殲滅⑦
分け前?
朝。
いい匂いで目が覚める。
「ん~」
「ルナ、起きたか?」
あ、いかん、アルフさんに寄りかかって寝てた。
「す、すみません…」
「いいさ」
体を起こすと、あちこち痛い。アルフさん、体硬いなあ、あんな腹筋だったしね。寄りかかって寝てて申し訳ないないけど。首、バキバキだ。
あ、今頃、ちょっと恥ずかしい。眠くて言われるまま、横に座ったけど、そのまま寝てしまった。寄りかかったまま。うわあ、恥ずかしい。アルフさん、迷惑だったろうな。帰ったら、肩、お揉みします。
「ルナちゃん、おはよう」
「あ、おはようございます」
マリ先輩が声をかけてくれる。
「メエメエ~」
ノゾミが駆け寄ってくる。手をはみはみ。
かわいいなあ。
「ちょうどご飯の準備出来たわよ」
あ、何も手伝ってない。
「すみません、手伝ってなくて」
「いいのよ」
リツさんが優しく笑ってくれる。
「皆さんも、どうぞ」
本日の朝はトウモロコシが練り込まれた白パンに、カボチャのスープ。スープはカップにはいって渡される。リツさん特製腸詰め付き。
「なんだかすまない。頂いてばかりで」
マルコフさんが申し訳なさそうな顔。
「いいえ、気になさらないでください」
リツさんがスープを配る。
いただきます。
「甘い、このスープ、甘い」
「本当、甘い、美味しい」
エレとララが甘いと連発。
確かにこのカボチャのスープは、ホリィ一家にも大好評だしね。うん、リツさんのレシピはなんでも美味しい。ずー。
「この腸詰め、めっちゃ旨い」
「ああ、旨い」
イレイサーと無口なバラックは、あっという間に腸詰めを食べる。
ポトフに入っても美味しいですよ、パリッ。
「ちょっと、ショウ君やめて、僕のパンなくなるから」
今日はバーンに狙いを定めて、ショウがパンを横からつついている。無視しましょう。
朝食後、鞘を回収し、出発。
「取り分、か?」
アルフさんとマルコフさん、フレナさんが話ながら歩いている。
「そうだ、俺たちとフレナ達は調査依頼料が貰える。だが、あれだけのゴブリンだ、かなりの額だからな」
「引き取り割合決めといた方がいいわ。アルフ達が上位種倒したようなものだし」
「うーん、どうするか。リツ、どうする? 儂、こういった交渉は苦手でな」
「はあ」
結局、リツさんが交渉に。
「まず、キングとクイーン、ジェネラルは君たちのものだ。アルフやルナ君の援護なければ、ジェネラルは倒せなかったしな」
「そうね、私達はジェネラルは辞退するわ」
え、ジェネラルは『ハーベの光』が二体『紅の波』が一体倒したのに?
