作戦③
縛ります
痛みに呻く闇ギルド連中を縄で縛り、そこでようやくポーションを軽くかけ止血する。でも1人1本なんてしない。2人で1本だ。生き残りは元Dランクを含め合計5人。3人ほど逃げたが、あの傷だ長く持たないし、森も魔物が黙っていない。血の匂いに誘われてくるだろう。種族によっては冬眠前するため、栄養確保をしている魔物がいる。逃れられるわけない。一応、説明してやったが、逃げたので、追わない。馬車を襲った連中は全員物言わぬ屍とかしている。アーサーは表情一つ変えず、私たちを待っていた。先日ミュートまでの護衛中に初の対人戦を経験したときは、青ざめていたのに。おそらくアーサーとアルフさんは殺す気満々で来ていたはずだ、こちらも情けをかける気はない。私のマントを来たローズさんが駆け寄ってくる。
「ルミナス様、お怪我はありませんか?」
「大丈夫です。ローズさん、お疲れ様です。ローズさん、お怪我は?」
「私は荷台で隠れていただけですので」
良かった。ローズさんにかすり傷でもあれば、マリ先輩に合わす顔がない。魔法馬もケガなし。良かった。
「アーサー、死体を埋めるから、こいつら見張っていろ」
「はい」
アルフさんは5人をアーサーに預け、土魔法で穴をあけ、死体を放り込む。街道だからね、もし、魔物がよってきて関係ない人が巻き込まれたらいけないし。放り込む前に、身分証がないかチェック。
埋めていると、ショウが森から出てきた。どこに行っていたんだろう?
「たぶん、逃走しようとした奴を追って行ったと思います」
アーサーが説明。馬車を襲った連中を始末した後、ショウがそわそわし始め、森をしきりに気にするので、行くように指示すると、翼を広げて上昇。そして急降下、響く悲鳴が響いたと。
ショウは嘴で1人の服を咥えて戻ってきた。顔面を無残に裂かれた男だ、うわあ、痛そう。両目をやられたようで、うめき声を上げ、必死に抵抗している。
「おい、動くな、動けばそれ以上の痛みを与える」
私が冷たく言うと、男は動きを止める。アーサーが容赦なく縛り上げる。残ったポーションを顔にかけてやる。とは言っても、傷を軽く塞ぐ程度にしかならない。これで生き残りは6人。
荷馬車に転がす。
荷台にはアルフさん、ローズさん。私とアーサーは見張り。ショウは荷馬車の後ろから低空飛行でついていくことに。
リツさん、マリ先輩、ノゾミが待つドラザールに戻った。
ドラザールに戻ると、あの年上の警備兵とシルバスさんが城門で待っていてくれた。男たちを引き渡す。
「ありがとうございます。これでハララナイ子爵を潰せます」
深く感謝する年上の警備兵。よほど嫌われていたのね、あのけばい人。たぶん、こいつらが何か吐かなくても、宰相を敵に回しているんだ、子爵程度が何ができるとは思わないけどね。
「あの、子爵婦人はどうしてます」
「地下牢でつないでます。もう、うるさくてかないません」
すこしげんなりとした年上警備兵。
「アルフレッド、あのお嬢さんたちはギルドにいるぞ。出迎えしたかったようだが、念のためのギルドに残ってもらった」
「感謝する、ギルドマスター」
私たちはシルバスさんに続いて、鍛冶師ギルドへ。
「おかえりなさい」
「よかった、皆無事で」
「メエメエ~」
リツさん、マリ先輩、ノゾミが私たちの姿を見て、鍛冶師ギルドから飛び出してくる。
「ケガはない?」
「大丈夫ですよ。思ったより、弱くて」
心配するリツさんに、私は思った感想を述べる。
マリ先輩はローズさんのケガがないかチェックし、ショウを抱きしめている。
「一旦、ギルドに入らんか? 礼の話もしたい」
シルバスさんが声をかけてきたので、ぞろぞろと鍛冶師ギルド内へ移動。朝の応接間に入る。
「まず、無事でよかった」
シルバスさんは息を吐き出す。
「ギルドマスター、ハラナナイは鍛冶師ギルドと取引があったんだろう? 大丈夫なのか?」
「うん? ああ、そのことか、心配せんでもいい」
確かに、それはちょっと気になっていた。
「もともとハラナナイとは先々代の当主からの付き合いなんだが、今の代になっておかしくなってな」
なんでもその先々代はこのドラザールにあるいくつかの坑道の採掘権を持っていて、それで鍛冶師ギルドと付き合いがあったそうだ。その坑道の一つから質のいい宝石が出たことで、子爵ながらにかなりの資産家だったそうだ。だが、先々代、その子、先代は真面目に商売をし、鍛冶師ギルドとも良好な関係だったと。だが、現在の当主になってから風向きが変わった。多額資産がそうさせたのか、天狗にさせたのか、かなり強引に採掘し、採取した宝石を吹っ掛けるようになり、鍛冶師ギルドにも大きな顔をし始めた。政略結婚の前妻が子を成さずに早くに亡くなった後に、あのけばい元メイドが後妻に入ってから、さらに拍車をかけ、妙な連中までうろつきだした。そして、あの3人組だ。元メイドを叔母を呼んでいた、マクシなんとかって言っていたその二は、どうやら、当主と当時まだメイドだった、あのけばいのとの庶子だったらしい。いずれ、子爵家の養子にする予定だったと。あんなのが跡継ぎにしたら、余計にいろいろやらかしそうだな、おとり潰されるからまあいいか。
だが、最近になって、子爵家の金庫でもあった、坑道に異変が出始めた。まったく宝石が出なくなったのだ。ここ半年間、屑鉱石しか出ず、かなり焦っていた時に、大人しいグリフォンがやってきた。贅沢が当たり前になった生活の質を落とせなくなっていた子爵夫妻は、安易にそれに目を付けた。グリフォンを高位貴族かもしくは大商会に売り、コネを作ろうとしたと。あとはかわいらしリツさん、美人のローズさんを性奴隷にすればそこそこの収入があると踏んで。なんて連中だ、つぶれて当然だ。なんと、私も対象だったらしい、まったく、女ならなんでもいいのか? 私が小さく愚痴る。その愚痴にリツさんとマリ先輩、ローズさんが顔を見合わせる。なにかごにょごにょ話している。
「宝石が売りの坑道をおそらく掘りつくしたんだろう。これ以上、鍛冶師ギルドもやつらを関わったとしてもいいことはないしな。ただ、先々代、先代ともにいろいろ世話になって、便宜を図ってくれたいたから取引をしていただけだ。バディを襲った時点で、儂らとの繋がりはなくなった。本当に感謝しておる。バディを助けてもらい、厄介者との縁を切ることができたからな」
シルバスさんはテーブルに革の袋を出す。
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