女子会?
女子会?
短いです。
アルフさんといろいろ話した後、妙に恥ずかしかった。私を身内認定してくれているから、あんな風に心配してくれていただけなのに、恥ずかしい。なんて私は残念な脳筋なんだろう。
ローズさんが、お風呂の準備ができたと、声をかけてくれて、コテージへ。全員入浴後、夕御飯です。何故かご機嫌なリツさんにマリ先輩。そのうちくるっと回転しそうなくらい。
本日はトマトソースがかかったハンバーグに、リツさん特製腸詰め入りポトフ、マリ先輩特製ブレッド。
「さ、いただきましょう」
「はい、いただきます」
きりっ
まずはハンバーグ。ナイフを入れると、肉汁が溢れる。ぱくり、あつ、ソースが酸味があるし、ハーブの香りがいい。ポトフも安定の美味しさ、腸詰めぷりっ、じゃがいもほくほく。マリ先輩のブレッドを中は詰まっているけど柔らかい。いくらでも入ります。本当にリツさん、マリ先輩のご飯は美味しい。パクパク。
あっという間に平らげた後、デザートまで出てきた。カボチャのプリンだ。はい、残しません。ぱくり、あ、甘い、カボチャの優しい甘さが口に広がるし、このちょっと苦い茶色のソースがまたいい。うふふ、美味しい。
食器を片付け、明日は早いから、そうそうに就寝することに。
そう、就寝なんだけど、私とリツさんの部屋にマリ先輩とローズさんがやって来た。何事? 何事?
リツさんが簡易テーブルを出し、お茶が並ぶ。後はなんだこれ? 薄い丸いの。あ、なんかいい匂い、あ、じゃがいも?
「これなんですか?」
匂いに我慢できず、マリ先輩に聞く。
「ポテトチップスよ。じゃがいもを薄くスライスして揚げたの。ライドエルでは専門の屋台もあるのよ。食べてみて」
ほうほう。ならばいただきます。パリッ。
「あ、塩味、あ、美味しい。じゃがいもの味がして、あ、いくらでも入ります」
パリッパリッパリッ。いかん、止まらん。これならきっと大行列だね。パリッパリッパリッ。
食べてる私を優しく見守る三人。
「ねえ、ルナちゃん」
すごく優しい顔のリツさんが聞いてくる。
「アルフさんと何をお話していたの?」
ブハアッ
私は噴き出す。噴き出したポテトチップスの欠片を必死に拭く。
み、見られた? いや、見られたからって、別にやましいことをしていた訳じゃないしね。うん、そう、とにかくやましくない。落ち着け、ふー。
「き、聞いていました?」
「いいえ」
答えたのはローズさん。
「今にもキスしそうな場面でした」
ゴフウッ
「ごごごごご、誤解ですッ、誤解ッ」
「「「ふーん」」」
何? その優しい眼差しは?
「アルフさんは、その、私が囮役ばかりするから心配して、その、これからは守ってくれるって言ってくれたんですッ」
「「「ふーん」」」
「本当ですッ」
だから、なんでそんなに生優しい目は?
「まあ、落ち着いてルナちゃん」
「そうよ、ゆっくりお話しましょうね、女子会だから」
「おかわりのポテトチップスです」
リツさん、マリ先輩、ローズさんに、私の訴えはなかなか通らず、私は心の中で悲鳴を上げた。
次の日。
私は目の下に派手に隈を作っていた。
「どうしたルナ?」
「ぴゃあッ」
アルフさんが覗き込んでくるので、私はおかしな悲鳴を上げて飛びすさる。
「? ルナ?」
「ななななな、なんでもないですッ」
昨晩の苦行のような女子会で、私は変な意識を持った。マリ先輩の一言だ。最後にアルフさんが、私に言ってくれた一言。
『まるでプロポーズね』
全くの混じりけのない笑顔に、私は泡を噴きそうになった。
絶対ないない。絶対にない。
だってアルフさんには『惚れた女』さんがいるんだ。絶対にない。
あ、なんか、寂しい、いや、違う違う。アルフさんは、ただ、私が危なっかしいから、ああ言っただけ、そう、それだけだ。
だけど、何だか、変な気分になる。いかん、いかん、この変な気分は無視だ無視。無視だ。
「ルナちゃん、アルフさん、朝ごはんよー」
マリ先輩の呑気な声。あのね、昨日のあなたの一言で、今こんな感じなんですけど。私はアルフさんから逃げるように向かった。
朝ごはんはホットドッグとパンプキンスープ。
オークのローストのホットドッグ、うん、美味しい。だから、やめて、その暖かい目を。無心、無心、モグモグ、ずー。
朝ごはん後に鍵を返して、鍛治師ギルドに魔法馬と馬車を受け取る。シルバスさんとギースさんが見送ってくれた。
「また、来てくれ、いつでも歓迎するぞ」
「皆さん、お気をつけて」
「世話になったな」
アルフさんが対応。リツさん達もお礼を言ってる。
馬車に乗ってドラザールを出発。
馭者台には座りたくなくて、リツさんとマリ先輩の無言の攻防を繰り返したが惨敗。ローズさんは無表情、アーサーは何かを察知して逃げてる。
私は小さくなってアルフさんの隣に座る。膝の自分の手を見て、無言でやり過ごす。無心だ、無心。そう、無心。
落ち着いて考えたら、私、変な行動だよね。アルフさんは、私を心配しただけだし、そうだよ、心配しただけ。アルフさん、優しいんだね。うん、身内が、危険なことをしたら、誰だって心配する。そうだ、そうだよ。うん、そうだね、私が変な意識したらいけない。アルフさんに失礼だ。アルフさんには『惚れた女』さんがいるんだから。
その考えに行き着く頃に、トウラの帰途の日数かかった。
本当に、残念な脳筋だ。
読んでいただきありがとうございます
明日の投稿お休みします、すみません。