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独り占め

 翌日の部活で、和馬は聞きたくてうずうずしていた事を、佐々木に聞いてみた。

「誠、どうだった?カエル、やったか?」

「なんだよ、会って一番にその話かよ。」

「どうなんだよ?」

「・・・やってみたよ。」

「それでそれで?」

和馬は立ったままぐぐっと佐々木に詰め寄る。角谷が苦笑いしている。が、朴も含め、皆興味深々なのは間違いない。

「いやー、後ろから耳元でカエルやったら、あいつくすぐったそうにして笑ってた。」

くすぐったそうに?3人は天井を見上げて想像した。

「どう考えても嬉しそうじゃん?」

朴が言った。

「あれだ、誠。もうあいつにかまうな。それでいい。」

和馬は投げやりに言った。なんだかバカバカしい気がしてきた。部活には自分が連れて行けばいい。

「はいはい。」

誠もそう言って、その話は打ち切りになった。もう解決済みのような気分になっていた。


 ところが、そうでもなかった。

翌日の体育、これも1、2組合同だ。サッカーの授業で、1組対2組でゲームをした。和馬はキーパー、佐々木は相手チームのフォワードで、つまりポジションが近い。和馬はよく前へ出てシュートを打たせる前に手で取るので、佐々木とはしょっちゅう衝突する。衝突してはお互いを笑いながら起こしてやったりしていた。

体育が終わり、教室へ戻って着替えると、そのまま昼休みだった。和馬が水道で手を洗っていると、山本が近づいてきた。

「ちょっといいかな。」

すごい目で睨まれて、和馬は何も言えずに山本について行った。廊下の端っこへ行くと、誰にも話は聞かれない。そこで山本は振り返り、和馬に小声で言った。

「君さ、佐々木と仲がいいよね。それって、つまりデキてるってこと?」

和馬はあまりに驚いて一瞬声が出なかった。目だけ大きく開いたけれど。

「な、なに言ってんだよ。んなわけないだろ。」

やっと声を出して、そう言った。

「じゃあ、ただの友達?」

山本は、斜め下から見上げるように和馬の目を見た。胡散臭そうに。

「そうだよ。」

「なら、独り占めしないでくれる?」

「え?してないよ。」

和馬はとっさに言った。確かにそうだ。例えば朴や角谷だって同じように仲がいい。クラスの友達とも佐々木は仲がいい。自分が特別なわけではない。

「君は、誠と、その、特別な仲になりたいわけ?」

和馬は言葉を選んでそう言った。しかし、山本は答えなかった。今まで挑戦的な目を向けてきていたが、初めて視線を床に落とした。

「デキてないならいいよ。」

山本はそう言って唐突に話を打ち切ろうとした。さっさと立ち去ろうとするので、

「待てよ!あのさ、誠と仲良くするのは構わないんだけどさ、部活に行くのを遅らせるのは辞めてくれよ。あいつちょっと困ってるみたいだったし。」

和馬が慌ててそう言うと、山本はもう一度振り返って、

「君たちは部活に一生懸命だね。その連帯感がうらやましいよ。」

と、ちょっと顔を歪めた。笑ったような、それでいて泣きそうになったような表情だった。そして、山本はそれ以上何も言わずに立ち去った。和馬はふうっと大きく息を吐いた。


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