情報①
お土産
夕方前にアーサーが冒険者ギルドに『ハーベの光』『紅の波』を迎えに行く。
テーブルクロスをかけて、摘んできたお花を飾って、カトラリーを確認する。準備、大丈夫。
本人リツさんもマリ先輩も、ふわっとしたワンピースです。シンプルですが、とてもお似合いです。ローズさんは詰襟ワンピースです。似合います、白いエプロンつけたら、完璧なメイドだ。私のワンピースには何故かリボンがついてます。なぜ? そして、ローズさんによってヘアメイク、ワンピースと同じリボンつき。…いつ、作ったんだろう?
よし。と、手を叩きあう、三人。
何がよしなのよ。着られてる感、半端ないけど。
「似合うぞ、ルナ」
私を見たアルフさんが言う。あ、恥ずかしい。アルフさんに言われると余計に。
今日のアルフさんはリツさん達が作ったシャツとズボンだ。足、長いなあ。デザインはローズさんらしい。
「あ、いらしたみたい。ホリィさん、今日は大変ですけどお願いしますね」
「お任せくださいリツ様」
ホリィさんはきちんとメイド服を着こなし、ピシッと髪を結い上げている。アンナとクララ、ルドルフは部屋。きっと今頃新しい積み木に夢中だろうな。
リツさんが玄関の水晶を見て、玄関に向かう。マリ先輩とローズさん、私とアルフさんも。
「リツ様、皆様をご案内してきました」
アーサーが玄関の扉を開けてご案内。
「お招きありがとう」
マルコフさんが、先頭にして『ハーベの光』が入ってくる。後ろには『紅の波』だ。うん、全員、呆気に取られた顔。
「立派なお屋敷だね」
フレナさんとサリナが同じ動きでキョロキョロ。
リツさんが土禁の説明。首で傾げていたが、家主のリツさんが故郷の風習と言うとスリッパに履き替えてくれた。
「リツ君、これ、受け取ってくれ」
「あ、私達からも」
マルコフさんとフレナさんが、リツさんに何が手渡している。
どうやら手土産みたいだ。
「まあ、なんだか、逆に気を使わせてしまって」
「いいんだよ、受け取って頂戴」
マルコフさんからはドライフルーツの詰め合わだ。藤のかごには、レーズンやプラム、杏子、ブルーベリー、クランベリー、オレンジが陶器の器に入っている。フレナさんからはハーブの詰め合わせだ。パセリ、ローリエ、バジル、セージ、レモングラス、ローズマリー。こちらも陶器の器に入っている。
うん、入れ物も綺麗だから、高かったろうな。
「ありがとうございます。アーサー君台所に運んでもらえる?」
「はい」
アーサーが受け取り、台所へ。
「皆さん、こちらへ」
リツさんが食堂にご案内。
「アルフ、足長いね」
バーンが羨ましそうに言う。
「背があるからな」
「リーダーも同じくらいだけど、腰の位置、いだっ」
げんこつ一発。誰からって? マルコフさんですよ。
本日はみんな軽装だ。フレナさんもちょっときつい顔立ちだけど、綺麗なお姉さんみたいだし、何故かエレは普通の服なのに仄かな大人の色気あるし。ララは印象変わらないけどね。マルコフさんはきちっとしたシャツで、どこかのお偉いさんみたいだ。
食堂前でノゾミがお出迎え。
「メエメエメエ~」
上機嫌だ。
一通り撫でられ、アーサーが連れていこうとすると、いやいやと踏ん張る。か、かわいい。
一応従魔とはいえ、食堂に入れるのはね。私達は普通に一緒だけど、嫌な人いるかもしれないからね。
「俺達は気にしない、なあ、みんな」
「私達もよ。特にグリフォンのショウ君には助けてもらったし」
それぞれのリーダーの言葉に一名を除き、全員頷く。バーンですよ、散々つつかれ(自己責任)、パンを取られ、若干抵抗気味。しかし、マルコフさんの無言の圧と、アルフさんのいい笑顔で、しゅーんと了承。
「メエメエ~」
わかっているのかどうか、わからないが、ノゾミがバーンの足にすがり付く。
「ノゾミちゃん、慰めてくれるの? うう、かわいいなあ」
バーンが撫で撫で。
「皆さん、どうぞ、お好きな席に」
リツさんが食堂のドアを開けて、全員入り、なんだかんだと着席する。
「失礼します」
タイミングよく、ホリィさんが飲み物をワゴンに載せて、食堂に入ってくる。
「お酒飲まれる方は?」
リツさんが聞く。
「え、アルフ、飲まないんでしょ? いいの?」
バーンがちょっと遠慮して聞く。
「儂は自分が飲まなければいいんだ、気にするな。逆に気を使うからな」
「そう? なら、一杯だけ…」
『ハーベの光』は全員、『紅の波』はエレとキャリー。木製だけど、綺麗に作られたワイングラスに注がれる。残りはジュースです。
「では、皆さん、この度はありがとうございました。たいしたおもてなしではないかもしれませんが、ゆっくりしていってください」
リツさんの挨拶で乾杯。
アーサーとホリィさんが配膳に入る。本日のアーサーは白いシャツに黒のベスト、黒のズボン。ギャルソンみたい。
「うわあ、凄い」
並べられた前菜に『紅の波』から歓声が上がる。良かった好評だ。綺麗に並べて良かった。
テーブルの中央にはパンかご。結局、ルヴァンにロールパン、小型のカンパーニュが並ぶ。ジャム付きです。
はい、いただきます。
「この卵、綺麗ね、食べるが勿体ないわ」
「そうね」
フレナとサリナが嬉しそうに言ってパクパク。
「この腸詰め、めっちゃ旨いんだよなぁ」
「うん」
イレイサーとバラックは腸詰めをぺろり。
「まあ、エビだわ。私大好物なの」
「この野菜の巻いてあるの、美味しいわ。見た目も素敵」
キャリーが満面の笑顔を浮かべ、エレは色っぽい表情。
「がふがふがふがふ」
ララはひたすら無言で食べてる。カンパーニュにジャムたっぷり塗って、頬張る頬張る。
「ちょっとショウ君、僕の後ろで待機するの、やめてくれない? 食べづらいから」
ショウはバーンの後ろに陣取り、ひたすら見ている。うーん、グリフォンにあんなに見られたら、食べづらいよね。でも、今日はつついてないよ。なんで陣取っているかって? 配膳時、ホリィさんに「なんて美しい人だ、僕バーン、ごふぅっ」マルコフさんとアルフさんのげんこつ飛びました。
で、アルフさんがショウに陣取り指示を出したのだ。
……………主人、マリ先輩だよね?
スープも運ばれる。
「しかし、豪華な食事だな。まるで貴族にでもなった気分だ」
ワインで少し顔に赤みがあるマルコフさんが、楽しそうに言う。
食事は穏やかに進み、会話が弾む。
ワインももう一本開けられる。
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