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V.G ~少女たちの狂宴~  作者: 柊しげる
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序章

初投稿です。よろしくお願いします。

周1くらいのペースで書き進めればと思います。

二人の双眸が混じり合って、どれだけの時間が過ぎただろう。

きっと、実際の時間は1分にも満たない程度だったかもしれない。

それでも、彼女と彼女の間では、言葉を介さない鬩ぎ合いが容赦なく繰り広げられていた。


頭頂から指の先まで、微動だにせず、ただただ相手の貌だけを見据えて。


時折吹く弱々しい風だけが、彼女たちの艶やかな髪を揺らすだけ。


いつでも、如何なるときでも、今すぐにでも、


二人はぶつかり合う体勢でいる。

暴力と暴力でしか結果が得られないこの世界で、言葉のやり取りは不要だ。


如何に正を論じようが、

如何に異を論じようが、

如何に論を破ろうが、


殺めてしまえばそれが勝者で、正義となる。


と、一方がその殺すための構えを解いた。

得物をしまい、両手を力なく項垂れて、文字通り丸腰となった。


「どうして、刀を納めるの!?」


もう一方―桃色の髪をした少女が、威嚇するように吠える。

その矛先となった、丸腰の銀髪の少女が、顔は地面へ向けたまま、視線だけを桃髪の少女に向け、


「お前は   何を望んでいる?」


低く、落ち着いた、黙秘を拒む強さでそう問う。


「そんなこと……今言わなきゃいけないって言うの?」


何を以て、この娘はそんなことを訊いたのか。

今はただ、互いが斃れるまで戰うのではないか。

心臓が、脳が、相手を狩れと命じ続けるまで、今までも、そして今だってそうするつもりだった。


「質問には答えたくないか?」


「答えさせたければ、私を斃してからにしてよ!」


そう叫んでから、桃髪の少女はハッと我に返ったように悲痛な貌をした。


「………違えるな。お前の本当の望み、いや、願いは………」


「惑わそうって…いうの?」


「迷っていたのか?迷いながら、私にたどり着けたのか?」


「違うよ!!」


「お前は、今まで戰う理由を持たぬまま、戦士達を屠ってきたのか?」


「それは、彼女達への冒涜に他ならない。私も含めてな」


「 五 月 蝿 い !!!!」


喉が灼けるような勢いでそう怒鳴り散らした。


だけど、その言葉を吐いてしまってから、桃髪の少女は堪えようのない悲しみを覚えた。


「お前は忘れてはいないだろう。これまでも、そして今も同じだろう。変わったのは……」


銀髪の少女は、ゆっくりと、もう一度、得物を出した。身の丈以上の刀身となる、細身の一刀。


「お前を変えたのは……」


言葉を紡ぐ前に、銀髪の少女は桃髪の少女へ駆けていった。



---------------------------------------------------------------------------------------------------------


HRを告げるチャイムが、授業で疲弊しきった生徒達の耳に響く。

今日も凌げた、解放された、意に介さない、放課後のプランを考える、等など。

それぞれの想いを秘めながら、生徒達は教室を後にする。


「千ー里ちゃん!」


机で身支度をしている黒髪の少女に、これまた目を引く桃髪の少女が声をかけた。


「芽未ちゃん、もう帰れるの?」

「うんっ、もうすぐにでも出られるよ!」


千里と呼ばれた少女は、上品に笑うと、静かに席を立った。

桃髪の少女―芽未―の元気そうな姿を満足げに見つめながら。


「今日はどうしよっか?帰りにスイーツでも食べちゃう?」

「芽未ちゃん、お小遣いは大丈夫なの?」

「へーきへーき、パパがボーナス出たって言ってたし、その分お小遣いアップしてるんだ!」

「それは僥倖ね」

「ぎょ…ぎょうこう?」

「とても良いこと、という意味よ」


他愛ない会話をしながら教室を出る二人を、メッシュの入った黒髪の少女が呼び止めた。


「煌月さん、羽生さん」


「ん?奥津さん?」


奥津という少女は、二人の歩み寄ると、耳打ちするようにコソッと呟いた。


「いい?下校時にどこかへ寄るのは校則違反よ?暗黙の了解でみんなはやっているけど」

「そ、そうだったね…ごめんなさい」


芽未は罰が悪そうに頭を下げた。


「わかっていますよ、生徒会長。行動するのは問題ないですが、公然の場で話してはいけないのでしょう?」

「そういうこと。せめて学園外でお願いね」


了解しました、と告げる二人を、奥津も手を振って見送った。


「………あら?」


パン!と奥津は何かの気配を察して、両手で何かを叩いた。

掌には、絶命したハエの屍体がこびりついていた。




「いや~、久々にここのピュアゼリーにありつけるよう~」

「凄い大きさだね……」


どんぶり大の陶器を覆い尽くさんばかりの色とりどりのゼリーを、芽未は幸せそうに頬張っている。

千里はミニサイズのチーズケーキを会話の合間に口へ運ぶ。


「ところでさ千里ちゃん、最近寝不足?」

「どうして?」


芽未がなんとなく言った言葉に、向かい合って座っていた千里は少し同様しながら返した。


「後ろの席で千里ちゃんの頭見てるんだけどさ、たまーに左右に揺れてるから」

「あはは……よく見てるね、芽未ちゃん。ただ単に授業の内容を反芻してただけよ?」

「は、はんすー?」

「ある情報を、頭の中で何度も何度も考えることよ」


少しだけ胸を張ってそう説明する千里。

このやりとりが、千里は幸せに浸れる瞬間だ。


「ま、あたしの勘違いだったらいいんだけどさ」


青いゼリー部分を口に入れて、芽未が続ける。


「先週くらいかな。図書室で転寝してたの、見ちゃったんだ」

「あ……それはちょっと恥ずかしいなぁ……」

「思うんだけどさ、寝顔見られるのってなんで恥ずかしがるんだろ?無防備な顔だから?それとも間抜けに見えるから?」

「えーっと、それは人によると思うんだけど……」


寝不足の話題が流れて、どこかほっとしている千里だった。




「いらっしゃいませー♪」


ちょうどその頃、別の客が入店した。長い銀髪を指で弄りながら、どこを見ているかわからない、孤狼のような雰囲気を持つ少女だった。


「一名様ですかー?」

「ああ」


店員に案内されて、銀髪の少女は店内へ入る。


「でさー、そのときうちのパパがママにさー」

「あはは、何それ、面白い~」


会話を楽しむ芽未の背中越しを、銀髪の少女が店員と共に通り過ぎる。

そして、銀髪の少女の瞳が千里に向いた。




千里  「  え  」


千里と、銀髪の少女だけの時間が凍結した。


秘められた瞳に宿る確かな 殺 意 。


千里の胸の奥に沈んでいる心臓が、瞬く間に脈動を激化させる。


言葉などない。


ただ、視線が合っただけ。



それだけなのに、千里は既に頬を殴られたような衝撃を全身に浴びていた。






千里  「  誰  なの  」






芽未「でさー、結局ダメだったんだってー!バカみたいだよねー」

千里「え……ええ」


気がつくと、銀髪の少女の姿は既になく、屈託のない芽未の笑顔だけを視線が捉えていた。



芽未の話を聞きながら、千里は胸の中央部を摘みながら、何かを決意したように息をついた。



次回から本編になりますので、バトル描写を入れていきたいと思います。


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