「そう言うわけにはいきませんよ」
リツさんが交渉開始。
「こうして無事に帰れるのは、皆さんのお陰だし」
確かにね。
結局。
上位種の魔石をすべてこちらで引き取る代わりに、ジェネラルの二体は『ハーベの光』一体は『紅の波』となる。他のゴブリンナイトやルーク、ポーン等は三等分。
なんとか交渉終了した頃に、魔の森を抜ける。
最後までフレナさんが、ジェネラルを拒んだが、リツさんの押しの強い笑顔で押し付けるた。多分、かなりの魔石が手に入るから。
やっとこさ、城門にたどり着き、冒険者ギルドに直行。
ギルドに着くまでに、リツさんが私とアーサーに聞いてくる。
「二人は大活躍だったからね。何か好きなの作って上げる。何がいい? なんでもいいはダメよ」
「えっと、あ、じゃがいものグラタン、マリベールで作ってくれたマッシュポテトとミートソースの」
「ふふ、分かったわ。アーサー君は?」
「自分ですか? え、えっと、シチューがいいです。リツ様の屋敷で初めて食べたシチューが」
「分かったわ。任せてね」
バーンとララが羨ましそうな顔で見ている。
うふふ、いいだろう、羨ましいだろう。
なんだか、私のことで胸を張るマリ先輩を気持ちが分かる気がする。
冒険者ギルドに入り、報告窓口へ、マルコフさんとフレナさん、リツさんが向かう。リツさんのアイテムボックスにゴブリン入れているからね。三人はすぐに倉庫に案内され、私達はギルドの奥、広い部屋に案内される。
しばらくして、三人が部屋に来る。オルファスさんと、白髪混じりの女性と共に。わあ、白髪混じりでそこそこ年だろうけど、綺麗な人だな。
「ここのギルドマスターだよ」
バーンが教えてくれた。
「お疲れ様、大変な目にあったね。私はトウラの冒険者ギルドマスター、シェラよ。全員無事生還したことは喜ばしいこと。よく、戻って来てくれた」
一息つくギルドマスター、シェラさん。
「かなりの数だから、査定は明後日になる。依頼の成功報酬は今日、窓口で受け取っておくれ。そしてランクに関しても明後日、正式に伝える。いいかい?」
全員頷く。
「ところで、ゴブリンキングを倒したのは、誰だい?」
う。
一斉に視線が集まる。
「確かJランクだったね。ちょっと、いいかしら?」
別室に連行されそう。あ、やな予感。どうしよう、腰に下げてる二代目で倒したって言っても信じて貰えないだろう。キングの体に、二代目は刃が立たなかった。あの規格外の最後の剣だから、キングの体の中でも最高硬度の骨まで断ち切れただけだ。多分、私自身のレベルや魔力系スキルが高ければ、二代目でも対抗できたんだろうけど、あの時点では、あれが精一杯だった。
押し黙る私。
「あの、ルナちゃん、今日は疲れていますから。後日にしてもらえませんか?」
マリ先輩が、さっと私の前に立つ。
「そんなに時間は取らないよ。確認したいことが一つあるだけだから」
「ルナちゃんはまだ未成年です。保護者として私達もお話しを聞きます」
リツさん、いつから保護者に? ま、いいか、家主さんだし。
シェラさんがどうしようかと、考える。
「確か、キングを倒したのは誰かと共闘だったね」
「儂だ」
「私です」
アルフさんとローズさんが前に出る。
「じゃあ、三人で来てくれるかい? なら、いいだろう?」
一人でないなら、大丈夫かな。私とアルフさん、ローズさんは、シェラさんに別室に移動。
単刀直入に聞かれた。
「キングの首をどうやって切り落とした? アルフレッドだったね。あんたの槍ではないだろう?」
だよね。そうだよね。
アルフさんの魔鉄の槍の穂先、派手に欠けているし。
私はスキル、未成年を発揮。そっとアルフさんの後ろに隠れる。ローズさんも寄り添ってくれる。
「すまんな、ギルドマスター、ルナは疲れておる」
アルフさんが庇ってくれる。
ため息をつく、シェラさん。
「魔鉄の武器が歯が立たないものを切り落とす業物を、その子が持っているんだろう? 誰かに話すわけはないから、話すだけでいいんだよ。ただ、把握したいだけだよ。今回みたいな時に、討伐を依頼したいときに参考にしたいんだよ」
なれほど、でも、見せられないし、話せない。ドワーフの国宝以上の武器あります、なんていえない。
多分、ミュートの件もあるだろう。スタンビードを恐れがあるらしいし。
だけど、見せられない。アルフさんだって、見せるくらいなら、なんて言わないしね。
私は黙ったままアルフさんの後ろから動かない。
長い沈黙の中、折れたのはシェラさん。
「嫌われたね。まあ、いいか。とにかくお疲れ様、帰ってゆっくり休みな」
ほ、良かった。
リツさん達が待つ部屋に戻ると、心配された。大丈夫ですよ。
明後日の朝に再び冒険者ギルドに集合することになり解散。
私達はホリィ一家が待つ、屋敷に戻った。
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