鉱山④
採掘
「え、そんなことがあったの?」
マリ先輩が驚いている。
迎えの馬車の中で、私がガイズで起きたことを説明すると、一同驚いている。
「それでルナちゃんを逆恨みしているの?」
「でしょうね。まあ、私には手を出せませんよ。返り討ちしますから。次はね」
私は真っ黒な笑顔を浮かべる。
「しかし、気を付けた方がいい、奴隷には変なネットワークがあるらしいから、ルナ、一人で出歩くなよ。儂か、ショウを連れて歩け」
アルフさんまで、心配してくれる。ありがたい。ここは素直に頷いておこう。ショウまで、すり寄ってくる。うん、かわいい。なでなで。
「分かりました」
しばらく馬車に揺られて到着。
「では、夕方迎えに来ます」
馭者をしてくれた人族の鍛治師、ギースさんが来た道を馬車で帰って行った。
見えなくなるのを確認し、アルフさんが振り返る。
「さ、採掘といくか」
アルフさんの視線の先には、まだ、堀かけの坑道。まだ、10メートルくらいしか掘られてない。なんでも他の坑道でミスリルがたくさん出たために、そちらに人員を取られているらしく、ここまで手は出せていないらしい。
「アルフさん、つるはしで、やるんですか?」
つるはしを持つアーサーがやる気を見せてる。
「まさか。そんなことしとったら時間がかかる。こうするんだ」
答えるのは、何故かフル装備のアルフさん。
グレイキルスパイダーのマントにカラーシープのカーゴパンツ、魔鉄の槍。まさか、魔法でごり押しするのかな。
「これは奥の手だ。宝石なんかがあるところや、地盤が怪しいところじゃ使えんが、この坑道は硬いらしいからな」
アルフさんは魔鉄の槍の穂先を、坑道の壁につける。
「我が力を示す。岩を砕けよ。道よ開け」
かなり魔力を込めているのか、マントが翻る。固唾を飲んで見ていると、アルフさんの魔法が発動。
「ロックディストラクションッ」
ドガドガドガ、ガラガララッ
地鳴りがして、結構な破壊音を立て、坑道の岩壁に亀裂が入り、崩れていく。
「すごいアルフさん」
「本当にすごい」
リツさんとマリ先輩が絶賛。
盗賊のアジトで、亀裂を無理やり広げた魔法だね。
土魔法のレベルが高い上に、槍にマントのカーゴパンツの土魔法の補助が重なり、おそらく強化クラスになったことで、出来ることだろうな。
「よし。儂が坑道を広げる、ルナ、マジックバック持っておったな? 運び出してくれ。リツは鑑定、残りは選別作業だな」
役割分担。
坑道拡大はアルフさん、鉱石の運び出しは私(マジックバック頼り)、鑑定はリツさん、マリ先輩とロースさんが、錬金術で粉砕や抽出をすることに。土魔法が使えるアーサーは粉砕の手伝いとなる。ショウは周囲の警戒。ノゾミはお昼寝。
さあ、頑張りましょう。
「はい、次来ました」
私はマジックバックからガラガラと鉱石を出す。
坑道では、アルフさんの魔法が炸裂し、つるはしで採掘しているが、まあ、楽しそう。時折岩盤はチェック。途中からアーサーも採掘の魔法を習い、チャレンジしている。
「ちょっと待ってルナちゃん、追い付かないから」
リツさんがせっせと鑑定。向こうには私の背丈くらいの鉱石の山。
マリ先輩とロースさんは必死に錬金術で粉砕や抽出している。
うーん、そろそろ日が暮れるぞ。ギースさんが、迎えにくる。
「もう、今日はこれまでね。ルナちゃん、アルフさんとアーサー君呼んできて」
「はい」
私は坑道にいる二人に声をかける。
「そろそろ今日は終わりですって」
「なんだ、もうそんな時間か? 仕方ない、アーサー、上がるぞ」
「はい」
顔は黒くなって、汗まみれの二人が出てくる。
ローズさんがマジックバックから、タオルを出して渡す。
それから、抽出できたものは、ローズさんのマジックバックに、それ以外のものはリツさんのアイテムボックスに入る。
「結構、採掘出来ましたね」
ローズさんのお茶で喉を潤していたアルフさんが一息つく。
「そうだな、まあ、どれくらいインゴットになるかだな」
確かに。あの山全部が魔鉄やミスリルではないだろうし。
しばらくしてギースさんが、迎えに来てくれた。坑道を見て少し驚いていたけど、角度的によく見えないはず。あまり掘り進んでいるのが分かると、厄介かも知れないしね。
馬車に乗り込むと、私とアルフさん以外はすぐに眠ってしまう。皆さんお疲れ様です。ノゾミはマリ先輩にくっついて寝ている。一体何時間寝てるのかな? ショウは馬車の上を旋回しながらついてきている。
「アルフさん、眠くないんですか?」
「大丈夫だ。これくらいならな。一晩くらいなら採掘できるぞ」
さすがドワーフ。
「どれくらい採れましたかね」
「そうだな。手応え的には、魔鉄が多い感じだな」
とりとめのない会話をしながら、何故か、穏やかな気分。
不思議。
しかし、アルフさん、いい人だね。私の大して面白くない話に相づちしてくれる。
あ、いけない。いくらドワーフとはいえ、きっと疲れてるはず、おしゃべりやめよ。
「どうしたルナ? 急に黙りこんで? 疲れたか?」
アルフさんが顔を覗き混んでくる。近いって。
「いえ、大丈夫です。アルフさん、疲れているのに、私が話すと答えてくれるから」
「なんだ、そんなことか。儂は大丈夫だぞ。気にするな」
頭をポンポン。本当にいい人だね。
読んでいただきありがとうございます
別に不定期更新のお話始めます。