだ。
「あの片目引けを取らないけど、あいつ剣も使えんの? 確か槍使いだよな」
アルフさんは斧に短剣、崑術もあるんだよ。わざわざ教えないけど。
ちょいちょいと袖を引かれる。
「何、アーサー」
「ルナさん、アルフさんに剣術で勝てます?」
「そうね。盾術も使わない前提ならそこそこいけるかな。身体強化もしてね」
そう、アルフさんが剣術するなら、もれなく盾術が着いてくる。戦闘スタイル見る限り、剣と盾を持つ感じだし。アルフさんのシールドバッシュなんて食らったら、私なんてぶっ飛ぶだろう。無盾でも、巨体のマルコフさんを弾いたのだから、私なんて小石のようだろうなあ。
「そうですか……」
パンパン
アーサーの呟きに重なるように、手を叩く音が響く。振り返ると、ギルドマスターシェラさんだ。
「お待たせしたわね。さ、『ハーベの光』、アルフレッド達も来て頂戴」
なんとか立ち上がったアルフさんを。アーサーが支える。ゴブリンの巣の時と同じ応接間だ。全員着席する。
「まあ、さっきの件はいいとして、まずミュートの報酬、話をしようかね」
シェラさんが、切り出す。
「まず、ミュートの件だね。アルフレッド、ルナミス、アーサー、あんた達には報酬金それぞれ15万だね。『ハーベの光』には、100万だよ。窓口で受け取っておくれ」
はい。なんか、奮発してくれたね。
「で、ランクだけど」
シェラさんは書類を見ながら話す。
「アルフレッド、あんたはCだよ。アーサーはそのままだよ。ルミナス、あんたはスタートランクはDランク」
アルフさんは観念したような顔。とうとうCランクだ。
「では『ハーベの光』はバラック、あんたはDランクにアップだよ。後はそのままだよ。パーティーランクはそのまま」
無言で頷くマルコフさん達。あれ? バラックってEランクなの? なんか無口で落ち着いているから、勝手にランク高いかなって思っていたけど。バーンがこっそり教えてくれる。バラックはまだ20才、本格的として冒険者を始めてまだ3年らしい。バラックが20才驚きだ。彫りが深いからふけて、いや、失礼、もっと年長者かと思っていた。
「で、ドラザールでは大活躍だったね。領主様から謝礼金が出てるよ30万だね。アーサー、あんたはEランクにアップだよ。この短期間で、よく頑張ったね」
シェラさんが優しく言う。確かに、最近まで農家の男の子だったのに。
「すごいわアーサー君」
リツさんにも誉められて、照れるアーサー。
「で、ローズ、リツ、マリは協力したとして、もう少しでランクアップだからね。頑張って頂戴」
おお、この短期間ですごい。
「さて、『ハーベの光』はいいとして、あんた達そろそろパーティー組んだらどうだい?」
シェラさんの言葉に私達は顔を見合わせる。
「考えておくれ」
「パーティーとなると、リーダーはやっぱりアルフさんになるんですか?」
報酬を受け取り『ハーベの光』と別れて、アーサーが聞いてくる。
「あー、儂はちょっと勘弁して欲しいな。柄じゃない。鍛治師ギルドもあるしな」
アルフさんは首を振る。
「でも、もし指名依頼来たら、パーティーリーダーが断れば、アルフさんは守れますよ。アルフさん、Cになったから、なんか来そうだし」
私が言うとみんな悩みだす。
「儂がリーダーせん理由は別にもあるぞ、パーティーのランクはな、リーダーのランクが指標に決められる。儂のランクに合わせたら、後々大変になるぞ」
実力に見会わないことになるってことか。
「リーダーは最低Fランクのはずだ。つまりリーダーやれるのはアーサーかローズだけだ」
二人が顔を見合わせる。
「自分、奴隷ですから」
「私もちょっと…」
うーん、どうする?
「明日、マルコフさん達を食事に招待しとるだろう? 相談してはどうだ? 儂もリーダーには何が必要か分からんし」
「そうですね。そうしましょう。さ、みんな帰りましょう。準備しなきゃ、マルコフさん達楽しみにされているから、腕によりをかけるわよ」
リツさんが、よし、と決意。やった、ご馳走だ。
私はぴっと手を上げる。
「お手伝いします」
「うふふ、よろしくね」
帰りにマルシェに寄り買い物して、屋敷に帰った。アルフさんだけ、鍛治師ギルドから出てきた、ドワーフに捕まる。あのドワーフ大丈夫か? 目、血走っていたけど。
「すまん、ちょっと行ってくる。あー、泊まり込みになると思う」
「分かりました。ルナちゃん、後でお弁当作るからお願いね」
「はい、リツさん」
何でもお手伝いしますよ。
ご馳走になるから。うふふ。
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