鉱山②
帰って来て二日後の朝、私達は鍛治師ギルドの前にいた。
今日から鉱山の町、ドラザールに向かう。魔法馬なら片道5日だ。往復と採掘で二週間を予定している。初めて長く屋敷を空けるため、リツさんはホリィさんにいろいろ渡していた。アンナとクララはリツさんにぎゅっと抱きつく。
「リツ様、早く帰って来てね」
あんな風に言われたら、頷かないわけない。
「大丈夫よ、お母さんのいうこと、よく聞いてね」
ルドルフはホリィさんが抱え、いやいやとぐずっている。手がかかる時期だなぁ。
今回は全員だ。
装備品も増えた。
リツさん、マリ先輩、ローズさんのグレイキルスパイダーは付与は私達と基本的に一緒で、リツさんのは水の中の水属性補助で淡い水色、マリ先輩は中の土属性補助、アルフさんのマントと同じ色だ。ローズさんは中の雷属性補助、私より深い緑のマントだ。
後は全員分の丈の長いシャツ。横にスリットが入り、動きやすい。付与は中の魔法防御、衝撃吸収、自動修復。空調管理、魔石がもうないらしい。属性付与は後日となる。もう、十分だけどなあ。
バルハさんとおじいちゃんドワーフダビデが出てきた。
「副ギルドマスター、枷はどうなった?」
「ほっほっほっ。あんな枷、1日で外せたわい。今日あたり、ミュートから獣人達が出発予定だ」
すごい、アルフさんが四苦八苦しては枷を外せるなんて。きっとすごい人なんだろうね。また豆を頂きました。
バルハさんが、魔法馬の手綱をアルフさんに渡す。
「アルフ、気をつけて行けよ。お嬢さん方もくれぐれも気をつけてな。荒くれものも多いが、気のいい連中だ。何かあれば儂かダビデ爺の名前を出せ、そうすれば大概の事はなんとかなる」
流石ギルドマスター、副ギルドマスターのネームバリュー。
「バルハさん、魔法馬ありがとうございます」
リツさんが、お礼を言ってる。
「何、ミュートの仕事は本当に助かった。インゴットができたら頼むな」
「はい」
荷台にリツさん、マリ先輩、ローズさん、アーサー、ノゾミが乗り込み。馭者台にはアルフさんに私。ショウは並走するようだ。
バルハさんとダビデさんに見送られ、トウラを出発した。
順調に馬車は進み、トウラから出て二日後、宿場町到着。
グリフォンのショウには、驚かれた。町中ではおとなしくマリ先輩特製リードに繋がれているのを見て、大きな騒ぎにはならなかった。
「ママ~。あれ鳥さん?」
「ダメよ近づいたら」
うん、こんな反応だよね、普通。
ショウも泊まれる宿は、大所帯用のコテージしなかく、太っ腹リツさんが一括で支払い。
夕方だが、マリ先輩がローズさんと共に冒険者ギルドへ。途中とショウが捕ってきた魔物の解体を依頼のためだ。成長が早いのか、ショウの能力が高いのか。馬車と並走するように低空飛行し、いきなり上昇したと思ったら、急降下し角ウサギやレッドティアや、ボアまで捕ってきた。まあ、マリ先輩が誉める誉める。リツさんも誉める誉める。
「うふふ、唐揚げね。串焼きもいいかな」
「野菜と一緒にオーブン焼きもいいわね」
白眼向いた魔物を前に、お花を飛ばす二人。
なんだろう。なんか、違う気がするけど、まあ、いっか。
冒険者ギルドには、私とアルフさん、ショウも着いていく。
ざわざわされましたよ。久しぶりだ。
「グリフォンだ………」
注目の的のショウは知らん顔だ。
マリ先輩とローズさんは買い取り窓口へ。
ローズさんのマジックバックから、ショウが捕ってきた魔物を出す。
「お肉だけ、引き取りたいのですが。明日までに出来ますか?」
「承知しました。明日の午前中には出来るかと思います」
「お願いします」
問題なく終了。
でも、長居は無用。
コテージに帰る途中も「あ」みたいな感じだったが、気にしていられない。
「ただいまリツちゃん」
「お帰りなさい。ご飯の準備できてるわよ」
いい匂い。
今日はシチューだった。アーサーは同じ食卓に座るのを、拒んだが、リツさんの輝くような笑顔で。
「アーサー君、一緒に食べましょう」
「はい、リツ様」
アーサーが逆らえるわけない。
みんなでいただきます。
次の日、お肉を受け取る。その前に小さなマルシェで、新鮮な取れたて野菜を買い込んでいたけど。
ドラザールに向け出発。一応道中、盗賊とか出ないか聞いたが、今のところないらしい。鉱山を繋ぐ唯一の道で、時折出たらしいが、去年大掛かりな討伐が行われたらしい。まあ、油断できない。魔物はゴブリン、ウルフ系かグリズリー系が時折、角ウサギ多数、オークも出るらしい。
「トンカツ、トンカツ」
マリ先輩が変な掛け声かけてる。隣のローズさんが悟りの表情。
アーサーが私に聞いてくる。
「普通女性って、オークなんて嫌うんじゃないですか?」
「ダメよ。ローズさんのあの表情見なさい。受け入れないとダメよ」
「はあ…」
首を傾げるアーサーと荷馬車に乗り込む。
私はアルフさんの隣。無心に座る。
ショウが低空飛行で着いていく。それのおかげか魔物と遭遇することはなかった。
うーん、あくびが出そう。
「見えてきたな」
あくびを噛み殺していると、アルフさんが示した先に広がる町並み。背には広がる山並み。
鉱山の町、ドラザールだ。
思ったより早く着いた。
トウラより小さな町だが、ぐるりと囲む塀。門で全員が冒険者ギルドカードを提示。アルフさんは鍛治師ギルドカードも提示。ショウとノゾミが並ぶと、門番は目をしぱしぱしていた。
「そのグリフォンは大丈夫ですか? 人を襲いませんよね?」
「はい、大丈夫です」
笑顔でショウのリードを握るマリ先輩。すりすりとマリ先輩にすり寄るショウ。ノゾミは相変わらずかわいい声で、ぼんぼんのついたしっぽを振っている。
「大丈夫みたいですね。どうぞ、ようこそドラザールへ」
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