表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/386

納品③

騎士団

 ミュートには夕方到着する。

 トウラにも負けない城塞都市だ。

 騎士団にギルドマスターとマルコフさんが、説明する。途中でアルフさんも呼ばれる。

 しばらくして戻って来る。

 中年の騎士が着いてきた。

「明日、盗賊のアジトに攻め混むと。で、アーサーに手伝って欲しいって。まあ、主人のリツと今、冒険者ギルドから連絡はいっとるから、もしリツから許可出なければダメだがな」

 クレイハート製の通信用魔道具ね。

「自分ですか? お役に立てますかね?」

 中年の騎士はアーサーの奴隷紋を見て、一瞬迷う。

「私は今回指揮を取る、ヴェルサスだ。君は闇魔法が使えるようだな。あの盗賊にアジトの案内をさせるために、力を貸して欲しい」

 奴隷相手でも丁寧な対応。

 アーサーは考えて返答。

「リツ様の許しがあれば、自分でよければお手伝いします」

「感謝する」

 一旦、ヴェルサスさんは戻り、私達は鍛治師ギルドに向かう。

 荷台から荷物が降ろされ、運び込まれる。バルハさんがサインして、やっと納品が終わる。

「なんか、大事になったね。アーサー君大丈夫?」

 バーンが心配そうに聞いてくる。この人、根はいい人なんだね。

「はい、大丈夫です」

「まあ、リツが無茶なことはさせんだろう」

 そうね、リツさんなら、軽く行ってこいとか絶対言わない。行くと許可を出しても、多分私かアルフさんが同行が条件に出すだろう。

 バルハさんが手配した宿に入る。私は一人部屋、アルフさんとアーサーは二人部屋。宿の受け付けの人はアーサーの奴隷紋にいい顔はしなかったが、鍵を渡した。食事は付いていたが、お断り。奴隷は食事の為に食堂に入れないからね。それにリツさん達から持たされたお弁当の方が断然美味しいし。

「すみません、夕食、自分のせいですよね、すみません」

 しきりに謝るアーサー。

「気にするな。リツ達の弁当の方が旨いしな。さ、頂こう」

 アルフさん達の部屋に私が合流し、マジックバックからお弁当を出す。

 おにぎりに生姜焼、リツさん特製腸詰め、卵焼き、白身魚のソテー、カボチャのサラダ。うん、豪華。

 お昼もそこそこだったし、お腹ペコペコ。

 食後にお茶と、マリ先輩のアップルパイを頂く。

 ああ、美味しい。

 片付けて、さあ、どうしようかと話していると、宿の従業員が呼びにきた。ロビーに降りると若い騎士がいる。

「ミュート騎士団、ビルツです。ヴェルサス隊長からの言付けを預かって来ました」

 一礼する。

「トウラのサイトウ殿から奴隷アーサーの作戦参加の許可をいただきました。ただ、アルフレッド殿とルミナス殿の同行が絶対条件ということですが、アルフレッド殿は貴方でよろしいでしょうか?」

 若い騎士、ビルツがアルフさんを見上げる。

「ああ、儂がアルフレッドだ」

「ルミナス殿は?」

 手を上げると、ん? みたいな顔。まあ、しょうがないよね、いざ、グラウス・バッシュ。私は冒険者カードを出すと、見比べられられた。

「失礼しました」

「いいえ」

「明日の参加、よろしいでしょうか?」

「儂は構わん。ルナは?」

「私も問題ありません」

「では、明朝。あ、最後にサイトウ殿から伝言です。『気をつけて、必ず、皆帰って来て』とだそうです。いい主人ですね」

 ビルツはそう言うと、アーサーははみかむ様に笑う。

「はい」

 一礼して、ビルツは帰って行った。

「さ、明日の為に休むか」

 アルフさんが私とアーサーに声をかける。

 アーサーは少し不安そうだったが、私は肩を叩く。

「何が不安?」

「自分が役に立てるか不安で…」

「なんだ、そんなこと。アーサー、君は優秀。大丈夫、大丈夫よ」

「ルナさん…」

 私が笑う。アルフさんもアーサーの肩を叩く。

「そうだな、お前は、儂らの期待に応えている。想像以上には。何も心配するな。それに儂らも一緒に行くんだ。心配するな」

 アーサーがちょっと泣きそうだ。

「さ、明日に備えて寝るぞ。ルナ、お休み」

「はい、お休みなさいアルフさん。アーサー、お休み」

「はい、お休みなさいルナさん」

 私達は、それぞれの部屋に戻り、明日に備えて就眠した。


 次の日の朝、早起きして、アルフさんの部屋で朝食を採る。

 マリ先輩特製のバケットに、野菜やチーズ、ハム、卵、様々な具材の挟まったホットドッグだ。なんだろう、魔物の名前みたいだけど、食べると美味しい。カボチャのスープ付き。

