鉱山①
夕方前にトウラに到着。
城門を抜け、まず、鍛治師ギルドへ。
おじいちゃんドワーフダビデさんが、ニコニコお出迎えしてくれたが、からくりの枷で見て片眉を跳ね上げた。私はマジックバックから出したからくりの枷は合計9個。
「副ギルドマスター、いけそうか?」
アルフさんが聞いている。後ろでアーサーが心配そうに聞いている。あの三兄妹を想っているんだろうな。
「ほっほっほっ、任せておけ。三日もあれば外せるようになるさ。アルフや、お嬢さん方、大変だったな、ゆっくりお休み」
良かった。アーサーもほっとした顔だ。
バルハさんが、やって来る。
「アルフ、魔法馬は明日1日休ませるから、明後日から貸し出すぞ。いいか?」
「助かる。明後日の朝、伺う」
私は残っていたリンゴと洋梨を上げると、もりもり食べていた。お疲れ様。また、よろしくね。
「ルナ、帰るぞ」
「はい」
ぐずぐず言うマリ先輩とそんなマリ先輩に寄り添うショウを連れて屋敷に戻る。
一週間振りの屋敷だ。
「お帰りなさい」
リツさん、ローズさん、ノゾミ、ホリィさんが出迎えてくれる。
「ただいま戻りました。マリ先輩がショウに乗って空飛んでました」
「ルナちゃんッ? ばらしたねッ あっという間にッ」
「…………………マリ様」
地を這うようなローズさんの声。ひぃ、怖い。
「ロ、ローズ?………」
「少し、お話致しましょうね」
「助けてー」
スルー。引きずれてマリ先輩がローズさんに連行される。オロオロしながらショウも着いていく。
「メエメエ~」
ノゾミまで着いていく。
あーあ、やっぱり。
ぽかん、と見送るリツさん。こほん、と息をつく。
「とにかくお帰りなさい。無事で良かったわ。さ、お腹減ってない? 先にお風呂にする?」
あ、お風呂がいいなあ。ここに住むようになってお風呂が当たり前になっているので、ミュートのたらいのお風呂では物足りなくなっていた。贅沢になってきたなあ。
「お風呂に入りたいです」
「儂も」
「じゃあ、ホリィさん、お風呂の準備を」
「畏まりました」
ホリィさんがすっと風呂場に向かう。
リツさんに、ミュートで手に入れたオークの肉を渡す。自室に戻り荷物を置いて、着替えの準備をする。
ちょっと心配してマリ先輩の部屋の前に行くと、ノゾミの「メエメエ」鳴き声しか聞こえない。まあ、お灸を据えてもらおう。
私は風呂場に向かう。途中でアルフさんが、こそっと私を手招きしたので、ちょっとドキドキしたが、顔には出さず応じる。
「何ですか?」
「ああ、アーサーの今回の件だ」
なんだ、あの事か。
「勝手に持ち場を離れた事ですか?」
「リツには、黙っとおいてやれ。本人もこたえておるようだし、アーサーの性格なら、自分からリツに言うだろうしな」
「そうですね。分かりました」
隠し事出来なさそうだしな、アーサー。
「あの、お風呂の準備が出来ました」
こそこそ話していると、ホリィさんがおずおずと声をかけてきた。
「ルナ、先に入れ。儂は後で入る」
「はい、じゃあ、お先に」
私はザブッとお風呂を済ませる。ああ、やっぱりここのお風呂が最高だ。一息ついて終了。ああ、気持ちいい。
お風呂から上がって、アルフさんに声をかける。
頭をタオルで拭いていると、ローズさんがやって来た。
「ルミナス様、こちらへ」
「あ、はい」
マリ先輩はどうしたんだろう?
頭をドライヤーで乾かしてもらい、台所に行くと、しゅーん、としたマリ先輩。足元にショウとノゾミが寄り添っている。
ありゃ、絞られたな。なんて思って、ちらっとローズさんを見ると。
「途中でショウとノゾミがマリ様をかばうので、あまり強く言えませんでした」
らしい。こんこんと諭してしたら、ショウがマリ先輩の前で伏せ、ノゾミがローズさんの足にすがり付いて来たので、終了したらしい。
アルフさんもお風呂から出てきて、夕飯です。
いただきます。
中央の大皿に私の大好物のコロッケがずらりと並ぶ。
「普通のコロッケとカボチャのコロッケ、肉じゃがコロッケよ。これはメンチカツ、こっちにはチーズ入っているわ」
「いくつでも食べれます」
きりっ
さっと普通のコロッケを自分の皿に移す。オーロラソースをつけて、ぱくり。
くうっ、美味しい。じゃがいも美味しい。オーロラソースが合う。
「肉じゃがコロッケは味がしっかりついてるから、そのままでも美味しいわよ」
リツさんが説明してくれる。
「はい、いただきます」
きりっ
肉じゃがコロッケを自分の皿に、そのままぱくり。あ、確かにしっかり味が、醤油味がついてる。あ、こっちも美味しい、ご飯がすすむ。ぱくりぱくり。
「このチーズが入ったメンチカツ、旨いな」
アルフさんも美味しそうに食べている。
次、それにしよう。
「所で盗賊達はどうなったの?」
リツさんが聞いてくる。
アルフさんと、ちらっと視線を合わせる。
「えっと、ですね………」
アーサーの件を伏せて奴隷狩りの盗賊の説明。
「まあ、じゃあその人達はどうなるの? 住む場所もなくなったのに」
「トウラの辺境伯が保護するでしょうね。一緒にいたビルツさんって騎士から聞きました。あの方なら、悪い対応はしないだろうって」
「そうなのね、良かった」
ほっとしているリツさん。やっぱり優しいなあ。
それから、アルフさんの指名依頼、『ハーベの光』の事などの話になる。
「マルコフさんには、そのうち礼をせんとな」
「どうするんですか?」
マリ先輩が、足にすがり付いてきたノゾミを撫でながら聞く。
「うーん、どうしようか迷っている。指名料を減らすなんていかんしなあ」
「じゃあ、また、家にお食事ご招待しません?」
リツさんが提案。
「儂、あまり料理は得意ではないんだがな」
「私達で用意しますよ。うちのアルフさんがお世話になったし。あ、メインにブラッディグリズリーのワイン煮込みを出してもいいですか?」
「それは、構わんが。なんか悪い気がするなあ」
「気にしないでください。いつ頃戻って来ますかね?」
「さあ、聞いた話から2~3週間後だと思うぞ。遅くても、今年中には戻って来るはずだ」
「鉱山から戻って来た後で、がいいですね」
今回は何がいいかしらと、リツさんとマリ先輩が話し出す。
「なあ、厚意を受けていいと思うか?」
アルフさんが私に聞いてくる。
「いいんじゃないんですか? 二人ともノリノリですよ」
「いいんかな?」
私はカボチャコロッケを自分の皿に乗せた。
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