殲滅④
キングとクイーン
白い線の内側から、ゴブリンがわらわら出てくる。下位種のゴブリンが主だが、ポーン、ナイト、ルークもいる。
大人しく出てくるのを待つわけない。
「はッ」
私は一歩前に出て、衝撃斬刃。半数は倒した。無事な個体はほぼいない。
地響きが続く。
「来るぞッ」
アルフさんが槍を構える。
視線の先の森から、新たなゴブリン達が飛び出してくる。
確認前に、衝撃斬刃をもう一発。
ただ、甘かったみたいだ。倒せたのは数体。
かなりの数のゴブリン。ポーン。ルークにナイトが多数、ジェネラルが三体、そしてジェネラルより更に巨体なキング。私より大きそうな棍棒を持っている。
「アースランスッ」
「ストーンマグナムッ」
「ウォーターバレットッ」
「ストーンバレットッ」
アルフさん、マリ先輩、リツさん、アーサーの魔法が迎撃。
「ファイヤーボールッ」
「ウィンドカッターッ」
キャリーとイレイサーの魔法も放つ。
「ぴいいぃぃぃ」
ショウも風の刃を飛ばす。
「サンダーアローッ」
一瞬遅れて、ローズさんの魔法も炸裂。
よし、かなり数が減った。
だが、ジェネラルにキングは残っている。
「ショウッ、クイーンを探してッ」
マリ先輩の指示で、ショウが空にかけ上がり旋回を始める。
私は二代目を構える。
「マルコフさん左翼を、フレナさん右翼をッ」
私は前世の記憶のせいか、指示を飛ばす。
「ルナッ」
アルフさんの声。
「ヒットアンドアウェイッ」
「上等ッ、アーサー、迎え撃てッ」
「はいッ」
身体強化された私は、ナイトやルークを抜けて、キングに接近。
足を斬りつける。
がつり
硬い、硬い。衝撃吸収あるのに、硬い。刃が、こぼれている。
巨体とは思えないスピードで、私の方にキングが振り向く。
そこに、アルフさんの槍が、棍棒を持つ腕の肘に突き刺さる。
「フレイムランスッ」
そのまま、魔法を発動。
爆音が響く、キングの腕があらぬ方に向く。巨大な棍棒を落とす。
「くっ」
しかし、槍は突き刺さったままだ。アルフさんは槍から手を離す。距離を置き、アルフさんは小型の斧をベルトから抜く。
私と、後方のローズさんの視線がかち合う。
撃て
私の口が動くと同時に、ローズさんの魔法を放つ。
「サンダーランスッ」
バリバリッ
ローズさんのサンダーアローの上位魔法が、キングを直撃。
一瞬、動きを止めるキング。
見逃すか、今なら、行ける、一撃なら、行ける。
「アルフさん、しゃがんでッ」
私は二代目を放り出しマジックバックに手を突っ込む。
しゃがんだアルフさんの肩を踏み台に、私はかけ上がる。
キングの汚い目が、私を捉える。
だが、遅い。
私はナリミヤ氏の最後の剣を引き抜く。
最後の剣はガタガタ暴れるような、魔力がとんでもなく乱れそうだが、そんなの関係ない。
私に、従え
一撃だけ、私に、従え。
私は剣を捩じ伏せる。
ゴブリンキングの首を振り抜く。
世界がゆっくり動く。
最後の剣が、ゴブリンキングの首を完全に斬り飛ばした。
私は剣をマジックバック内に手放す。
魔力吸収の付与のお陰か、枯渇しなかったが、ごっそり持っていかれる。
キングの巨体が倒れる。
「ルナッ」
膝を着いた私。
そこに、ルークが襲いかかる。
「ウィンドバッシュッ」
一撃、二撃、なんとか、防ぐ。
駆け寄って来たアルフさんが斧でルークの首をはねる。
残る武器は解体用のナイフ。私は迷わず抜く。
視界の隅で、アーサーが見事な動きで薙刀を振り回す。ポーンが切り裂かれ、襲いかかるナイト、ルークも問題なく対応できている。
リツさんとマリ先輩は、崩れ落ち、なんとか魔力回復ポーションを飲むローズさんを守る。
断続的にゴブリンが召喚されるが、数体のみで、その間隔が空き始めている。クイーンの魔力も、無限ではない。だが、逃がせば後々厄介だ。
ジェネラルの二体は『ハーベの光』、一体は『紅の波』が対応。しかし、劣勢だ。特に『紅の波』が。群がるゴブリンの数は圧倒的に『ハーベの光』だ。
アルフさんが近くにいた、ゴブリンを斧で始末し、キングに刺さったままの槍をなんとか引き抜き、私は二代目を拾う。槍の穂先はかけている、二代目は自動修復のお陰か、ほとんど元に戻っている。
アルフさんとアイコンタクト。
私は『紅の波』に向かう。
サリナが盾で必死にジェネラルな攻撃を凌いでいる。フレナさんとエレがわらわら寄ってくるポーン、ナイトに手こずっている。キャリーは魔力の残量が少ないのか、杖を振り回す。ララもナイフも振り回す。
私が向かうと、数体のポーンがこちらに向く。
もう、ポーン程度で驚かない。次々に斬り伏せる。キングの後だから、手応え、全くない。
ナイトも斬り倒し、ジェネラルの腹を切り裂く。崩れ落ちるジェネラルが頭に、サリナが剣を叩きつける。
「ぴいいぃぃぃッ」
旋回していたショウが急降下。次に浮上した時、一体のゴブリンを足にぶら下げている。再び急降下し、そのゴブリンを地面に叩きつける。多分、ゴブリンクイーンだ。キングより、レア個体。
これで召喚はない。
ショウは私の近くで、風の刃を飛ばす。
アルフさんが向かった『ハーベの光』は、一体のジェネラルを倒し、二体目のジェネラルに総攻撃している。多分、あっちが先に蹴りがつく。
私は気合いを入れ、残ったゴブリンを斬り伏せていった。
復活したローズさんがナイフを持ち参戦。マリ先輩とリツさんの援護でも危なげなく、残存ゴブリン達を次々に倒している。
キング、ジェネラル、最上位が倒した後は、あっという間に片付けた。
「最後だッ」
私は最後に残ったゴブリンナイトを、斬り伏せた。
読んでいただきありがとうございます
(祝)100話まで続きました