鉱山⑧
トラブル、終
コテージに戻り、まず、全員浄化魔法で簡単に汚れを落とす。それから順番にお風呂に入る。
最後にアルフさんとアーサーが出てきて、夕御飯です。
いろいろあってお腹ペコペコだ。
「今日は中華よ」
リツさんとマリ先輩が並べ、ローズさんがアーサーとお茶を淹れる。
私はスプーンやフォークを並べる。
「中華?」
アルフさんが不思議そうに聞く。
「私が住んでいた国と海を隔てた国の料理です」
リツさんが説明している。因みにリツさんやマリ先輩のいた国の料理は、和食と言うと。ご飯や味噌汁、卵焼きは和食なんだって。美味しいなら、なんでもいいです。
チャーハンをそれぞれの皿に盛る。アルフさんとアーサーは多め。サラダの上に、蒸して裂いたウサギ肉、ごまドレッシングがかかっている。卵スープ。あとはなんだろう、この茶色の筒は?
「春巻きよ。中にいろいろ入っているから。熱いから気を付けてね。あ、はい、酢醤油」
「いただきます」
きりっ
はい、皆でいただきます。春巻きをパリッ。
あ、野菜とお肉が細く、あっつう。あっつう。酢醤油が更に美味しくしている。あっつう。
「これは旨いな。皮がパリッとして」
「米を使った皮なんです。具を包んで油で揚げたんです」
「リツ達がいた世界は食が充実していたんだな」
アルフさんが感心している。
ごまドレッシングがかかっているウサギ肉、蒸したらパサパサなんだけど、裂いてあるせいかどうか分からないけど美味しい。
「このウサギの肉、あっさりしていくらでも入ります」
アーサーもモリモリ食べてる。
このごまドレッシングが美味しい。蒸した野菜にも合うんだよね。
チャーハンもパクパク。卵スープも、ふうふうして飲む。
お腹ペコペコだったから、がっついてしまいました。
ある程度お腹が落ち着いて、リツさんに気になっていたことを聞いてみる。
「リツさん、ナリミヤ氏とどんな話しになったんですか?」
「ああ、それね」
皆、興味津々。
ナリミヤ氏に携帯電話で連絡して、バティちゃんの事や、男達の話をした。
「ナリミヤ先輩。常習犯のようで、このままだと、また被害者が出ます。なんとか出来るなら、防ぎたいんです。お知恵をお借りしたいのです」
『分かったよ。その爵位のあるのはなんて名前?』
「確か、ハラヘッタ」
「ハララナイです。リツ様」
周囲を警戒していたアーサーが訂正する。
『ハララナイだね、わかった。僕、宰相のヤーコブ様と知り合いだからなんとでもなるよ。ヤーコブ様には僕から連絡しておくから心配しなくていいからね。おそらく叩けば真っ黒な煤がでるだろうから。警備兵にはヤーコブ様の名前を出して、全員拘束してもらって。数日以内にはなんとかなるけど、それまで、周囲を注意するんだよ。全部終わったら、僕から連絡するから』
私は卵スープで噎せる。
宰相って、あの残念金髪美形、どんなコネ持ってるのよ。良かった、敵じゃなくて。
アルフさんも止まってる。
リツさんも話は続く。
「ナリミヤ先輩には、娘さんがいるから、思うところがあったみたい。それから、また、お金でなんとかするかもしれないから、先に寄付をしたの。ナリミヤ先輩からのお金だけどね」
そうだったんだ。しかし、権力怖いなあ。数日以内にはハララナイ子爵は御取り潰しね。まあ、身から出た錆だね。
「もしかしたら、取り潰される前に、私達に何かしてくるかも知れないから、気を付けないと」
リツさんがため息。
「ハララナイ子爵の件が落ち着くまで、ここを延長する?」
マリ先輩がリツさんが聞く。
「そうね。アルフさん、どうしたらいいでしょうか?」
「そうだな、延長する手もあるが、どれくらいかかるか分からんしなあ。いっそ、予定通りにして、迎え撃つ手もある」
「確かに。何も起きない可能性もありますしね。ショウもいますし、警戒しておけば、先手を打てますよ」
私も迎撃案に賛成気味。
もし、そんな連中がいるなら、根こそぎ潰したい。
相手の規模もあるけどね。あ、いけない、マリ先輩を危険に晒せない。うーん、どうしたものか。私は腕を組み、悩む。
「相手の規模が分からんしな。明日、鍛治師ギルドで相談してみるか? 鉱山の町だ、鍛治師ギルドにかなり情報があるはずだ」
「そうですね、どちらにしても魔法馬を引き取らないといけないし、あまりトウラに帰るのが遅くなるのは、ちょっと考えますね。明日、考えます」
結局、明日、鍛治師ギルドで情報収集してからになった。
次の日。
荷物をチェックして、コテージを出る。
鍛治師ギルドには、まず、アルフさんが入る。
しばらくして、ギースさんが、私達を鍛治師ギルド内に迎え入れてくれた。
さすが、鉱山の町のギルドだ。応接間も広い。
ソファーには鬼ドワーフとバティちゃん。対面にリツさんと、マリ先輩。私とアルフさん、アーサー、ローズさんは立って話を聞く。ショウはお座りしてマリ先輩のすぐ横、ノゾミはマリ先輩とリツさんの間に陣取っている。
まず、バティちゃんが改めてお礼を言って、私のガーディアンを綺麗に畳んで返してきた。
「バティや、ちょっと込み入った話をするからな。仕事に戻れ」
「はい。皆さんありがとうございました。シスターから、お手紙を預かってます」
バティちゃんはリツさんに手紙を渡し、ペコッと頭を下げて応接間を出ていく。バティちゃんが出ていったのを確認し、鬼ドワーフが話始める。
「もう分かっとるとは思うが、儂がギルドマスターのシルバスだ。バティを助けてくれて、本当に感謝する」
深く頭を下げるシルバスさん。
バティちゃんは元々この鉱山の町で、ドワーフの鍛治師の父親と6人家族。母親はすでに亡くなり、バティちゃんが家の中を取り仕切っていた。
なるほど、バティちゃんドワーフなんだ。助けた時に、子供にしてはごつい手だと思ったんだよね。
しかし、二年前に坑道の崩落事故があり、バティちゃんの父親が巻き込まれ死亡。バティちゃんも幼い弟妹と共に孤児院に入った。やっと見習いできる年齢になって、鍛治師ギルドに出入りし始めた矢先の事件だ。あの三人は相手を選んで襲っていた、鉱山の町の強い力を持つ鍛治師ギルドだけには、手を出さないようにしていた。バティちゃんは勤めだして日が浅く、関係ないと位置付けて襲ったと。鍛治師ギルドの誰かに手を出せば、仲間意識の高いドワーフが報復に来るのはわかりきっていたからだ。
「シルバス殿。実は相談したいことがあってな」
アルフさんが切り出す。
「あのハララナイ子爵だが、儂らにちょっかい出してこんか心配しとるんだ」
「その事か。ハララナイ子爵関連なら、儂らが押さえているから心配はないぞ。昨日のうちに潰しておいたから」
わーお。
「だがな、昨日つぶした連中は大丈夫として、ハララナイは妙なやつらを雇い入れているようだ」
シルバスさんが不安なことを言い出す。
「昨日、潰した連中がな、ほざいておったらしい。仕事を取りやがって、とな。それで聞き出したら、別の連中がちらほら姿を見せているらしい。狙いはそいつだ」
シルバスさんが太い指で指したのは、大人しく座っているショウだ。
読んでいただきありがとうございました
明日の投稿お休みします。すみません