「さ、アーサー、しっかり食べて」

 私が緊張気味のアーサーにホットドッグを渡す。 

「あ、ありがとうございます」

 私もせっせと食べる。

 カボチャのスープ、自画自賛だけど、美味しい。リツさんのレシピ、完璧だ。

 朝食を食べて、準備して、ロビーで待つ。

「おはようございます。準備はよろしいですか?」

 ビルツがやって来て、私達は城門近くの詰所に。

 昨日の盗賊が縛られている。

「俺は何も話さないぞッ」

 殴られた後があるけど、吠える盗賊。かなり気がたってる。

 私達を見ると牙を剥かんばかりの顔だ。

 ヴェルサスさんが、渋い顔で、アーサーに聞く。

「ある程度の場所は分かっているが、地下となると案内がいる。闇魔法で、こいつをなんとか出来るか?」

 かなり興奮しているから、効かないかも。

「ちょっと、自信がありません。昨日はアルフさんやマルコフさんが追い詰めてくれたから、なんとかなりましたけど」

「痛め付けても、こうだからな」

 ヴェルサスさんが、更に渋く困った顔。

「何も痛みだけが、追い詰めるわけではなかろう?」

 アルフさんが前に出る。

「時間が惜しいだろう? ちょっとやってもいいか?」

「何をする?」

 更に渋い顔のヴェルサスさんにアルフさんはゴニョゴニョ。頷くヴェルサスさん。

「アーサー、準備してろ」

「はい」

 アーサーは薙刀を構える。

 アルフさんは、盗賊の前に立つ。

 ゆっくり、アルフさんを中心に空気が凍りついて行く。

 ああ、これ、殺気だ。

 周りの空気を、震わせる程の殺気。

 普通、こんなに明らかな殺気なんて出せるのは、よほどの高レベルじゃないと無理。アルフさんのレベルだと、ちょっと厳しいはずなのに。何かからくりありそう。

 ………でも、本当に怒らせたらいけない人だね。

 盗賊の顔から、血の気が、引く。

 あら、漏らしましたね。

「ダークマインドコントロール」

 アーサーの薙刀の先から、闇の霧が流れる。

 盗賊の目から光が失われる。

「よし、アーサー、よくやった」

 アルフさんから出ていた凍りつく空気が、なくなり、いつもの顔で振り返る。

 ヴェルサスさんが、驚いた表情だ。

「なんて殺気だ。君は一体」

「秘密だ」

 アルフさんは答える気がない。

 ぐったりした盗賊を数人の騎士がかかえる。

 外に出ると、魔法馬がずらりと並ぶ。あれで移動か。二頭立ての荷馬車もある。盗賊は荷馬車に放り込まれる。昨日の状況から、2~3時間はこのままだ。覚醒する前に、再び魔法を発動する予定、まあ、また精神的に追い詰めてからだけど。自決でもされなら、いろいろわからなくなるし。

「馬に乗れるますか?」

 ビルツが聞いてくる。

「まあ、一応。ルナは?」

「乗れます。アーサー、私の後ろに乗って。腰に手を回して、しっかり持ちなさいよ。振り落とされたら大怪我ではすまないからね」

「いや、儂の後ろに」

「重量オーバーでしょ」

 何故か、ぐさり、みたいなアルフさん。

 だってあの背丈に、あの筋肉だよ、絶対私の倍は体重あるはず。

 いくら魔法馬でも、少しでも軽い方がいい。

 栗色の魔法馬を貸してもらい、鞍に跨がる。アーサーを引き上げて、おっかなびっくり私の腰に手を回す。アルフさんは黒い馬だ。

 バルハさんとマルコフさん『ハーベの光』が見送ってくれる。

「アルフ、嬢ちゃん、坊主、気を付けてな」

「俺達は昨日の盗賊回収に回る。アルフ、大丈夫だと思うが、気を付けて、ルナ君、アーサー君もな」

 マルコフさんにも言われて、私達は頷く。

 城門が開き、ヴェルサスさんを先頭に、私達を乗せた魔法馬が駆け出した。

読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